2月3日、東京都港区のグランドプリンスホテル高輪で、OpenStackをテーマにした技術カンファレンス「OpenStack Days Tokyo 2015」が開幕した。

今年で3回目となる今回のOpenStack Daysは、事前登録者数が2842人。登場からわずか5年と"若い"OpenStackだが、国内でも広く注目を集めるまでに急成長していることを改めて知らしめるイベントとなった。

本稿では初日に行われたMark Collier氏による基調講演『OpenStack Scope : How we're making the core smaller while embracing the freedom to innovate around it』の様子を簡単にご紹介しよう。

Software Defined Economy - ビジネス変革のエンジンとなるOpenStack

OpenStack Foundation COOのMark Collier氏

初日の基調講演では、OpenStack Foundationの共同創設者であり、現在もCOOの肩書きで活動を続けるMark Collier氏が、ビジネスの現状やOpenStackコミュニティ発足当初の様子に触れながら、今後のコミュニティ運営の方針、プロダクトの在り方などを説明した。

Collier氏はまず、現在の企業をとりまく環境を整理。ゲーム業界の米Zynga、自動車業界の米Tesla Motorsら、躍進した新興企業を例に挙げながら、スタートアップと大企業が同じ土俵で競う時代になっていることを説明した。

そのうえで、競争力の源泉となっているのがソフトウェアであることを強調。「Software Defined Economy」という言葉を用いてソフトウェアの重要性を説き、OpenStackなどによって構築されたクラウド基盤がビジネス変革のエンジンになっていくとの見方を示した。

こうした状況の中、OpenStackは今後どういう方針で開発/運営を続けていくべきか。それがCollier氏の講演テーマである。

OSSとして迷走しないためのミッションステートメント

今後の方針を説明するにあたりCollier氏は、最初にOpenStackの歴史を紐解いた。開発者25人、イベント参加者75人という非常に小規模なコミュニティとして始まったものが、わずか5年で開発者数が100倍以上に、イベントは世界各国で開催されるまでに成長しているという。

ただし、拡大するOSS(Open Source Software)コミュニティは危険もはらんでいることも説明。「プロダクト/コミュニティが大きくなると、さまざまな方向に持っていきたがる人が出てくる」とコメントし、そうした事態を想定し、OpenStackではミッションステートメントを発足当初に定めていることを明かした。

そこには、「To produce the ubiquitous Open Source Cloud Computing platform that will meet the needs of public and private clouds regardless of size, by being simple to implement and massively scalable.」と綴られており、パブリック/プライベートを問わず、クラウドコンピューティング市場全般において、アプリケーション開発者に受け入れられる、シンプルで拡張性の高いプラットフォームを提供することが宣言されている。これが、プロジェクトを迷走させないための判断基準となっていることを説明した。

OpenStackのミッションステートメント

さらに、Collier氏は、ハイブリッドクラウドという概念が広まるなど、OpenStackにとって追い風が吹いているうえ、iPhoneやPlayStation 4など、クラウドと連携する端末が多数登場。今後はいかにして多様な用途に対応できるオープンなAPIを用意できるかが鍵を握ることにも触れた。

今後の運営方針については、「コミュニティの意見をすべて聞いて、どのように進化させるか、ベストプラクティスをどうシェアするかを検討していきたい」と説明。そして、現在多く寄せられている意見が、「安定性、信頼性の高い、シンプルな"Core"がほしい」というものであり、今後はCoreを再定義し互換性確保に努めていくことを明かした。