PCメーカーとしてスタートしたDellは現在、エンタープライズベンダーに転身する戦略を進めている。最大の転機となったのは1年前の株式非公開化だろう。それから1年、創業者Michael Dell氏の指揮の下でDellはストレージなどの主要市場でシェアを伸ばした。今回、アジア太平洋・日本地区でエンタープライズソリューション事業部を統括するバイスプレジデントのPeter Marrs氏にエンタープライズ市場とDellの戦略について話を聞いた。

Dellのバイスプレジデントでアジア太平洋日本担当エンタープライズ事業トップを務めるPeter Marrs氏。Dellの社員として10年以上の経歴を持つベテランだが、「非公開化したこの一年が最もフォーカスしている年」と述べる

--この1年、Dellのアジア太平洋・日本地区のエンタープライズ事業はどのように推移したのか。--

Marrs氏: 非公開企業なので数字は公開できないが、2桁成長を遂げることができた。営業への投資、チャネルへの投資、そして戦略へのフォーカスが実を結んだ一年だったと言える。

サーバはシェアトップを維持し、ストレージも内部と外部のテラバイト総出荷ベースで首位だ。ストレージ全体では第3四半期に2桁成長を実現しており、今四半期も2桁成長を維持できると見込んでいる。なかでも、iSCSIは連続で1位を達成しており、IDCの調査では第3四半期に前四半期比で成長したのは当社のみだ。ネットワーク分野も2桁で成長しており、シェアは7位から5位に上げた。

ストレージ分野は変革期にあり、ソフトウェア定義の方向に進んでいる。今後、ストレージはサーバに組み込まれていくだろう。そうなると、当社はサーバ事業で成長を続けているので、サーバ1台当たりの売上増を図ることができる。注目すべき製品としては、「Dell Storage SC4020」を紹介したい。これはミッドレンジ向けのファイバーチャネルストレージ製品で、ストレージ分野の成長を加速する製品となった。当初はアジア市場のニーズに合わせて開発した製品だったが、現在はグローバルで展開している。

われわれには素晴らしい製品と製品ロードマップ、戦略があり、優秀なチームがある。今後も市場の見通しはよいが、唯一の懸念材料を挙げるなら為替レートの変動だ。

--Hewlett-Packard(HP)の分社化、IBMによるx86サーバ事業部の売却などがあった2014年はエンタープライズ分野にとって変動の一年だったが、どう見ているか?--

Marrs氏: われわれにとってチャンスが増えた1年だったと思っている。

IBMはずいぶん前にPC事業から撤退し、今回x86サーバ事業を切り離した。この戦略がIBMにとって正しいかどうかはわからないが、Dellからするとチャンスとなる。IBMは一流ブランドだが、チャネルパートナーから見るとUNIXベースのサーバ、ストレージなどしか持たず、インフラストラクチャを構成できるフルの製品ラインがそろっていない。AIX環境は日本では金融分野を中心に利用されており、シェアは安定しているが、世界的に見ると縮小傾向にある。現在はAIXを利用している業務も将来は標準ベースに移行するだろう。これはDellにとって商機となる。

HPは分社化によりパートナーは2社とやりとりをしなければならなくなる。これに対し、われわれはエンド・ツー・エンドでポートフォリオを持っているため、ワンストップショップとしてお付き合いいただける。

11月に開催したイベント「Dell World 2014」では、1億2500万ドルを投じてチャネルパートナーを支援するプログラムを展開することを発表した。われわれはITのモダナイズ(モダン化)というトレンドを支援し、さらに加速していく。われわれはレガシーなシステムを持っていないので、これが可能だ。