ここ数年、世界的にラーメンブームが起きているが、ここロサンゼルスにも日本のチェーン店として有名な「喜多方ラーメン 坂内」や「どさん子」などが続々と出店している。そんな中、日本人が経営するアメリカナイズされたラーメン屋が話題となっている。その店は一部の業界人の間で、行列が絶えないことを称賛して"モンスター店"と言われているとか。早速、その味を試しに行ってみた。

「Tatsu - Ramen with a Soul」は白を基調にしたモダンな外観

iPadで自分好みのラーメンを作る

お店の名は「Tatsu - Ramen with a Soul」。Tatsuは現在、ロサンゼルスで2店展開しているが、今回筆者はメルローズ店に行ってみた。店内に踏み入れると、受付にたどり着く前に3台のiPadが並べてある。どうやらこれがメニュー表のよう。ラーメンはというと、「SOUL RAMEN」(魂のラーメン、12ドル)や「BOLD RAMEN」(際立ったラーメン、10ドル)、「NAKED RAMEN」(裸のラーメン、9ドル)などとちょっと風変わり。

一番人気という「BOLD RAMEN」をiPad上でクリックすると、今度は唐辛子の辛さや、ガーリックやネギの量、そして肉の種類まで好きなようにカスタマイズできるようになっている。具材における店の看板メニューは黒豚チャーシューのようだが、あえて豆腐にチェンジすることだって可能だ。

もうひとつ、「NAKED RAMEN」にもチャレンジ。メニュー写真を見る限り、"裸のラーメン"の意味を込めてなのか、汁で麺が隠れない油そば風の外観だ。これもまた辛さなどが自由に選べるため、標準より1段階あげた「WHOA, THAT'S HOT」(ワオ、辛い)レベルにしてみた。

さらにiPadをクリックすると、今度はサイドメニューが登場。トッピングや麺の量の追加オーダーに加え、チャーハン、さらには「WAGYU RAMEN BURGER」(和牛ラーメンバーガー、7ドル)なるものも。「WAGYU RAMEN BURGER」をポチっと押してオーダー終了。後はレシートが出てきて、席に案内されるのを待つだけだ。

お店の扉を開けると、3台のiPadがお待ちかね。ラーメン、トッピングや麺、サイドメニューの順で自分好みのラーメンを設定する

味はもちろん、食感やスタイルにもこだわりを

「BOLD RAMEN」は11種類の具材とともに14時間かけて作られた豚骨スープが特徴。一口飲めばその濃厚さが口に広がり、ピリッとしびれる辛みも心地よい。マイルドとスパイシーの融合だ。やや太めのストレート麺は、店内の麺工房で作られているという。ドーンとのった3枚の黒豚チャーシューは、口に入れるととろけてしまう。さらに、味付け煮玉子が半熟トロリなのもうれしい。人気No.1メニューであるのもうなずける味だ。

スープにこだわりが詰まった「BOLD RAMEN」(10ドル)

次に、ごちゃごちゃ感が満載の「NAKED RAMEN」へ。ちぢれ麺の上には大量のゴマ、唐辛子、そしてなんと全粒粉のパン粉が! これら全てをグルグルと混ぜ合わせ最後にライムをひと絞り。パン粉とゴマの食感が新鮮で、ラーメンを食べているのにサクサクカリカリと音がする。そして、ちぢれ麺がそれらをしっかり絡めとり、絶妙なコンビネーションを生み出している。

カスタマイズでレベルを標準よりひとつ上げたその辛さは、文字通り本当にホット! 油そばを想像していたのだが、もっとあっさりしていて冷麺ともジャージャー麺とも異なるが、病みつきになるおいしさだ。ちなみに、こちらはビーガン(純粋菜食主義者)用となっている。

「NAKED RAMEN」(9ドル)は食感も楽しい

そして最後に「WAGYU RAMEN BURGER」を。このバーガーはバンズ代わりにプレスした麺を使用。麺の間には野菜に肉厚な和牛のパティ、そしてパティに合わせた特製ソースが入っており、一口かめば和牛の肉汁がぶわーっと口いっぱいに広がる。甘みのあるジューシーな肉汁が程よいおこげの風味が残る麺と絡み合う。

マネジャーに話を聞いたところ、ロサンゼルスには他にも、麺をバンズに見立て肉をサンドしたラーメンバーガーを販売しているラーメン店やレストランはあるそうだが、本当においしいというものにめぐり会えたことがないという。そこで研究を重ね、和牛+ラーメンバーガーというスタイルを確立したそうだ。さすが、ハンバーガー大国が放つアメリカならではの一品である。

麺が香ばしい「WAGYU RAMEN BURGER」(7ドル)は、甘いソースと和牛が合う!

注文の多い友人たちから得た発想

イケメンオーナーのRyuさんは27歳という若さ!

実はこのTatsuのオーナーは、まだ27歳のRyuさんだ。Ryuさんは2012年にTatsuを立ち上げる際、ロサンゼルスの友人たちに食べたいラーメンを聞いてみたところ、「もっと辛くしたい」「別の肉を入れたい」などと様々な注文があったため、なかなか味を統一できなかったという。

「ならば、最初からカスタムオーダーできるシステムにしてしまおう」ということで、現在のiPadを使ったオーダーシステムになったという。ちなみに現在では、標準オーダーでそのまま頼む人はほとんどいないという。このシステムのもうひとつの素晴らしいところは、携帯やパソコンから事前にオーダーができること。入店すれば、すぐにラーメンが提供されるようになっている。

iPadを飲食店のシステムに組み入れるなんて、なんともアメリカらしい。ロサンゼルスでラーメンが食べたくなったら、ぜひ"注文の多い客"となって自分好みのラーメンを堪能していただきたい。

※記事中の情報・価格は2015年1月取材時のもの

筆者プロフィール: 佐々木綾

フリーライター。ニューヨークやパリにも居住歴あり、現在はロサンゼルスから発信している。ファッションとフード業界に精通しており、お酒好き! 実際に足を運びたくなるような取材を心掛けている。