デザインに関わる人なら一度は利用したことがあるであろうオンライン画像マーケットサイト「iStock」。同サービスのアカウントひとつでストックフォト、イラストといった画像素材のみならず、ビデオ、フラッシュファイル、オーディオ(音源)と多様な種類の素材を提供しており、会員数は現在全世界で600万人を超えるという。

そんな「iStock」で画像を検索する機会のあるクリエイターも多いとは思うが、具体的な使用素材を探すだけでなく、デザインの企画段階でイメージを膨らませる際に活用できる機能があるのをご存じだろうか? それが「デザインフォワード」(次世代のデザイン)というものだ。今回は、デザイナーとして活動する筆者から見た、本機能の特徴を追っていきたい。

くすきはいね
コトバ&グラフィックデザイナー。
広告デザインやロゴ、カフェのプロデュースなど、多方面にわたる「デザイン」を手掛ける

「デザインフォワード」は、今世界で検索および購入されている今年のトレンド画像が一目で分かるというもの。「デザインのアイデアを提案しなければいけないけれど、漠然としていて今ひとつ明確なビジュアルが浮かんでこない…」、「いま、世界のデザイントレンドはどうなっているんだろう?」、「"かっこいい"イメージ、"オシャレ"なイメージってどんなもの?」といった疑問が浮かんだ時にはぜひとも活用したい。

「2015年の8つのビジュアルデザイントレンド」のトピックのひとつ「ダイナミック女性」。トレンドの内容を、簡潔なテキストと豊富なビジュアルで提示している

「2015年の8つのビジュアルデザイントレンド」として、8つのトレンドを具体的に紹介している。例えば「ダイナミック女性」という項目の解説では、「ユニークなライフスタイル。 ほかとは違うルックス。 2015年は、面白みのある女性のビジュアルに要注目です。 私たちはありきたりな美しいだけのビジュアルではなく、オリジナリティーと驚きに満ちた女性のビジュアルをたたえます。型破り、大いに結構です。 」という簡単なテーマの説明が添えられており、ライトボックスを見ると個性的でアクティブな女性を集めた写真が一覧表示される、という仕組みだ。

そのほかにも「いろいろな種類の人々」や「単色カラー」、「スーパー静物」や「感覚イマージョン」などといったトピックが設けられており、テーマを見ただけで一体どんな画像が集められているのかと気になるものばかり。そのなかでも、デザイナー視点で特に興味深かったのがこのふたつだ。

「視点」

近年、ビデオカメラGoProなど、撮影ツールにウエアラブル(着用できる)カメラという選択肢が増えた。これによって、これまで画像として目にすることの少なかったプロスキーヤーやサーファーなどの目線で撮影されたダイナミックなものや、はたまたペットの目線で撮られた予想外の視点の画像などを集めたのがこのテーマだ。

「普段見ることのない画像」というのは無条件で人の目を惹きつける。「インパクトのある紙面にしたいんだよね」、「なんかこう…他とはちょっと違う感じに!」、「よくある感じだよね、これだと」など、クライアントからよく寄せられるこれらの発言に対応するひとつのアイデアとして、こういった素材を利用してみるのもよいのではないだろうか。

「視点」のトピックで表示される画像の例

「ボックスで忙しい」

思わず「?」となってしまうテーマだが、サンプル画像を見ると分かりやすい。つまり、これは「画像内にテキストを入れやすい構図の写真」を集めたテーマなのである。

「ボックスで忙しい」の画像例

解説テキストによれば、「かつてはコピーのためのスペースが必要でした。 しかし、最近では写真が複雑になり、コピーの配置がより難しくなってきました。そこで、コピーは込み入ったビジュアルの上のテキストボックスに移動することで両方の豊かさを損なわないようにするデザイン手法がとられるようになっています」とのこと。

なるほど、確かに面白い視点で選ばれていて、どの画像もデザイナーであれば確かに「あ、これはテキスト入れやすいな」とピンとくるものが多い。

画像のチョイスにもこだわりを

ひとえに「画像検索」といっても、その調べ方ひとつで目にすることのできる写真は大きく変わってくる。画像のチョイスというのはデザイナーにとって画面を構成する上で完成系を大きく左右する、大事な工程のひとつだ。

最新のトレンドを敏感に取り入れつつ、ブレーンストーミングのヒントとして、あるいは他と差をつけるデザインのためにも、この「デザインフォワード」機能を有効に活用してみてはいかがだろうか。