Bluetoothの規格策定や認証プログラムなどを担う業界団体Bluetooth SIGは、1月に最新仕様としてBluetooth 4.2を発表した。昨今の市場の要請を受けて新機能が追加されており、携帯電話などの既存機器だけでなく、IoTのような新しい機器でも搭載が広がることが期待されている。

Bluetooth 4.2は、大きく3つの機能追加が行われている。1つはIPv6への対応だ。BluetoothでIPv6での接続が可能になり、Internet Protocl Support Profile(IPSP)をサポートしたことで、IPv6通信をそのままBluetooth 4.2対応機器で伝送できる。膨大なアドレス空間を持つIPv6であり、Bluetooth 4.2機器が固有のIPアドレスを持つことができるようになった。

Bluetooth 4.2ではIPv6接続に対応

Bluetoothは、もともと低消費電力が大きなメリットの1つだった。IPv6のサポートによって、固定IPが割り当てられるため、外部との連携も行えるようになる。

2つ目はセキュリティで、Bluetoothデバイスが外部に発信する端末アドレスを暗号化が可能になる。このアドレスは一意のIDとなるため、これを追跡すればそのデバイスがどこに移動したかといった情報が収集できるが、暗号化をすることでこの追跡ができなくなる。

セキュリティ、プライバシー機能を強化

さらに伝送するデータは128bitのAESによって暗号化され、情報の読み取りを困難にすることができるようになった。こうした暗号化によってプライバシーとセキュリティ機能を実装しながら、高い電力効率も実現しているという。

3点目が転送容量の拡大で、伝送できるパケット容量は10倍になり、転送速度は2.5倍になった。伝送容量と速度が拡大したことで、より大きなデータでも高速で通信できるようになる。

伝送速度も高速化する

もともと、Bluetoothはバージョン4.0で「Low Energy(LE)」という名称を付けるほど低消費電力を追求していた。ブランド名としては「Bluetooth Smart」となったが、いずれにしても速度は求めず、より省電力であらゆる機器に組み込まれることを狙った規格となっていた。時計やフィットネスなどのウェアラブル機器への組み込みが広まっているが、Bluetooth 4.2では、それでありながら従来よりも速度を高めた。

具体的な速度が明示されていないのは、速度としては低速だからだろう。ただ、狙いは「高速通信」ではなく、「必要なデータをより低消費電力で送受信する」ことで、大容量データがそれほど求められないスマートホームやウェアラブル、IoTといった分野での利用がさらに高まると期待されている。

Bluetooth 4.2の登場で、IoTの拡大が期待されている。Bluetooth 4.2に対応したBluetooth Smart機器は、スマートフォンやルーターなどのハブとなるBluetooth Smart Ready機器と接続して通信を行うが、Bluetooth Smart Ready機器も拡大している。米国で開催された家電ショーのInternational CES 2015ではスマートホームやIoT関連の製品が多く登場していたが、Bluetooth 4.2対応製品以降が本番だろう。

期待されるのはIoT

Bluetooth Smart市場は今後さらに拡大すると見られている

Bluetooth 4.2対応製品は、今年後半から登場すると見られており、来年にはスマートホームやIoTが本格的に展開されそうだ。

ヘルス・フィットネス機器やスマートホームでの活用は急成長する

そうした中で、1つのポイントとなりそうなのが「ビーコン」だ。AppleがiPhoneでiBeacon機能を提供して話題になったもので、省電力で微弱な電波を発する小さな機器を店頭などに設置し、付近の受信機に対して情報発信するなどの機能を提供する。

iBeacon自体は比較的単純な仕組みだが、Bluetooth 4.2では送受信できる情報量も増えているため、より多くの情報を届けられることが期待できる。2013年から18年の間に、Bluetooth Smart機器はヘルス・ウェルネス分野で77%、ビーコン・小売り分野で106%、家庭用電化製品で107%、スマートホームでは232%の伸長が予想されており、スマートホームや家電向けだけでなくビーコン・小売り分野での伸びも期待されている。

ビーコンでは小売のクーポンなどの配信に加え、屋内ナビでも利用されることが期待されているが、ユーザー側には、MACアドレスを収集されて追跡される懸念もあるが、そうしたプライバシーの問題にも配慮した設計になっているほか、通信内容の傍受も難しくなり、比較的安心して利用できるというのも、普及には欠かせないポイントだろう。

Nordic Semiconductorやアプリックスが、Bluetooth 4.2への期待を示し、SDKやチップの供給を決めており、ハードウェアとしては大きな問題はなく、普及に対してはソリューションの登場が課題となる。

単なる位置情報取得のためだけのビーコンや家電を操作する程度のIoTであればBluetooth 4.2である必要はないかもしれないが、より大容量で、セキュリティにも配慮した仕様を踏まえたサービスが開発されれば、Bluetooth 4.2の普及が進むだろう。

ハブとなるスマートフォンやルーターなどのBluetooth Smart Readyデバイスは自然に増えていくことが予想できるため、それを生かしたサービスの登場を期待したいところだ。