今回はタイのバンコクから、在タイ歴40年以上! 画廊を経営しているアッコさん(71歳)の登場です。ご主人はイギリス人のデービットさん(76歳)。お互いの母国でないタイで暮らすことになった経緯とは?

日本人妻・アッコさん(71歳)とイギリス人の夫・デービットさん(76歳)

■ふたりのなれそめと、結婚して何年目なのかを教えてください。

私は71歳、主人は76歳。タイのバンコクで、東南アジアでも唯一の日本人が経営する画廊「アコギャラリー」を経営してはや25年です。タイ人アーティストを中心に東南アジアの新進芸術家の作品などを扱っています。家族は娘が二人、次女は日本人と結婚して日本に在住しております。今、6カ月の男の子の孫が一人です。

結婚してもう45年。出会いは日本(東京)でした。ちょうど東京オリンピックの年で、私はカメラマンとして仕事をしていました。デービットは世界を放浪中でした。その当時、私は撮影の仕事でカメラをもって日本国内をあちこち飛び回っていました。その時ちょうど日本に来ていたデービットに出会いました。当時でいうヒッピーみたいな感じで、アジアを旅行中でした。

外国人が珍しい時代でしたし、話したら気もあうし楽しい。この人かな? とピンと来て、デートを重ね、食事などをするうちに求婚されました。が、私の実家からは猛反対されました。デービットは放浪をつづけるために日本をたち、ベトナムへ、それからタイに移り、就職したのでバンコクに来てほしいと乞われ、両親から反対されたまま私もタイにきました。

■プロポーズの言葉は?

出会った時から一緒に行動することが多かったので、特別な言葉はどうだったかしら? もう45年も前のことですからそれらしい言葉があったかどうか……(笑)。結婚式はタイのキリスト教の教会で挙げました。今もこの教会は当時のたたずまいのままで、行くたびに感慨深く思います。当時はまだクリスチャンでなかった 私たちの式を挙げてくれた教会です。

■日本の結婚と比べ、特別で驚くようなことや、独特な風習はありますか?

特別驚くようなことはありませんが、長年夫婦として連れ添っていても、やはり細かい点はきちんと伝えないと誤解や不理解を招きますよね。国際結婚ですが、お互いの母国で暮らしているわけではないので、どちらかの風習に合わせるといった苦労はしていません。

デービットは明治男のような亭主関白のところがあり、長年お皿を洗うということもなかったのですが、実は最近になってお皿を洗ってくれるようになりました。2014年の12月に、在タイ日本人アーティストで2011年の東日本大震災で大きな被害のあった岩手県釜石市に壁画を寄贈した阿部恭子氏の個展に、在タイ日本大使をお招きして、大掛かりなパーティーを開催しました。

目の回るような忙しさの中で、8年務めてくれていたお手伝いさんが辞めて、いよいよ家事が回らなくなった! という時に、結婚して初めてお皿を洗ってくれたのです。とても驚きました。同時に非常にうれしかったですね。

在タイ日本人アーティスト・阿部恭子さんの作品

■さしつかえなければ世帯年収や、余暇の過ごし方などを教えてください。

具体的な年収は控えさせていただきますが、日本を含め海外へは主に仕事で、年1、2回ほど行きます。主人とタイ国内を車で回ることを5、6年前まで年に1、2度やっていました。一回の旅行に4週間から6週間かけていました。北はミャンマーとの国境になるメーホンソン、メーソッド、東はラオスとの国境のノンカーイ、南はハジャイ、クラビー、プーケット。多くの国立公園もまわりました。 二人で運転を交代しながらの旅行でした。

タイの第一線アーティストであるソンブーン氏の作品

ちょっと年収と話がずれてしまいますが、画廊にお越しいただく日本人の方から聞かれる質問が「絵の値段ってどうやって決まるんですか?」というもの。これは非常に多くの要素が絡み合っていますが、大きく言うと2つありますね。アーティスト本人のネームバリュー、出来栄え、大きさ、過去の実績など目で確認できる要素。もう一つは絵としての良さ、訴求力、吸引力といったご自身が体感して得られるもの、いわゆる「いいなと思う」という目に見えないものです。絵を買う時は価格で判断するのではなく、絵からワクワク感がもらえるかどうか、素通りせず何か自分を捉えて離さないものがあるかどうか、という直感で見てもらうと良いと思います。

■家計はどちらが管理していますか?

