ドワンゴとカラーが共同で進める短編アニメーション企画「日本アニメ(ーター)見本市」の作品群を解説する番組「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス- (第10回放送)」が、1月26日に「ニコニコ生放送」にて生中継された。

左からMCの山田氏、氷川竜介氏、ゲストの堀内隆氏、江本正弘氏、西川真剛氏

番組には、同企画の第10弾作品である『ヤマデロイド』の監督を務めた堀内隆氏および江本正弘氏、制作を担当した西川真剛氏が出演。本作は、声優である山寺宏一氏がボーカルを務め、その楽曲とともに山寺氏を模した"ヤマデロイド"が村娘を助け出すために過酷な戦いに挑んでいく様がMV風に描かれたもので、番組ではそんな作品に込められた思いや制作秘話などが語られたほか、山寺氏と監修を手がけたアニメーター・板野一郎氏の各氏によるメッセージも紹介された。

制作のきっかけについて、堀内監督は「最初は板野さんにお話がきたのですが、諸事情あって板野さんが難しいということで、お話が僕らに来て、じゃあやろうかな? と。僕らはチャレンジャーなので、胸を借りるつもりで始めちゃったって感じですね」とその舞台裏を明かした。

また、本作は声優の山寺氏が全編にわたり歌声を披露するというユニークな構成となっているが、なぜ同氏をフィーチャーしたのかについても、監督は「山寺さんとせっかくお仕事できる機会ですし、作品はお客さんが楽しんでくれて初めて成立するもの。それなら、山寺さんに乗っかろうと(笑)」と当時の素直な気持ちを話した。

一方、江本監督は「(アニメーターとして活躍する自分とアニメーターではない堀内監督という)異なる分野で活躍する者同士だったからこその化学反応が起きた」と手応えを感じている模様。堀内監督も「皆にいろんな思いと状況の中で作品に参加してもらったからこそ、こういうものを届けられた」と同調し、続く西川氏も「自社の名前で作品をドンと出すのが少なかったりするので、今回はいい機会だったなと思いました」と話している。

また、監修を務めた板野氏の音声メッセージも寄せられ「30代のアニメ関係者が新しい21世紀のアニメーション、2D、3Dのいいところを両方取り入れられるいいところが『ヤマデロイド』にはあるんじゃないかな。2Dキャラと3Dメカの共存みたいな形がいい意味でうまく出ているんじゃないか」と作品を解説。さらに、現状のTVシリーズには「デジタルペイントでしょぼくなってしまって、逆にロボットや飛行機や車がCGになるから2Dのしょぼさが出てしまう」といった問題点があると指摘しつつも、本作については「線画の味、絵の個性、3Dの緻密さ、アニメーションとして動き回れる良さ。(2Dと3Dの)ハイブリッドアニメーションとしては、ひとつこういう方向があるんじゃないかな。2Dのいいところを活かした上での3Dのアクションのいいところ、日本らしさがよく出ている」と称賛している。

また、声優の山寺氏からも番組宛にメッセージが到着。山寺氏は今回の作品について「声優冥利に尽きます! こんな事ってありますか? タイトルが『ヤマデロイド』ですよ! 僕にとっては『声優史上に残る快挙!』制作陣にとっては『アニメ史上に残る暴挙!』でしょう」とうれしい胸の内を語った。メインの"ヤマデロイド"については、「顔が似てなくて良かった!」という率直な感想を吐露。「僕ってもしかして、まわりの目には阿部寛さんみたいに見えているのかな?」とユーモアを交えつつも、「『ありがたい話だけど僕に似ていたらギャグにしかならないだろう』と思った」と当初の気持ちを綴っている。

山寺氏が全編にわたり歌っている楽曲が印象的な本作。実は坂本冬美さんの楽曲『アジアの海賊』が原曲になっているといい、これは堀内監督が以前、坂本さんのMVに編集・VFXとして参加したことがきっかけだったという。山寺氏も同楽曲が大好きだったといい、「レコーディングの際、初めはもっと高いキーで歌ったのですが『もっと余裕が欲しい』との要望が監督からあり、かなり下げたキーに落ち着きました」、さらに「作詞作曲の中村あゆみさんにメールしたら『楽しみです。自由に歌って下さい』とやさしい言葉を頂きました」などと、舞台裏を明かした。

一方、アニメ評論家の氷川氏が注目ポイントを紹介する「氷川の二度見」のコーナーでは、「GLITTER(キラキラ)」をテーマに設定。氷川氏は作中の"金色の屏風"にフォーカスし、「アニメは金色を表現するのが難しいんです。GLITTERとは、つぶつぶに光があたって反射するような輝き方のこと。金色を表現できているということは、GLITTERを表現できているということ。そう思ってみてみると、森の中やミラーボールやサイリウムなど、いろんなところに散りばめられていて、作品の世界観の魅力になっています」と独自の着眼点を解説した。

番組の最後には、ゲストの堀内監督、江本監督、西川氏の3氏に向けて「あなたにとってアニメとは?」という質問が投げかけられた。これに対し、西川氏は「生きる糧」と回答。理由には「単純にこれでご飯を食べているのと、次の作品への糧になるという二つの意味」があるとした。また、江本監督は「大衆のためのエンターテインメントであるべき」断言。

一方、堀内監督の回答は「道楽」。同氏は「震災があって無力感を叩きつけられたのですが、エンターテインメントというものを根底から考えて、これからもやっていこうかなと」と内なる思いを説明した。

なお、1月30日には第11弾作品『POWER PLANT No.33』が「日本アニメ(ーター)見本市」の公式サイトで公開予定(予告編は公開中)。さらに、2月2日には、本作の原案・監督・脚本を務めた吉浦康裕氏、原案・怪獣&ロボデザイン・美術監督を担当した金子雄司氏、キャラクターデザイン・作画監督を手掛けた斉藤健吾氏をゲストに招き、同作の制作秘話や作品に込めた思いなどを語る特別番組「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-」第11回が、動画サービス「ニコニコ生放送」にて生中継される。

番組名:「『日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-』第11回」
放送日:2015年2月2日(月)
放送時間:22時~23時(予定)
出演者:吉浦康裕 (原案/監督/ 脚本)、金子雄司(原案/怪獣&ロボデザイン/美術監督)、斉藤健吾(キャラクターデザイン/作画監督)
番組ページはこちら

「POWER PLANT No.33」

「日本アニメ(ーター)見本市」は、『新世紀ヱヴァンゲリオン』などで知られる庵野秀明監督が代表を務めるアニメ製作会社・スタジオカラーとニコニコ動画を運営するドワンゴが共同で行う短編映像シリーズ企画。若い才能に"挑戦の場"を提供するべく立案されたもので、さまざまなアニメーターたちが決められた予算と時間の中でオムニバスアニメーション作品を自由に創作し、毎週金曜日に1話ずつ公開していく。作品は公式サイトおよび公式スマートフォンアプリにて無料で視聴できる。

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