ストレージソフトウェアを中心としたデータ保護ソリューションを提供するファルコンストア・ジャパンは2015年2月18日、データマイグレーション、可用性、バックアップ、リカバリ、重複排除といったストレージ機能を1つのプラットフォーム上で提供する「FreeStor」を発表、世界に先駆けて5月から国内での提供を開始する。

FreeStorは、同社が長年にわたって研究・開発を続けてきた「SDS(Software-Defined Storage)」技術の集大成とも言える製品である。同社のストレージソフトウェア技術はどのようにして生まれ、どのようにして培われてきたのか。米FalconStor Software グローバルセールスオペレーション担当副社長 アラン・コメット氏に話を伺った。

米FalconStor Software グローバルセールスオペレーション担当副社長 アラン・コメット氏

ファルコンストアには15年後の今が見えていたか

── ファルコンストア・ソフトウェアは、2月19日に設立15周年を迎えたそうですね

コメット氏 創業者のレイジェン・フーアイは、当時の米シャイアン・ソフトウェアで「ARCserve」の開発責任者を務めた人物で、創業当初からストレージ仮想化、SDS技術に特化したベンダーとして研究・開発を続けてきました。テープ仮想化技術を世に出したのも、当社が初めてのことです。

この15年で、さまざまなベンチャー企業が立ち上がり、そのほとんどは買収されたり、破綻したりして消えていきました。私たちのように、現在も独立企業として成功しているストレージベンダーは稀です。15年は、非常に大きな節目と言えるでしょう。

サーバ仮想化技術がようやく認知されつつあった当時に、ストレージでも実現すべきだと考えたフーアイは、業界でも有数の“先を見とおす力”があったのだと感じます。

── ファルコンストア・ジャパンの設立は2001年と、早い時期に日本市場へ進出しています

コメット氏 当初のファルコンストア・ジャパンは、技術のOEM提供を中心にビジネスを展開してきました。迅速な展開を図ったのは、品質に厳しいことが知られている日本での成功が、世界に打って出るきっかけとなるためです。日本メーカーからOEMとして世に出回っていることは、世界の顧客にとって大きなバリューなのです。

FalconStorブランドを展開したのは2008年ごろ、継続的データ保護ソリューションの「FalconStor Continuous Data Protector」の販売を開始しました。今では、データ保護ソリューション領域でトップシェアを獲得するに至っています。

FreeStorは業界初の水平型SDSプラットフォーム

── 新しい「FreeStor」について教えてください

コメット氏 IT技術は、あるサイクルで巡ってくると考えています。中央集中型のメインフレームが流行し、その後オープン技術を用いた分散型のシステムが広まりました。そしてまた、仮想化技術やクラウド技術を活用してシステム統合・中央管理を図ろうという動きが出ています。

FreeStorは、当社の仮想ストレージ製品の上位レイヤーに位置し、外部コントローラから一元管理できるようにする業界に先駆けた“水平型SDSプラットフォーム”です。15年前に当社は、ほかにはどこにもなかったSDSベンダーとして設立しました。FreeStorは、今後の15年のデータ管理を定義するユニークで特別な製品だと考えています。

私たちの技術は、従来からあるUNIXシステムやテープメディア、バックアップソフトのほか、フラッシュストレージやクラウドなどの新しい技術とも積極的に連携してきました。一般のストレージ製品は、将来性の高い技術のみをサポートするものが大半です。しかしFreeStorは、UNIXやテープなどのレガシーなシステムもサポートします。

また、ストレージベンダーの多くは、新しい技術を開発しても、自社のハードウェアのみをサポートしようと考えます。FreeStorは、当社の他のソフトウェアと同様に、ハードウェアの制約から完全に独立した製品です。

この2点の意味で、当社はストレージ業界でもユニークな存在であることがわかります。FreeStorは、その集大成の製品と言えるでしょう。

── FreeStorの技術は、どのような課題にマッチするのでしょうか

コメット氏 日本企業においては、1つのベンダーが提供する垂直統合型システムに人気が集中しています。しかし、特に大規模企業やデータセンター事業者、通信事業者においては、複数の垂直統合型システムでマルチベンダー構成になっており、全社的には統合できていないことがほとんどです。

サーバの領域においては、仮想化技術を活用して、マルチベンダーのハードウェアでも統合的に管理できるように工夫しています。しかし、ストレージ仮想化技術の普及は遅れており、サーバほど柔軟に構成することが困難でした。

昨年ごろから、データマイグレーションやシステムマイグレーションの必要性をきっかけに、当社の技術が注目されるようになっています。異なるストレージベンダー製品どうしでも、クラウドサービスを含めて、FreeStorであれば自由に移行できます。

ニーズに応える技術とライセンスで今後のストレージ業界を担う

── 今後の5年先・10年先はどのような戦略を採る予定か

コメット氏 10年先を予測するのは難しいことでしょうが、5年先の戦略として、次のようなことを考えています。

これまでも私たちは、目標を高く設定して研究・開発を行ってきました。この15年の実績は、非常に大きなアドバンテージです。

当社の製品は、あらゆる機能を持ち、あらゆるベンダーの技術と連携するプラットフォームです。そして、いずれのサーバハードウェアベンダー、アプリケーションベンダー、データベースベンダー、そしてストレージハードウェアベンダーからも独立したものです。ユーザーの多くは、こうした仕組みを切望していましたが、なかなか手に入れることができませんでした。

もし私たちに競合しようとする新興ベンダーがいても、一部の技術だけではコストが高くなってしまいます。ユーザーの一部の課題は解決できても、次の年には別の課題が浮き彫りになるかもしれません。一方で、私たちは全ての技術を提供しているため、競争力が遥かに異なります。

また私たちのライセンスモデルは、「機能課金」ではなく「容量課金」というアグレッシブなものです。一般のストレージベンダーは、自社のソフトウェアでは自社のハードウェアしかサポートしないという戦略を採っています。それがこの先何年も続けば、私たちにとって非常に都合のよいこととなるでしょう。

現在ユーザーは、SSDのような新しいストレージ技術のための環境を整えつつあります。ハイパフォーマンスなストレージには、ハイパフォーマンスなソフトウェアが必要です。そうしたハードウェアベンダーに対して、私たちの技術をOEM提供していくことが考えられます。

また、特に中小規模の企業では、自社でシステムを買うのではなく、クラウドサービスプロバイダーやマネジメントサービスプロバイダーのサービスを買うことが主流となっていくでしょう。私たちは、そうしたサービスプロバイダーをパートナーとして、FreeStorなどの技術でサポートしていきたいと考えています。

SDSは、他の仮想化技術と同様に、ブラックボックスな部分のあるアーキテクチャで、複雑に見えがちで、保守・運用の課題が残された技術であることは事実です。今後も、パートナー各社と連携し、適切なサポートを提供すべく努力していきます。

また私たちは、北米や欧州、アジア・東南アジアなどのほか、技術力をつけはじめた東欧や、潤沢な資金を保有している中東、中南米などの新興地域にも積極的な投資を行っています。世界中で多くの事例を作り、セミナーなどの啓蒙活動を通じて、さまざまな情報を提供していきたいと考えています。