私(妻)が管理しています。便利なことに家の隣の隣がスーパーマーケットで買い物が便利です。調味料を切らしても困ることはないですね。急なお客様がいらしても、冷たいビールもすぐ用意できます。

■どんな家に住んでいますか?

画廊開業当初から現在まで1、2階がお店、3、4階が自宅という商業タウンハウスで営業しています。バンコクには日本人が集中して住んでいるエリアがありますが、その一角にあり大通りに面しています。バス停は家の前、高架鉄道の駅まで歩いて3分、タクシーは24時間つかまります。

2階では、お客さんがソファーに座ってゆっくり絵を探せる

■家事はどのように分担していますか?

タイはまだまだお手伝いさんの賃金が高くないこと、自分がお店に出ていることなどもあって、家事はお手伝いさんにお願いしています。食事もお手伝いさんに朝、昼、晩を作ってもらっています。8年間勤めてくれたお料理上手のメイドさんが個展の準備でてんてこまいの時に辞めてしまって、万事休すかとなった時に夫が結婚以来初めてお皿を洗ってくれました(笑)。が、今も家事の分担はしていませんね。

■ちなみに昨日の夕ご飯は?

タイ料理、和食などお手伝いさんにお願いしてできるものを食べている感じです。朝食は南国らしくフルーツは欠かせません。タイの文化としての外食もよくしています。日曜日は定休日なのできちんと休みます。

写真はお店兼自宅近くにあるタイ料理レストラン「タイラオイェー」で友人と食事を楽しんだ時のもの

■夫・妻の好きなところは?

長年夫婦として一緒に暮らせたことは幸いだったと思います。昔はそれなりにいろいろ思うところがあり、さまざまな出来事もありましたが、人生の円熟期に入り、この人で良かったのだなと思えるようになりました。

妻: デービットのいいところは焼きもちが少ないことですね 私は自由にアーテストやお客さん、その他の男性と出かけられます。これぐらい普通のことだと思っていましたが、世の中は案外、焼きもちの男性が多いらしいことに気が付いて、これはデービットの長所だと気が付きました。 

夫: 妻のいいところはとにかく献身的なところですね。僕自身が体が丈夫でなく、働けない時があってもいつも黙って一緒にいてくれました。

■逆に夫・妻の嫌いなところは?

長年共に生活していても、嫌いというか、お互いかみ合わないところはどうしてもあります。それはもちろん「相手は自分じゃない」から。昔はそれも一つ一つ挙げられるほど、こちらも尖がっていましたが、今ではそういうこともなくなり、お互い穏やかにやり過ごしている感じでしょうか(笑)。

■結婚生活が長続きする三カ条を教えてください。

私たちはバンコクでクリスチャンになりました。どう生きていくかを共有できることはとても大事だと思います。長い人生、いろいろあってもお互い離別は許されないと思いとどまれたのは、人生をどう生きていくかを共有できていたからだと思います。いったん夫婦になったのだから、とことん仲良くして行こう、というのもそれが根底にありますね。

■将来の家族の夢は?

日々の安全と健康が保てること、孫が無事育ってくれること、この先も夫婦で長く共にいられること、ですね。アーティストの才能を世間さまへ見てもらう手伝いをしながら「アコギャラリーから買ってよかったよ」とお客さんにも喜ばれるお店でありたいですね。

バンコクの日本人社会でも有名人のアッコさん