【レポート】

猫好きも知らない東京隠れ猫スポット"招福民芸館"は見た目も中もスゴかった

猫カフェ、猫動画、猫ストッキング……。見渡すと周りは猫だらけ。猫を愛し、猫に癒やされ、猫に翻弄(ほんろう)される。猫と人の付き合いは古いが、特に最近猫の愛され方が尋常ではない。そんな気がしてならない。

東京都中野区鷺ノ宮、新青梅街道沿いの、およそ博物館には適しそうにないスポットに「招き猫」だけを取り扱う「招福民芸館」があるのをご存じだろうか。空前の猫ブームの今、東京23区の隠れたアツい猫スポットを紹介してみたいと思う。

いま、この猫スポットがアツい

住宅地に招き猫が突如出現

20年前にオープンしたこの私営博物館は、「私営博物館は観光地にあり!」の常識を破る、まさかの東京都中野区の住宅地に鎮座する、極めて珍しい博物館。美食家が料理の前に器を楽しむように、まずはコチラの外観をお楽しみいただきたく。

異彩を放つ外観

周囲には住宅街や小学校しかなく、疑いの目で見れば怪電波の発信局に見えなくもないこの"珍スポット"感。至って真面目な博物館であることを強調しておきたい。

しかしこの付近の住民とおぼしき人々は、巨大な招き猫の前を何ら気にも留めない表情で通過して行く。招福民芸館がこの地にできて20年以上、もはやこの辺りでは見慣れた風景なのかもしれないが……。

外観はさておき人間同様、肝心なのは中身。ここはためらうことなく中へ入ってみよう。

来館者は"月に10人"

入館料は無料。

靴を脱ぎ、一段上がった展示スペースに上がると、招き猫がこちらをジッと見ている。

絶妙な密集感

ここは、本民芸館の運営会社代表者でもある牛丸忠二館長が20年以上に渡り集めてきた招き猫の博物館であり、同時に同社が販売するオリジナル招き猫商品の販売店でもある。

その牛丸館長であるが、多角的なビジネス(後述)で成功を収めた実業家でもあり、「めちゃくちゃ忙しいので……」という事で現在はほとんど当館に姿を現すことはないのだそう。

取材に来たテレビ番組はかなりのもの。店内にはその時の写真が今も飾ってある

おいしいコーヒーをいただいた

したがってこの日は「雇われですもので……」とやたら腰の低い女性が店番。コーヒーまで出していただいた上、招福民芸館の今を「分かる範囲でいいなら……」ということで、聞かせていただいた。

「月にどのくらいいらっしゃいます?」という質問には「うーーーーん」という長考の末、「月に10人来ればいいほうですねえ」という寂しいアンサー。

会話が続かずコーヒーをすする。

パンフレットから往時をしのぶ

招き猫にも地域差が

かつてはかなり気合の入った2,500種もの品ぞろえで気軽にインした来場者を圧倒していたこの博物館も今はいくらか落ち着き、店番の女性いわく「いくつあるか分からない」との事だが、ザッとカウントして今はその半分程度、それでも推定1,000種程度の品ぞろえではなかろうか。

全国各地に招き猫があり、特に焼き物の産地を目指すと、その地域特有の招き猫に出会えるそう。素材だけでなく、猫の表情も地域によりさまざまで面白い。早速展示されていた招き猫たちをいくつか見てみよう。

黒と赤のカラーリングが新鮮

これは東北の招き猫。

「同じ猫でも東北の猫っていう感じがするでしょう……?」という女性の投げかけに「そうですね」と答えてもう一度ジッと眺めるも、答えが出る気配がしない。

狐顔の美貌

「アッ! これも東北ですね、東北っぽい!」

というジャッジメントもむなしく、「こちらは京都のです……」。
少し狐っぽい表情が京都風なのだそうで「あ、そう言われれば」と都合よく返すも、素人目には全く地方色がつかめないのが正直なところ……。奥が深い。

人間味のある顔立ち

これは福岡・博多の招き猫だそう。

そういわれて見れば確かに全盛期の森口博子(博多出身)に似ている……ような。

お、奥が深い。

変わり種も充実

海外への輸出用に作られた招き猫は、やはり海外を意識したのかやや洋風な顔立ち。分かりやすいものではブーツに洋風の猫がインしているタイプもあった。

こちらはレプリカだが、マイセン風招き猫。一口に招き猫と言っても、表情、種類、いろいろあるものである。しかし共通するのは、当然だが「招いている」こと。

洋風に招く

シリコン製の招き猫も

素材だって何も陶器だけではない。

時代はシリコン! という事で開発されたのがシリコン製招き猫。素材はシリコンだがやはり招いている。開発の背景をお尋ねしたところ「まだ誰もやっていなかったので」とのこと。

新素材の開発がまだまだ遅れている招き猫業界には、まだまだ多くの可能性が眠っている。

そして、招き猫はただ置いておくだけのものではない。使って楽しむタイプだってあるのだ。「猫は人をだますもの」というコンセプトで顔の表情がいくつか変わる招き猫も多いのだそう。

お分かりですか。これは顔を回すと舌を出すタイプ

芸能人やその年話題になった人も招き猫になりやすい。こちらは恐らく知事になった当時量産されたとおぼしき某県元知事の招き猫。どげんかしたい余りこのような事になった模様。

有名人の招き猫も

「"ヤワラちゃん"の招き猫は先日売れてしまいました」という情報から、逆に"あったのか"という事を知るのである。

展示は招き猫のみならず

招福民芸館に展示されているものは、招き猫だけに限られていない。

ここ最近、猫にまつわるアレコレなら何でもという様相で海外で集められた珍しい猫の置物や、招き猫を抱いた和服美人などなど、あちこちに無造作に置かれた猫たちからは牛丸館長の猫へのただならぬ愛情が感じ取れる。

「一番珍しいものは何ですか」

という質問に対し、指さされたのがこの招き猫を抱えた女性の人形。

言われてみればレア物の雰囲気がある

猫、猫、猫

まさにここは猫天国。と、思いきや突然フクロウな一角を発見。実はこの民芸館に展示されていたのは当初フクロウだったのだそう。

いつから招き猫になったか不明だが、「何かを集める」という一点でここまで突っ走るこの決め打ちコレクター癖には、シンパシーを感じざるを得ない。

当初はフクロウを展示していた

原点は「ハトよけ」?

最後に、この「招福民芸館」の牛丸館長の気になる多角的ビジネスについてお話しておこう。

実は牛丸館長のコアビジネスは"木材販売"。なんと皇室向けにも木材を納める、皇室オフィシャルサプライアーであるというから驚きであるが、もっと驚くのは「ハトよけ」で財を成したという事実。

街で見かけるあのトゲトゲの「ハトよけ」をいち早く世にリリースしたのが石丸館長なのだそう。

お土産にいただいた皇室カレンダー

そんなわけで手土産として皇室カレンダーをいただいてしまった。

ハトよけの成功で建てられた猫の博物館。コーヒーをいただき、皇室カレンダーまでいただく結果となったが、このとてもゆったりした不思議な空間は新手の猫カフェと言っても良いだろう。

※記事中の情報は2014年12月取材時のもの

<著者プロフィール>
zukkini
1982年佐賀県生まれ。進学のため上京するも友達が全く出来ないことに絶望し、ネット上で日記を書き始めて15年。
現在は残飯系情報サイト「ハイエナズクラブ」を主催し、「オモコロ」のライターとしても活動中。
趣味は録画した「警察24時」を繰り返し観ること。

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