デスクトップ仮想化ならびにアプリケーション仮想化技術が市場で普及していく中で、ほとんどのシステムインテグレーターおよび導入後の自社運用を行うユーザー企業の運用管理部門でデスクトップ仮想化ならびにアプリケーション仮想化技術者の育成を進めている状況になってきました。

技術者育成については先行している会社、これから本格的に育成を始めようとされている会社など様々ではありますが、どのように技術者を育成していくべきか、またその効果についてお伝えします。

教育投資の現状

情報処理推進機構(IPA)の『IT人材白書2013』によると、42%の企業が「教育・研修費は(総人件費の)3%未満」と回答し、4.8%の企業が教育・研修費は3%以上と回答しています。この数字が多いのか少ないのかを知る上で各国の教育・研修費の比較が参考になります。

厚生労働省大臣官房統計情報部「労働統計要覧(平成24年度)」によりますと、労働費用合計に対する日本の教育・研修費の割合は0.2%に対して、イギリスおよびドイツは0.5%と約2.5倍、フランスは2.2%と実に11倍もの差になっています。日本と海外という環境の違いはあるかもしれませんが、これらのデータより欧米諸国では、日本よりも多くの教育・研修費を計上していることがわかります。

日本電気(NEC)の育成事例では、シトリックス認定資格者育成により、ユーザー企業からの信頼を獲得して案件数が6割増加、一方、技術問い合わせを3割低減したという事実があります。カスタマーフェーシングの技術者のスキルが高ければ高いほど、現在の状況およびユーザー企業のビジネス要件と技術要件(機能要件および非機能要件)を正確に把握し、計画段階、設計段階、導入段階、本番稼働等システム導入のすべてのフェーズにおいて、企業に求められているシステムを技術力で落とし込むことができ、結果的に安定した本番環境を迎え、プロジェクトの成功率も高まるということに他なりません。

ここでの「プロジェクトの成功」の定義は、「予算の範囲内で、ビジネス上の目的を計画どおりに達成し、利用者側と経営者側の両方を満足させ、スケジュール通りに安定稼働を迎える事、かつ運用がスムーズに行える事」です。仮に、日本の企業の大半が3%未満の教育・研修費とすると、大半の日本の企業のプロジェクト成功率は非常に低いものと予測されます。社内勉強会を定期的に行っていたり、1日程度で行われる概要レベルの無償セミナーへ参加したりする会社は多いかと思いますが、導入フェーズの実践トレーニングの年間予算を取り、受講を推奨している会社はまだまだ少ないのではないでしょうか。

有償トレーニングはもっとも短時間でスキルを取得する方法として確立されており、独学者が自身で本を読んだり、Webで調べたり等の一方向学習形式ではなく、短期間で必要な要素が整理されたテキストブックのみならず、フィールド経験者である講師や他受講者から提供される「生きているコンテンツ」である「考え方」、「経験の共有」などの両方向のインタラクティブな講義、さらに知識の定着を計るため効果的な実機での実習がお互いに相乗効果を生み出すため、時間的にも学習内容としてもとても投資対効果が高いものとなります。効率的なスキル習得のために、システムインテグレーターおよびユーザー企業には是非有償トレーニングの予算枠の拡大を検討してほしいと思います。

NECの育成事例にみる有資格者育成とサポート件数の相関データ

当社のデータで恐縮ですが、具体例として、シトリックス認定資格を活用しているNECの効果を見てみましょう。

下記のグラフにある通り、NECでは技術者育成により、2011年に25件だったシトリックス認定資格取得数が3年間で約10倍に増加しています。2014年には450件の資格取得数を見込んでいます。また案件数に関しては、2011年と比較し、2012年には5割増、2013年には6割増と着実に増え、2014年には8割増を見込んでいます。一方、シトリックスに対する技術的な問い合わせ(Case)の件数は、2011年と比較して、2012年は約2割、2013年には約3割減少しており、2014年は約4割減を見込んでいます。

認定資格取得数と問合せ件数の関係

この結果に対して、NEC ITプラットフォーム事業部 基盤ソフト統括部 マネージャー 鈴木 久美子氏は次のように語ります。

「定量的な効果はもちろん、提案力が向上していることや、お客様の信頼感を得られたことも技術者育成の大きな成果です。これらの成果は、技術者育成から資格取得、お客様へのご提案、システム構築、そして運用サポートまでの一連のサイクルがうまく回り始めている結果だと思っています。」

NEC ITプラットフォーム事業部 基盤ソフト統括部 鍵谷 年哉氏は、「資格取得者が増え、案件数も増えている一方で、障害やトラブルなど、大きな問題につながる問い合わせが減少しています。またお客様とのサポート契約数は増えていますが、前線のSEからの問い合わせが減っています。これらは技術者育成の大きな成果だと思います」と話しています。

さらに、資格取得による効果を、現場で活躍するSEであるNEC ソリューションプラットフォーム統括本部 主任 奥山 聖氏は、「2012年に2日間の集合研修を受講して、仮想化アドミニストレーター資格(Citrix Certified Administrator: CCA)を取得しました。CCAを取得する前はシトリックス製品について独学で勉強していました。CCAを取得したことで、システム全体を体系的に理解することができました。実プロジェクトにおいて設計や構築を推進する上で非常に役立っています」と話しています。