シャープは2月24日、電子黒板用途などに適した新しい手書き入力を実現できるタッチパネルシステムを開発したと発表した。

今回開発したタッチパネルでは、ボタンなどで複数のペン機能を利用できるアクティブ方式のスタイラスを同時利用でも認識できるようになった。

具体的には、2012年12月に、多点入力を一括して検知・処理できるシャープ独自の並列駆動方式のタッチパネルを発展させたもので、タッチパネルを制御するコントローラICのソフトウェアを改良し、スタイラスにこのICと連携する回路を内蔵したことで個々のスタイラス識別や、指とパッシブペンとの同時認識を可能にした。

アクティブ方式のスタイラスは、現在も様々な製品が市場に投入されているが、有線による接続でなければ遅延なく同時認識できない制約がある。無線によるスタイラスを実現していたとしても、タッチ信号処理とペン信号処理を時分割していたため、タッチとペンを同時に利用するとタッチ性能が劣化するケースが多かったという。

一方で、今回のアクティブスタイラスを統合した静電容量方式タッチアーキテクチャは、タッチ信号処理とペン信号処理をCDMAによってマルチプレクスした。Drive Chに割り振るコードと同様に各アクティブペンにコードを割り当て、タッチコントローラはアクティブペンをDrive Chの1つとして信号復調を行い、ペン位置を特定している。

現時点で、アクティブペンの同時認識は2本となっており、4本~10本程度は大きなシステムの改修なしで対応できるという。これは、各アクティブペンに割り当てる符号をどれだけ長くできるかにかかっており、長い符号を割り当てられれば、それだけ多くのアクティブペンを利用できることになるという。ただ、100本単位になると、コントローラICの並列読み出しに負荷がかかってしまうので、現在のICでは難しいようだ。

アクティブペンの電池は、開発レベルの素子にFPGAを利用していることもあって消費電力が大きく、単4電池となっているが、商品化する際にはIC化を図り、単6電池で1000時間の設計仕様を目指すという。これは、1日2時間の利用を想定した場合、2年間もつ計算で、十分実用に耐えうるレベルだろう。ICの回路設計はほぼ完了しており、製品化は遠くないタイミングで実現できるとしていた。

現在はパッシブペンであっても、ホバー操作が可能なディスプレイがスマートフォン向けに投入されているが、タブレット端末やさらなる大画面では実現が難しい。アクティブペンは、ペン先から信号を出しているため位置検知が可能だが、今回のタッチパネルでもホバー操作を実現している。試作ディスプレイでは、2cm程度離しても利用可能で、商品化時でも1cm程度離しても位置を特定できるようにするようだ。

左の写真だとわかりづらいが、右の写真の通り、かなりの高さでもペンを認識していることがわかる

アクティブペンは、ペンに付いているボタンとホバー操作を含めて多様な操作を実現できるため、プロ用途としても潜在的な需要が大きい。今回の発表では、「電子黒板に適した手書き入力」としているが、記者向けに行われた説明会では、タブレット端末への導入も視野に入れているとした。

ただ、シャープのタッチパネルディスプレイはTVなどの大型製品であっても静電容量方式タッチパネルの性能が高いため、アーケードゲーム機などのエンタテインメント活用や、情操教育といった電子黒板以外の教育用途の利用も面白いかもしれない。

なお、米国・サンフランシスコで22日~26日に行われている半導体技術の国際学会「ISSCC 2015」で、この新タッチパネルシステムの論文が採択されている。