国内大手航空会社1社である日本航空(JAL)には、日頃、様々な問い合わせが乗客から届くのだという。同社ではそういった問い合わせに対し、現役のパイロットやキャビンアテンダントが日々、対応している。今回は、同社に寄せられた飛行機に関する"素朴な疑問"について、改めて答えてもらった。

左から、同社オペレーションコントロールセンター 企画部スケジュール統制企画推進グループ 田中洋介氏、商品・サービス企画本部 業務部 お客さまサポート室 ボーイング737 調査役機長 江戸政人氏、商品・サービス企画本部 業務部 お客さまサポート室 リードキャビンアテンダント 中谷智子氏

――飛行中に外を見ていたら、下を至近距離で他の飛行機が横切ったけど大丈夫?

江戸:周囲に何もない上空の場合、他の航空機との間隔が実際以上に狭く感じることがあるようです。ですが、航空機は管制からの指示を受けた高度を飛行しており、安全が確保されております。通常、すれ違いは1000フィート(約300メートル)の高度差が保たれるようにレーダーで管制官が指示・監視をしています。

また、万が一間隔が狭まるような際にはコクピット内に“TCAS(Traffic Alert and Collision Avoidance System)”と呼ばれる警報で知らされる独立したシステムもありますので安心してご搭乗ください。

――着陸する前に旋回したり降下が他の路線に比べて急だったような気がすることがあったんですが、あれはなぜ?

江戸:日本には山が多い場所に作られた空港がいくつかございます。周りに山などない空港では、旋回せずに一定の降下率で着陸できるのですが、山間の空港だとそうはいきません。例えば、山形空港のように周りが山で囲まれている空港では、山間をぬって着陸を行うため、直線での侵入が物理的に難しく旋回が必要となります。また、高さの異なる山もありますので、一定の降下率で高度を下げることができず、所々、降下率が大きくなるところがございます。山間、谷間を降下していくということもあり、不安を感じるお客様もいらっしゃるかもしれませんが、安全上問題のない降下率、地表や山との間隔は十分確保し、安全な状態で着陸を行っていますのでどうぞご安心ください。

――運航中に機長アナウンスのあるときとないときがあるのはなぜ?

江戸:弊社では、機内アナウンスはお客さまにさまざまな情報をお知らせするためのツールであると認識しています。また、お客さま、および乗務員の安全確保、大幅な遅延を含むイレギュラー発生時の情報提供につきましては、時期を逸することなく行うこととなっております。

しかしながら、ビジネスマンが多い早朝の便や到着が深夜になる夜便などでは、ゆっくりお休みになりたい方もおり、機内アナウンスを望まない方が多いという場合もあります。そのときには、あえてフライト中にはご挨拶のアナウンスなどをせず、到着時にご挨拶させてもらうケースもありますね。常に、その時々の判断で、適宜最適なアナウンスを心掛けています。

――同じ路線でも、日によって航路が変わることもあるの?

江戸:一番効率的なのは目的地まで最短距離で飛ぶことなのですが、飛行機が飛べる場所には制約があり、航路も決められています。その上、飛行ルートはお客さまに快適な運航をご提供するために、揺れの少ない箇所を選ぶことが基本となります。揺れやすい箇所を避けて飛ぶために、日によって飛行ルートが異なるのです。

例えば、羽田-ホノルル便の場合、飛行機は偏西風の影響を受けやすいうえ、気圧配置、雲など揺れにつながる注意すべき場所は毎日異なります。それによって揺れが予想されるエリアも変わってきます。もちろん、最短距離を飛行するのがベストですが、偏西風の追い風を受けて飛ぶことで飛行時間の短縮や燃料の節約によりエコにもつながります。そのため、偏西風の影響をよい具合に受けるコースを飛行したいのですが、同時に揺れがないかも確認する必要があります。お客様の快適性、飛行時間など様々なことを考慮して飛行ルートを毎日決めておりますので日によって飛行コースが異なります。

一方、国内線はほぼ同じルートを飛行します。騒音の問題から時間帯によっては飛行ルートを変更する場合や、大きな揺れを避ける必要がある気象状況の時には、安全なルートを探して飛行しますので、いつもとルートが異なることもあります。国内線・国際線ともに、地上と上空で密に連絡を取り、前の便でどのあたりが揺れていたなどの情報も共有しながら、最適な航路を決めています。