2015年4月8日にオープンする成田国際空港・第3旅客ターミナルビル(以下、第3ターミナル)の工事が着々と進んでいる。新しいターミナルは低コスト航空会社(以下、LCC)向け。格安旅行を想定して、その特徴をリポートしよう。

第3ターミナルのブリッジ部分は地上4階にあたり、下は飛行機が通れるようになっている

"格安バス"乗降場を併設し、鉄道は他ビルからのアクセス

第3ターミナルは第2ターミナルの北側に建設中だ。現在のバニラエアと春秋航空日本のチェックインカウンターから約500mの位置にある。オープン時に入居するLCCはその2社とジェットスター・ジャパンの3社の予定(12月11日現在)。延床面積は6万6,000平方メートル、旅客取扱能力は年間750万人で、国内のLCCターミナルでは最大規模となる。成田空港は第2ターミナルだけでも延床面積が35万平方メートルを超えることから分かるように、LCCターミナルは従来のターミナルとは規模も構造も違うものになる見通しだ。

第3ターミナルふかん図。右側建物が本館。左側のサテライトまではブリッジを歩く(写真提供: 成田国際空港)

まず気になるのが都心からのアクセス。東京駅方面と成田を片道900円~1,000円といった格安運賃で結ぶ京成バスの「東京シャトル」と平和交通の「THEアクセス成田」は現在、2012年夏の運行開始時の約4倍の本数を運行するようになったが、2014年12月16日からは両バスともJRバス関東との共同運行を実施し、ピーク時には10分に1本程度のさらに充実した便数になった。この"格安バス"を含めた高速バス、それにタクシーは第3ターミナル専用のバス乗降場から直接アクセスできる。

鉄道と自家用車の場合は第2ターミナルから歩くか、シャトルバスで第3ターミナルにアクセスする。他の国内外のLCCターミナルは全く別の町や同じ空港内でもかなり離れた場所にあることも多いが、成田空港の場合、従来のターミナルと隣接しているため利用者のアクセスはかなり便利だ。

飛行機の駐機場側から見た工事中の本館外観。バスの乗降場は反対側になる

随所に見られる機能性と使いやすさ

第3ターミナルは3階建ての本館と2階建ての国内線用サテライトからなり、その間を4階部分のブリッジで結ぶ構造となっている。天井を貼らず、空調用のダクトがむき出しになっているところなどから、LCCターミナルらしくコストを抑えているのが分かる。逆に言えば、限られた予算の中でどのように機能的で使いやすく快適なターミナルにするかは、プロジェクト担当者の腕の見せどころだ。

空調用のダクトがむき出しになっているところなどは、LCCらしいと言える

その点、第3ターミナルは機能的に使える工夫が随所に見られた。チェックインフロアは本館2階に集約され、"島"は航空会社ごとに分けられているが、国内線・国際線ともこのフロアでチェックインをすませる。また、チェックイン後、セキュリティーチェックに向かうルートは一部、到着客と重なる。そのため、出発の動線がブルー、到着の動線がオレンジに色分けされる。通路には陸上トラックのような素材を採用するなど、分かりやすさ・歩きやすさにも配慮する。

出国手続き前の店舗が全て本館2階フロアの通路沿いにあるのも使いやすい。急いでいる時にも効率的だ。また、到着時の動線付近でもあるため、帰りにも使いやすい。

案内表示は非内照式で自立型のサインも使わず、躯体や設備を利用。また、通路には陸上トラックのような素材を用いて、分かりやすさ・歩きやすさを追求(写真右、提供: 成田国際空港)

7店舗が入るフードコートは24時間の休憩スペース

第3ターミナルは「気軽に」「機能的」「わくわく」の3つをコンセプトにしており、LCCターミナルとは言え一定のサービスレベルを保つ。フードコートや免税店を含めたショップは20数店舗。フードコートは空港初出店の「宮武讃岐うどん」と「リンガーハット」のほか、計7店舗が予定されている。

これよりも店舗数の少ないターミナルは国内にいくつもあるし、もちろん出発まで時間があれば、第1・第2ターミナルのショップも利用可能。フードコートは食事するだけでなく、深夜から早朝にかけた時間帯も含めて24時間休憩スペースとしても利用できる。

また、免税店エリアは白を基調にした明るい空間とし、天井も貼り、壁との一体感を持たせるなど高級感を演出。搭乗口前やフードコートには「無印良品」のアドバイザリーボードを務めるプロダクトデザイナー・深澤直人氏監修の無垢材のテーブル、イス、ソファを設置するなど、無味乾燥なターミナルにならないよう工夫する。

本館2階のイメージ図。右側がチェックインフロア。突きあたりを右に曲がってセキュリティチェックに向かう。その手前に座席数400を超える国内空港最大のフードコートがある(写真提供: 成田国際空港)

フードコートのテーブルやイスには無垢材を使用(写真提供: 成田国際空港)

搭乗機までの距離を短縮し、エプロンルーフも設置

第3ターミナルにはボーディングブリッジは設置されない。そのため、1階のゲートから搭乗機の下までエプロン(地上)を歩いて搭乗することになるのだが、その歩く距離を15mと既定ギリギリまで短くしている。国内の他のLCCターミナルでは70m以上歩くことを考えるとかなり短い。また、雨をしのぐためにエプロンルーフも設置される予定だ。

搭乗機とゲートの距離が短く移動しやすい

将来的に用地が買収できれば国内線サテライトの反対側にもエプロンが設置される予定(写真提供: 成田国際空港)

なお、4月8日の第3ターミナル供用開始に合わせて、国内線の利用者も旅客サービス施設使用料が必要になる。第3ターミナルは国内線が大人380円(小人190円)、国際線が大人1,020円(小人510円)。第1・第2ターミナルの国内線が大人440円(小人220円)となる。

今回の取材で成田空港の第3ターミナルはLCC用とはいえ、できる範囲内で機能性や快適さを追求していることが分かった。来年春の供用開始が楽しみだ。

※記事中の情報は2014年12月取材時のもの

筆者プロフィール: 緒方信一郎

航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年以上にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。