最高マーケティング責任者(CMO)という役職は、日本で定着しているとは言いがたい役職だが、IT企業を中心に広がりを見せている。ただ、マーケティングのトレンドの移り変わりとその影響力から、早くもその役職名がふさわしくないという向きがあるようだ。

この傾向を捉え、CMOに代わって「最高ビジネス責任者(CBO)」を提案するのがForbesだ。「The Death of The CMO And The Birth Of The Chief Business Officer(原題:CMOの死とCBOの誕生)」から、何故「マーケティングからビジネスなのか」について考えたい。

SNSの台頭が要因に

マーケティングの重要性に代わりはないものの、Web……とりわけSNSの台頭によってチャネルが増え、ユーザーにフォーカスしたコンテンツが求められるようになった。もちろん、これだけではなく、CRM連携などによるビックデータの活用も求められており、マーケティング担当者が担うテリトリーが広がっている。これを受けて、CMOの役割を再定義する流れが米国では出てきているようだ。

自身もCMOだったという記事の筆者Kimberly A. Whitler氏は、CMO向けの情報サイトCMO.comや経営学の識者と共同でCMOの影響について調べた調査を下に、以下のポイントを洗い出している。

  • キャリアで重要な経験を積んでいる

戦略立案に関わった経験を持つCMOは、自社事業、事業部などの組織を全体的に理解しており、マーケティング施策や市場開拓で組むべきオンライン/オフラインの戦略的なパートナー企業を知っている。

このような知識を持つCMOは、ビジネス、ビジネス動向やトレンド、競合、消費者と360度の視点を持っており、その影響力は大きい。

その上、社内組織についても熟知していることから、部門を超えた連携などで重要な役割を果たせるとも分析している。

  • 顧客中心の考え方

顧客中心、市場主導型の考え方を大切にする企業は当然、マーケティングの役割や可能性に重きを置く傾向が顕著だ。

顧客への深い洞察を持ち、これを戦略に変えることができるマーケティング担当者は、CIO(最高情報責任者)やCFO(最高財務責任者)、人や会社が置かれている状況によってはCEO(最高経営責任者)よりも戦略的に重要なのだ。

このようにCMOの重要性を認めながらWhitler氏は、マーケティングとコミュニケーションを合わせた「マーコム」がマーケティングと言われてきた時代から、戦略の開発と実装、損益計算(PL)管理などのスキルや知識も入ってきているとCMOの現状をまとめる。

「すぐれたマーケティングを展開する企業のCMOは、これまでのマーケティングの範疇を超えたスキルと経験を積んでいる」という意見から、「CMO」ではなく「最高ビジネス責任者(CBO)」の方が任務を適確に表現しているとする。

このようなことから。、現在マーケティング分野にいる人はキャリアを進めるにあたって、マーコムを超えてビジネス全体の知識、社内の各部門の理解などが求められていると言えそうだ。