スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「10軸センサー」についてです。

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ひとつのデバイスとしては存在しませんが、各種センサーの装備状況を指して「10軸(センサー)」と表現することがあります。スマートフォンの場合、10軸の内訳は加速度センサーが3基、ジャイロセンサーが3基、電子コンパスが3基の9基にくわえ、気圧センサー1基の計10基をもって10軸と数えることが一般的です。

10軸センサーが装備されているかどうかは、これからのスマートフォンにとって重要な意味があります。それは「屋内における位置情報の捕捉(屋内測位)」で、建物の内部や地下街などGPS衛星の電波が届きにくい場所でも正確に位置情報を測定するために必要だからです。

現在もGoogle Mapsなどの地図アプリを利用すれば、建物内部の地図を表示することは可能ですが、GPSを主軸とした測位システム(GNSS、Global Navigation Satellite System)では屋内における高精度な測位が困難です。

むしろ、10軸センサーの装備は屋内測位の前提条件といえます。GPSの電波が届きにくい場所で高精度な測位を短時間で行うためには、移動距離や方角を測定する必要があり、それには加速度センサーやジャイロセンサー、電子コンパスの情報が欠かせません。フロア間の移動を知るためには、気圧センサーも必要です。実際にはそれでも不十分で、最寄りのWi-FiアクセスポイントやBluetooth LE機器(ビーコン)から補足情報を取得し、磁場の影響などさまざまな障害を克服しなければなりません。

現在国土交通省は、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを視野に、さまざまな"おもてなしサービス"を実現できる環境づくりを推進すべく、「高精度測位社会プロジェクト」の実証実験を進めています。10軸センサーを搭載したスマートフォンは、その前提条件とみなされているといってよさそうです。

スマートフォンで正確な屋内測位を行うには、10軸センサーの装備を前提としたうえで、Wi-Fiアクセスポイントやビーコンからの補足情報も必要なことが現状です(写真はCSR社の実証実験より)

(記事提供: AndroWire編集部)