2014年のスマートフォンを漢字一字で言い表すなら、どんな言葉が当てはまるのか。ここでは海老原昭氏に、今年を象徴する一字を選んでもらい、その理由や所感などを記してもらった。

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今年のスマートフォン業界を象徴する漢字は「変」だった、としたい。

まず、今年のスマートフォン業界は、全体的に見ると動きが比較的静かだったように思う。もちろんさまざまな新機種や新サービスが現れ、日々ものすごい勢いで業界全体が動いているのだが、一方でスマートフォン自体の普及率が50%を超え、若い世代では80%以上を占めるようになり、もはや「ケータイ=スマホ」という図式が完成している。電車の中を見ても、起きている人の大半がスマホをいじっている状況で、「当たり前」になってしまったが故の安定期に入っている。そのため、ことハードウェアだけを見ると「なんとなく進歩の度合いが小刻みになったなあ」という感を受けるのかもしれない。CPUの64bit化なども進んではいるが、その効果が現れるのはソフトウェアの対応が進んだ来年以降になると予測する。

さて、まずiOS側から見ていくと、日本市場におけるスマホの王者・アップルが投入したiPhone 6/6 Plusの登場は、ひとつの時代の切り替わりを象徴するかのような大きな出来事だった。それまで頑なに片手操作にこだわり、大画面モデルを否定し続けてきたアップルが、どちらかといえばトレンド追随といったかたちで安易に大画面モデルを出してきた感も強かったが、登場時は数々の批判を集めつつも、出てしまえば安定の強さで市場を席巻した。今や5インチオーバーは当たり前、4インチ程度では「小画面」と呼ばれるようになってしまったほどだ。

iPhone 6とiPhone 6 Plus

アップルといえば、他社の技術を徹底的に批判しつつ、いざ自分たちで出すときは熟考の末に出しました! とアピールするようなパターンが多かったが、今回はそういうお約束すら省いてストレートに出してきた。

故スティーブ・ジョブズと、ティム・クック現CEOのプレゼンスタイルの違いといえばそうなのだろうが、やり方が急に変わると嫌味のひとつも言いたくなるもの。ということで、まずは「変節」の「変」とする。なおiPhone 6 Plus自体はとてもいい端末で、これまで大画面端末にかなり批判的だった筆者本人も愛用している。そんなわけで自分自身にも変節漢の汚名を被せておこう。