マイナビニュースは、デジタルコンテンツ制作の学校を展開するデジタルハリウッド全面協力のもと、「デジハリ人気授業ワークショップ インフォグラフィックセミナー」を開催した。本稿では、その模様をレポートする。

「インフォグラフィック」とは、情報やデータをわかりやすくデザインしたり、視点や切り口を工夫して見る人を惹きつけるもの。デジタルハリウッド非常勤講師の米倉明男氏をむかえ、前半はインフォグラフィックの紹介として、過去から最新までの優れた作例を紹介し、後半は情報を視覚化するプロセスを学ぶため、テーマ課題のデータをもとにコンセプトのビジュアライズを参加者が実践するという内容が展開された。

いつも学生相手なのでちょっと緊張しますね、と米倉明男氏

参加者の多くは会社員や個人事業主など仕事をしている人が多く、年齢層も様々だ

インフォグラフィックの考え方

そもそもインフォグラフィックは昔「ダイアグラム」と呼ばれていた。「ダイアグラム」は整理された図形類のことを指し、それが「インフォグラフィック」と呼ばれだしたのはここ4、5年くらいのことだ。例えば「行きたい国ベスト10」を表現するためにランキング部分が飛行機で表現されていたり、国旗で表現されていたりと情報を的確に構造化・視覚化し、時にはユーモアを交えて表現を行う表現手法として旅行雑誌などでは昔からよく使われているので、目にする機会は多いのではないだろうか。

なぜこのような手法がとられるかというと、客観的な根拠に基づいて視覚化されたデータは、コンセプトやメッセージがとても伝わりやすくなるためだという。「データはただのデータであって、それ以上でもそれ以下でもありません。数字を見て感じることや、そこに何らか意味や方向性を探し出したりすること、つまり数字から見えてくるメッセージを視覚化(=インフォグラフィック)することによって、よりたくさんのひとに情報を伝えることができるのがインフォグラフィックの魅力です」と米倉氏は語る。

インフォグラフィックには長い歴史があり、世界で一番最初のインフォグラフィックはフローレンス・ナイチンゲールがクリミア戦争で兵士の死亡原因を円グラフ化したものと言われている。「死亡原因のほとんどが戦死ではなく伝染病だ」ということを伝えるために作成されており、グラフには人数・死亡原因・温度が表現され、複数の情報を重ねることで新しい発見を得られるのも興味深い。

また、1972年のミュンヘン・オリンピックの際には20世紀ドイツを代表するグラフィックデザイナー、オトル・アイヒャーにより、アイコンを使って、言語を介さなくても競技種目がわかるサインシステムが作られた。現在では公共標識でも広く使われている絵記号だが、これがピクトグラムの始めとされている。

次に近年で面白いものとして、「The Fiction to Reality Timeline」が挙げられた。これはテクノロジーの技術進歩を映画の世界と現実の間で年表でつないだチャート図である。つまり、「映画で登場したアイテムが、いつ現実に誕生したか」をインフォグラフィックスで表現したものだ。

例えば2002年に公開されたアメリカのSF映画、トムクルーズ主演の「マイノリティ・リポート」(左下から2つめ)では何もない空間に情報が現れ、それをタッチしたりドラッグしたりして情報を操作するという有名なシーンがある。当時、映画館で衝撃を受けた記憶があるが、今はそれに近いものが誕生している。テーマに興味を持つと、インフォグラフィックはとても身近な存在となるのだ。

「The Fiction to Reality Timeline」

デザインをやったことない学生が1から半年間学び、作った作品。「穀物の消費分布」(左)と「プロポーズの過去・現在」(右)

「例えば「貧困」をテーマに、というと水問題・貧富の差・食料難…など何でも言いたくなってしまうんですよね。情報が多すぎると返って本当に伝えたいことが伝わらないんです。そこを極端にしぼりこんで表現することで、混沌としていたものがぐっとわかりやすくなる。優れたインフォグラフィックスを作るためにはそういったデータの分析と整理が必要になります」

また、インフォグラフィックが近年クローズアップされている理由としては、Webとの相性が良いという側面がある。「THE evolution of the web」というサイトでは、どのブラウザがいつ誕生したか、その時のHTMLはどんなものだったかなどといった変遷がわかるというもので、時間と共に画面が移り変わっていくことで、どのように変化していったのがより感覚的に把握できる。

THE evolution of the web

米倉氏は、Webでのインフォグラフィックは、「クリックしたり時間軸と付き合わせができるのが大きなメリットなので、ポスターのような静止画よりはもう少し意味をプラスしたり、展開によっては別の切り口で違う側面を見せたりと可能性の幅が広いと思います」とコメント。続けて、「最新のものでは映像作品やプログラミングを駆使したリアルタイムビジュアライズも広く見られるようになりました。例えば音楽のルーツを時間と派生で図式化した「HOW MUSIC TRAVELS」や、Google Earthから取り込んだ細切れの画像をどんどん拡大していくことによって最後は色だけになるアート「THE COLOR PROJECTなどプログラミングから情報デザインを形作るというのがこれからのインフォグラフィックの可能性を広げていくのでは」と説明した。

HOW MUSIC TRAVELS

THE COLOR PROJECT

イラスト・チャート・表・グラフ・地図・ピクトグラムなどなど、インフォグラフィックといえどもその領域は驚くほど広い。その中でいかに最適な表現を選択し表現できるかが優れたものを作成する鍵となりそうだ。

ここまでがセミナーの前半にあたる。次回、後半のレポートでは、ワークショップを通じてその具体的な方法を探っていきたい。

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