「メガネあるある」―。それはときに、非メガネユーザーからメガネユーザーに対する、「メガネかけてる人ってこうだよね」というキャラの押し付けになりかねません。

"メガネあるある"の最終回では、そんな他人との会話や関係においてぶちあたる、"メガネキャラ"のイメージや先入観にまつわるあるあるネタを、「コミュニケーション編」として紹介したいと思います。

今回も、日常的にメガネを使用している幅広い年齢層の男女300人にアンケートを実施。メガネユーザーにありがちな日常のひとコマを、「共感できる/できない」「経験がある/ない」で複数回答してもらいました。

メガネ当事者だからこそわかる、リアルでガチな(略してRGな)"メガネあるある"を、安全地帯の『ワインレッドの心』などに乗せて早く言いたいじゃありませんか!

「この指、何本かわかる?」はメガネユーザーへの禁断の質問

職場で、サークルで、飲み会で。そこそこ仲良くなってきたけど、深い話ができるほどじゃない。できれば、コミュニケーションの浅瀬でちゃぷちゃぷと当たり障りのない会話を楽しんでいたい。

そんなとき、格好の餌食になりがちなのが、"メガネいじり"です。すぐそこにあるキャッチーな特徴、決して容姿をいじっているわけではない罪悪感の軽さが、その行為を加速させます。

その結果、生まれたのがこんな"あるある"です。

・人から「メガネ外してみて」と意味なく言われて対応に困りがち(共感できる34.7%・経験がある24.7%)

もちろん、メガネを外すこと自体が嫌なわけではありません。問題はそのあとに発生するやりとりの手続きの煩雑さです。

・「メガネないほうがかっこいい(かわいい)」と微妙な褒め方されがち(共感できる23.7%・経験がある28.7%)
・メガネを外すと「思ったより目が大きい」といじられがち(共感できる18.3%・経験がある14.0%)
・メガネを外した顔を人に笑われがち(共感できる12.7%・経験がある9.0%)

正直、思ったほどそれぞれの共感率・経験率は高くありませんでしたが、一定数のメガネユーザーは、「お前が外せって言ったのにそのリアクション!?」と、確実にもやっとした気持ちを抱いているはずです。

そして、次に始まるのが"裸眼いじり"です。

「裸眼で目を細めていると『目つき悪い』『不機嫌なの? 』と言われがち」(共感できる38.3%・経験がある29.3%)はそれなりの支持率を集めましたが、個人的にさらにもやっとするのは次の項目でした。

・視力のいい人に、「裸眼でこれ何本かわかる? 」と指を立てられてイラッとしがち(共感できる24.7%・経験がある15.0%)

これ、けっこう言われませんか? 「視力が悪い」人は、視界の全体がぼやけて見えているだけであって、決して指の本数や物の数がわからなくなるわけではない、ということを、視力がいい人には周知徹底してもらいたいです。

これって俺だけ!? 間口の狭い"あるある"こそおもしろい!

押し付けられたメガネキャラの人に対するいじりは止まりません。

「メガネかけさせて」もそのパターンのひとつです。その場にいる他のメガネユーザーの人と「メガネ交換してみて」もよくありますよね。

そうして、さんざん自分のメガネがたらい回しにされた挙げ句のあるあるがこちらです。

・人にメガネを貸してレンズに指紋がべたべた付いて戻ってくると殺意覚えがち(共感できる21.7%・経験がある15.3%)

どうかみなさん、他人のメガネを触るときは、「生まれたばかりのヒヨコ」や「手榴弾」を扱うのと同じくらいの繊細さでお願いします。

他にも、雑な"メガネいじり"のレパートリーとしては、「メガネしか共通点がないのに『芸能人の○○に似ているね』と言われがち」(共感できる21.3%・経験がある13.0%)などがありますが、ある意味、メガネユーザーが一番触れて欲しくない"メガネいじり"は、次の項目かもしれません。

・「コンタクトにすればいいのに」と意味なく言われて返答に困りがち(共感できる33.3%・経験がある24.7%)

なぜ返答に困ってしまうのか。

もちろん、「コンタクトレンズにするのは実は恐がりがち」(共感できる38.3%・経験がある17.0%)といった、不慣れなコンタクトの着脱に対する警戒心や苦手意識もあるでしょう。 しかしそれ以上に、メガネユーザーには自ら進んでコンタクトにしようとしない、微妙にこじれた自意識があるような気がするのです。

・メガネをやめたらキャラが薄くなってしまうの気にしがち(共感できる14.7%・経験がある4.3%)
・伊達メガネをかけている人を認めない妙なプライドありがち(共感できる31.3%・経験がある15.3%)

そう、メガネユーザー自身、メガネをいじられ、メガネ込みの自分の顔がアイコン化・キャラ化していることを、心のどこかで「おいしい」と感じているはずなのです。

そして、本当は視力がいいのにファッションで伊達メガネをかけている人に対して、「モグリじゃねえか」という謎のやっかみと、「我こそは真のメガネユーザー」という優越感を抱いています。

いや、他の人はどうだか知りませんが、正直、筆者は自分の中にそういう気持ちがあることを否定できませんでした。たとえ、支持率のパーセンテージは低くても、私にとって、これはまごうかたなき"メガネあるある"なのです。

いきなりですが、現代の日本は「共感過剰社会」です。

映画や小説に対する「共感しました」という感想は、もっぱら褒め言葉として使われ、「共感できませんでした」は、たいてい批判の意味で使われます。

でも、よく考えたらおかしな話ですよね。「全然共感できなかったけど、めちゃくちゃおもしろかった」という作品だってあるはずなのに。

私たちはいつしか、「わからないものは、つまらない」という価値観に毒されているのではないでしょうか。

"あるあるネタ"もまた然りです。

誰もが「わかるわかる!」と諸手を挙げて共感できるものが、必ずしもおもしろい"あるある"とは限りません。

むしろ、私たちにはわからないことを、一部の人だけが強く実感しているという事実。この世には、私たちのあずかり知らない"間口の狭い世界"が確かに存在するのを知ることにこそ、"あるあるネタ"のおもしろさの本質は宿るのかもしれません。

それでは、全国のメガネユーザーのみなさん。いつか一堂に会して、「イチャイチャするときメガネをはずすタイミングに迷いがち」(共感できる30.7%・経験がある20.7%)というお題について、一緒に語り合う日まで、ごきげんよう。

福田フクスケ
編集者・フリーライター。『GetNavi』(学研)でテレビ評論の連載を持つかたわら、『週刊SPA!』(扶桑社)の記事ライター、松尾スズキ著『現代、野蛮人入門』(角川SSC新書)の編集など、地に足の着かない活動をあたふたと展開。福田フクスケのnoteにて、ドラマレビューや、恋愛・ジェンダーについてのコラムを更新中です。