現在は数量限定なしで提供しているが、発売当初は数量限定販売で売り切れが続出した

名古屋っ子のソウルラーメン「スガキヤ」。名古屋および愛知県に育って、スガキヤのラーメンを食べたことがないという人はほとんどいないのではないだろうか。そんなスガキヤにこのほど、期間限定の「プレミアムラーメン」が登場。プレミアムなのに390円という破格さはさすがスガキヤ! そんな話題のラーメンの秘密に迫ってみた。

「スガキヤの本気」で1日600杯以上売る店も!

スガキヤはショッピングモールのフードコートへの出店が多く、ラーメンのほかスイーツもあり、何よりリーズナブル! 今時、ラーメンが300円で食べられるとはうれしい限りである。昨今のマニア向けラーメンとは違う、あくまで大衆向けのファストフード的ラーメンとして、老若男女に親しまれている。

昭和20年代から実に60年以上慣れ親しまれてきたこのスガキヤはこのほど、「スガキヤの本気」をキャッチフレーズとして、新ブランド「Sプレミアム」の発足を発表。その第1弾として、1月16日からプレミアムラーメンを発売している。およそ330店舗で販売をスタートすると瞬く間に話題沸騰。1杯390円とレギュラーのラーメン(300円)の3割増しの価格ながら、麺類の注文の実に半数を占め、何と1日で600杯以上も売った店もあるとか!

これが噂の「プレミアムラーメン」(390円)だ

本格チャーシューに生卵まで

さて、筆者もこのプレミアムの実力を自分の舌で確かめてみることに。ところが、予想以上の人気で、また、数量限定販売の時期だったため(現在は限定なし)、チャレンジ1日目は最寄りの店舗に13時過ぎに行ったがすでに売り切れ。翌日、別の店舗に正午前に行くと無事オーダーできたが、直後に完売。ギリギリセーフでありつけることになった。

クイック提供がウリのスガキヤだが、料理が出てくるまでで7~8分待たされた。どうやら店内調理の工程が多いようだ。そして待望のプレミアムラーメンが登場。まず目に付くのがチャーシューだ。通常のスガキヤの肉の独特のふにゃっとした食感(これはこれで"らしさ"があって嫌いではない)とは全く異なり、柔らかさとかみ応えが両立し、かつ香ばしく、まごうことなきチャーシューだ。

メンマやネギもたっぷりで食べ応えがある。何よりスガキヤのオールドファンである筆者にとっては、生卵がスガキヤのラーメンでまた食べられるのがうれしい。途中でこれを割ってスープをマイルドにするのが楽しみなのだ。スープは確かにコクがプラスされているが、従来の持ち味から逸脱はしていないので、スガキヤを日ごろからよく利用しているファンほど、違いや価値を実感できるだろう。

普段からスガキヤラーメンを食べている筆者からすると、やはりぜいたくな気がする。が、これで390円というのはやはり破格である

総じて、これでレギュラーのラーメンよりたった90円高いだけとは、コスパ高すぎである! プレミアムと言いながら、庶民の味方というスガキヤの最大の立ち居地を決してハズさない、正しい進化版と言って間違いない!

プレミアムに込めた"本気"をスガキヤに直撃!

このプレミアムラーメンはなぜ生まれ、なぜこんなにウケているのか? スガキヤを運営するスガキコシステムズを直撃した。

Q なぜプレミアムラーメンを開発・発売したのか?

スガキヤ(以下ス) 「最近、ちょっとぜいたくな商品が人気を得ている背景を元に、『スガキヤでもお客様に喜ばれる商品ができないか』という想いを形にしました。コンセプトは"いつものスガキヤに、ちょっとぜいたく、新しい驚き、こだわりの食材をプラス"。スガキヤが求められる価格帯の中で、どこまでこだわり抜いた商品ができるかに挑戦しました」

Q 従来のラーメンと何が違う?

ス 「スープ、肉、メンマと主要な食材をすべてグレードアップしています。スープは通常の魚ダシと豚骨スープを合わせたWスープを採用しました。そこに特別調合したオリジナルラードを加えることで、旨味・深み・コクがアップしています。

肉は通常は蒸し豚ですが、初めて"焼き"を入れたオリジナルチャーシューを採用しました。肉厚でボリュームは定番のスガキヤラーメンの9倍になります。通常は工場で醤油ダレにつけて蒸すのですが、店舗調理でもアツアツの醤油ダレにつけてジューシーさと濃厚さを生み出しています。

メンマは歯ごたえにこだわり、通常の2倍のボリューム・厚みがあります。長年のファンには懐かしい、往年の人気を誇った生卵も復活しています。麺に絡めるとまろやかなおいしさが口に広がります。ネギの量も2倍になっています。さらには、食材の一つひとつを盛りつけ前に過熱することで、理想的なアツアツ感でのご提供も可能にしています」

プレミアムラーメンは店頭でも一番目立つ場所でPRされている

Q ターゲットは?

ス 「スガキヤのリピーターは主婦層とそのご家族が中心で、20代の男女などの客層が希薄でした。彼らの中でも"マイルドヤンキー"と称される新しい消費ターゲット層に目をつけ、彼らを中心に老若男女、万人に受け入れられ、今まで以上の喜びを与えられるような新規客、潜在客、休眠客を呼び込める商品開発を行いました」

Q 客の反応は?

ス 「『この価格、このボリューム。さすがスガキヤ』『食べたかったのに完売していた』『かなりの行列、それでも並んで食べたい』『親しんだ味がここまでグレードアップするとは! 』など非常に好評です。ツイッターなどSNSでもかなり話題になっていて、『スガキヤ プレミアム』などで検索すると多くのご意見を見られます」

Q 今後の販売計画は?

ス 「当初は店舗ごとに販売数を限定していたのですが、生産体制も整ったため1月24日から数量制限なしに切り替えました。また、もともと2~3週間程度の期間限定販売の予定だったのですが、再販売計画やSプレミアムシリーズの続編の開発を進めております。現在調整中で確定次第告知いたしますので、楽しみにお待ちください」

今回の特別価格での販売は1月31日までと残りわずかだが、スガキヤの本気の底力、ファンなら一度その舌で確認していただきたい。

※記事中の情報・価格は2015年1月取材時のもの。価格は税込

筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信。Webガイドサイト「オールアバウト」では名古屋ガイドを務める。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)は自腹リサーチをコンセプトにしてご当地ロングセラーに。10月上旬にはご当地グルメコミックエッセイ『まんぷく名古屋』(KADOKAWA、森下えみこ著)に案内人として登場。