ユニファイド・ストレージ・ベンダーのNetAppは1月28日、都内においてプライベートイベント「NetApp Innovation 2015 Tokyo」を開催した。「自由、そして自在へ」というテーマが掲げられた今回は、14のパートナー企業が製品/ソリューションを展示。NetAppが提唱する「Unbound Cloud(解放されたクラウド)」のもとに、オンプレミスからハイブリッドクラウドへどのように展開していくか、最新のソリューションと革新的なテクノロジーが一堂に会して紹介された。

本稿では、パートナー・ベンダーによるテクニカル・セッションの中から、「クラウド基盤と多彩なサービスにより効率的、効果的なクラウド環境を実現」をテーマに解説した、富士通のセッション内容を紹介しよう。

NetApp Innovation 2015 Tokyo 富士通展示ブースレポート

「NetApp Innovation 2015 Tokyo」にて富士通が出展したブースのレポートを以下に掲載しております。併せてご覧ください。

"良いとこ取り"が引き起こした仮想化基盤の"落とし穴"とは?

ICTインフラ活用によるコスト削減や業務効率化の観点から、仮想化やクラウド基盤を導入する企業は増加している。しかし、クラウド基盤の選定や、クラウド環境で運用する業務の選別には、留意すべきポイントが多々存在する。「コスト削減のみを重視してパブリッククラウドにした結果、カスタマイズに制限があり、期待したほどの効果が得られなかった」という苦い経験を持つ企業は少なくない。

「クラウドは"パブリック"、"プライベート"、"ハイブリッド"に大別され、それぞれメリット/デメリットがあります。パブリッククラウドは、自社内に設備を持つ必要がなく、従量制の料金体系でコスト削減が期待できるものの、複数ユーザーによる共同利用へのセキュリティ上の不安や、個別運用案件への対応が限定的といった側面があります。一方、プライベートクラウドは、初期導入/運用コストは考慮しなければなりませんが、顧客専用のシステムとなるため、強固なセキュリティ確保と柔軟なカスタマイズ、個別要件への対応が可能です。業務に応じて、環境を選定するなど個別要件への対応が可能です」

富士通のストレージシステム事業本部ストレージソリューション事業部NASシステム開発部でマネージャーを務める葛西邦彦氏

こう説明するのは、富士通のストレージシステム事業本部ストレージソリューション事業部NASシステム開発部でマネージャーを務める葛西邦彦氏である。同氏は、プライベートクラウド導入のキーワードは、「効果の最大化」「仮想化環境を実現するインフラ」「最適な仮想化環境の構築」だと説く。

「これまでのICTシステム導入は、個別最適化に重点を置いていました。その結果、既存システムの大規模化/複雑化が進み、維持運用に膨大なコストがかかっています。クラウド導入では、こうした環境から脱却し、ICTシステム全体の最適化を目指すことが重要です。そのためには、業務のサービスレベルに応じたクラウド基盤を選定し、迅速かつ確実で、導入後もすぐに運用できる環境が求められているのです」(葛西氏)

業務が要求するサービスレベルは、「リカバリポイント」「サービス提供時間」「サービス稼働率」「ハードウェア復旧時間」などを判断の軸とする。そして、最適なレベルを見極めたうえで、最適な仮想化基盤を選定するのが「正しいステップ」であるという。

稼働する業務が要求するサービスレベルを判断の軸とすることで、クラウドに乗せる業務が選別できる

では、どのような仮想化基盤を選択すべきなのか。葛西氏は、「プライベートクラウド基盤として効果を最大化する1つの方法として、垂直統合型基盤を活用することが考えられます。その活用により、仮想化・プライベートクラウド基盤を実現する際におこる様々な課題を解決できます」と指摘する。

その課題とは、「オープンシステム採用による、運用費用の高止まりと管理の複雑性」だ。各分野のナンバーワン製品を選択し、"良いとこ取り"をしようとしたものの、実際にはハイパーバイザー層や物理/仮想環境の連携がとれていなかったり、異なる管理画面で管理が煩雑になったりしているケースは多い。また、トラブル発生時の障害の切り分けに時間がかかったり、増設作業に手間がかかったりすることも多く、結果的に運用管理工数/コストが増大することもしばしばだ。

しかし、垂直統合型基盤であれば、ストレージ、サーバ、スイッチ(ネットワーク)、OS、ハイパーバイザー、運用管理ソフトなど、仮想化/プライベートクラウドに必要な要素をすべて備えた"単一の製品"となるため、こうた問題から解放される。葛西氏は、「富士通ではシステムの設計から保守まで、垂直統合による最適化を実現するシステムを提供しています。それが『FUJITSU Integrated System Cloud Ready Blocks(以降、Cloud Ready Blocks)』です」と紹介し、同システムについて解説した。

システムの設計から保守までを垂直統合型基盤にすれば、運用管理の煩雑さから解放される