アズジェントは1月28日、道路や鉄道、水道などを対象とする重要社会インフラ向けマルウェア対策ソリューション「Secure Data Sanitizetion(SDS)」を2月1日より販売すると発表した。

アズジェント 代表取締役社長 杉本 隆洋氏

Secure Data Sanitizetionは、イスラエルのVotiroが提供する新しいタイプのセキュリティソリューション。「今までのサンドボックスなどとは異なる、コロンブスの卵的な発想、発想の転換で作られたソリューション」とアズジェント 代表取締役社長 杉本 隆洋氏が語るほどのもので、マルウェアを含んでいるという「可能性」を重視して、すべてのファイルをサニタイズ(無害化)する。

杉本氏によれば、欧米の金融機関を狙った標的型攻撃の中で、サンドボックスやアンチウイルスといった多層防御構造を敷いていたにも関わらず多くの金融機関が被害を受け、1行だけVOTIOROのソリューションを入れていたことで問題が起きなかった事例があったという。ほかにも、イランの核関連施設を襲ったサイバー攻撃も「『Votiroを入れていれば事件は起こらなかった』と言う専門家もいた」(杉本氏)ほどだという。

具体的にどのような挙動を行うのか。

一般的にエクスプロイトキットやマルウェアは偽装されたWordファイルなどに組み込まれている。コードは、メタデータや空きビットスペース、マクロの中に埋め込んでいるが、SDSはこれらのデータを細かくチェックし、ファイルに不要なデータ部分を削除するか意味のない情報に書き換えて攻撃用の実行ファイルを削除する。

こうした書き換えを「サニタイズ(無効化)」と呼び、シグネチャが存在しない未知の攻撃であっても防ぐことが可能となる。SDSアプライアンス自体も攻撃の脅威から守るため、ベースOSとしてDVD-ROMから起動する読み取り専用のセキュアOSを採用しているという。

クライアントPCにエージェントを入れる必要もなく、全てのマルウェアなどを無効化してユーザーまで届ける。製品はExchangeサーバー連携が可能な「Secure Data Sanitization for E-mail」とファイルサーバーやFTPサーバーと連携を行う「Secure Data Sanitization Automatic Engine」。ほかにも、Web Proxyシステムと連携し、社内からのWebアクセスに対するサニタイズを行うソリューションなどを今後展開するとしている。

価格は、「Secure Data Sanitization for E-mail」が500ユーザーで532万円~、ファイルサーバーやFTPサーバーと連携を行う「Secure Data Sanitization Automatic Engine」が1Coreで317万6000円~となっている。

スピアフィッシングメールを開いても対応できるSDS

記者会見で来日したVotiroのSales VP Arik Assayag氏は「現在すでに100社以上で導入されており、世界で最も厳格と言われるイスラエルの国防防衛、重要インフラ管轄の監査当局に認証されている」とその実績を強調する。

Votiro Sales VP Arik Assayag氏

数々の受賞歴もある

Votiroはイスラエルの諜報部に務めていた2名の男性が5年前に設立し、現在はイスラエルのテルアビブとカリフォルニアのサニーベールに本拠を構える。

Assayag氏によると、企業や組織に侵入するエクスプロイトキットなどの95%がスピアフィッシングによるもので、2012年から2013年にかけてこの攻撃の数自体も91%の伸び率を見せたという。

残念なことに、多くのセキュリティベンダーによる啓蒙活動をもってしても8割の従業員がスピアフィッシングメールを開封してしまう。理由は、「あくまで本物のように見えるから」とAssayag氏。

「同僚が送ってきたに過ぎない、本物と思って開封してしまう。攻撃者にとってみれば、たった一人が開封することで、社内のネットワークに入り込める。あまたの企業がスピアフィッシングによる攻撃を受けてきた。最近ではソニーがこの攻撃にあっている」(Assayag氏)

これらに対抗するソリューションがSecure Data Sanitizationというわけだ。

Assayag氏によると、HWPと呼ばれる韓国のワードファイルとEXEファイルはサニタイズできない。しかし、両ファイルは統計的に2%しか存在せず、EXEファイルはメールでやり取りを行わないため、基本的に会社のポリシーでブロックするケースが多い。

その他のアンチウイルス製品などと比較しても、ゼロデイ攻撃への対処などで対応力が別れる中、全てに対応できるとしたAssayag氏。医療関係や重要インフラを担う企業、官公庁などへの導入を目指し、3年で5億円を販売目標としている。