SDLは2月10日、東京都・六本木にて「SDL Webグローバリゼーションセミナー」を開催した。同セミナーでは、全日本空輸(ANA)のグローバルなWeb戦略や多言語サイトの運営を効率化するローカリゼーション戦略が明らかとなった。

Webサイトのグローバル化、英語対応だけでは不十分?

インターネットが当たり前となった現代において、大多数の企業は公式Webサイトを保有しているだろう。それだけでなく、一部の企業では、オウンドメディアやECサイトなどのWebサイトも構築・運営する。

昨今、このような企業が抱える課題の1つに「グローバル戦略によるWebサイトの多言語対応」があるとSDLジャパン ランゲージソリューション部にてセールスディレクターを務める小林和久氏は説明する。

「インターネット上のトラフィックを言語別に分けると、意外にも、英語は約3割だといいます。加えて、インターネットユーザーとなる約27億人のうち、英語を母国語とするユーザー数は4分の1ほどで、中国語ユーザーは英語に並ぶ勢いで増加しています」(小林氏)

インターネットユーザーの8割にリーチするには、20言語への対応が必要

中国語ユーザーは英語ユーザーに迫る勢いを見せる

また、インターネットユーザー(消費者)の多言語化が進んだだけでなく、日本企業の海外進出や、グローバルに展開する企業のデジタルマーケティング施策の強化、観光・流通といったインバウンドへの対応といった経済活動においても、Webサイトの多言語化は必要性を増していると同氏は述べる。

経済活動の割合で言語を見ると、英語に次いで、日本語・ドイツ語・スペイン語・中国語と続く

世界に顧客を抱えるANAのグローバルなWeb戦略とは?

増える国際線 - 多言語化でオウンドメディアを強化する

国内外に顧客を抱える全日本空輸(ANA)は、Webサイトの多言語化に向け積極的に取り組んでいる企業の1つだ。

同サイトは、日本ブランド戦略研究所が毎年実施する「Webサイト価値ランキング」にて、2013年と2014年の2年連続で1位を獲得したほか、PC版サイトでは1日あたりのUU数が約55万人、PV数が約600万を記録する。

同社の旅客輸送実績の推移を前年度比で見ていくと、国内線は前年同等で推移しているのに対し、国際線は、羽田空港の国際線発着枠の拡大により前年比を伸ばしている。さらに、6月12日に開設予定となる「成田~ヒューストン線の新規就航」など、今後も国際線の売上が増加する見込みだ。

ANA 2014年度における旅客運輸実績

2015年夏には、ヒューストン空港への直通便も開通する

「国内線の売上は、前年同期比であまり変化が見えないため、国内マーケットは今後も同様に推移するのではと考えています。一方で国際線は、平均で前年度比110%ほど。今後は、国際線事業での成長が大きな鍵を握っています」(石川氏)

全日本空輸 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部主席部員 石川圭太氏

そう語るのは、同社 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部にて主席部員を務める石川圭太氏。同氏は、国際線の売上拡大に向けた課題として「認知拡大」と「外部環境」をあげる。

「昨年、認知度調査を実施しました。これによると、アジアの航空会社と言えばここが思い付くといった『想起率』や名前は聞いたことがあるなどの『認知率』の両方において、あまり高くはない結果となりました。中でも、北米や欧州、韓国やタイなどの東南アジアでの向上が急務だと認識しましたね」(石川氏)

また、外部環境としては、ジェットスター・ジャパンの国際線進出など「LCCの台頭」や、羽田空港が国際線枠を拡充したことによる「自由化競争」などがあると説明する。

このような状況にて、同社がグローバルな市場で戦っていくためには、「ブランディングの強化」と「エンゲージメントの強化」そして「オウンドメディアの強化」が重要だという。そして、オウンドメディアを強化する取り組みの1つがWebサイトの多言語展開だ。

Webサイトの改善は、半永久的に続けるもの

「航空券の販売を海外向けに本格始動した2010年頃から、急激に売上が伸びました。特に、現在の36カ国8言語対応となってからは明確です。しかし、一方で運営面における課題は浮き彫りになりました」(石川氏)

ANA Webサイトの海外展開と売上推移

例えば、海外向けに情報を翻訳できる担当者に依存してしまうといった「業務フロー・体制の課題」や、「マンパワーの不足」「翻訳品質のバラつき」「ページによって多言語展開ができていない」という点を同氏は指摘する。そこで導入したツールが、SDLの提供する「SDL World Server」だ。

同ソリューションは、従来、手作業で行うWebコンテンツの多言語翻訳とその管理プロセスを自動化し、翻訳品質のばらつきを抑えつつ翻訳業務におけるコストの削減を目指すもの。SDLが提供する翻訳の品質と、グローバルで展開される顧客に対するフォロー体制などが大きな選定の理由だという。

「Webサイトのローカリゼーションだけでなく、ユーザーの傾向に応じたパーソナライズや最適化の取り組みは、今後も続きます。重要なことは、環境変化に応じた最適化を柔軟に行えるプラットフォームの構築ではないでしょうか」と石川氏は語った。