ネット上にWindows 10 ビルド9888がリークされた。流出経路などは不明だが、目にした限りでは開発途中に登場するフェイクではなく、Microsoftがビルドした正規版のようだ。11月にリリースしたビルド9879と比べて、一目でわかるような変化は加わっていない。だが、各所を眺めていくと、わずかながら更新された部分が確認できた。

まずはアニメーション効果。ビルド9879で一度削除したウィンドウ描画時のアニメーション効果が復活している。Windows FundamentalsチームのGabe Aul氏はビルド9879における変更点として、「不評だったため(アニメーション効果を)軽減した」と述べていた。だが、異議を唱えるフィードバックが増えたのか、Microsoft内部で意見が分かれたのかは不明だが、本ビルドでは復活している。

Task Manager(タスクマネージャー)を眺めていて気付いたのは、<Processes>タブのアプリケーション名において、32bitか64bitかを示す文字列を変更した点だ。「32bit」と表記していたの部分を「WoW」に置き換えている。そもそも64bit版Windowsは、Win32アプリケーションを実行する際に、WOW64(Windows 32-bit On Windows 64-bit)システムを利用している。今回の変更は32ビットのOSやアプリケーションを過去のものとする時期にきたことを意味するのだろう。

Windows 10では、settings(PC設定)と異なるモダンUIベースの設定ツール、通称「zPC」を用意すると言われていたが、ビルド9888では両者を融合している。そして新たに検索ボックスを追加した。残念ながら検索ボックスに入力したキーワードは、検索チャームを用いるため意味をなしていない。もちろんこのままリリースするとは考えにくく、settings内で設定項目を絞り込み表示するような仕組みを実装するのではないだろうか。

そして、各所で報じられたようにカーネルバージョンを「10」に変更しており、「ver」コマンドによる結果は「10.0.9888」だった。2015年1月に新たなビルドのリリースを予定していることを踏まえると、2014年内にビルド9879以降の新しいアップデートをリリースする可能性は乏しいだろう。

さて、前回のレポートで「Windows 10のリリースタイミングが早まる」と予測したが、MicrosoftのCOO(最高執行責任者)であるKevin Turner氏の発言によれば、「来年晩夏と初秋」を予定しているという。通常であれば「と」ではなく「から」という表現になるが、Neowinをはじめとする海外報道では、「late summer and early fall」と"and"を使っている。

Worldwide Partner Conference 2014に登壇したKevin Turner氏

ここでWindows 8のリリースタイミングを思い出してほしい。RTM(Release To Manufacturing version)に達したのは2012年8月1日(以下、すべて現地時間)、一般リリース日は同年10月26日だ。さらにWindows 7はRTMが2009年7月22日。一般リリース日は同年10月22日である。とすると晩夏にRTM、初秋に一般リリースとこれまでと変わりないリリースタイミングとなる可能性が強まってきたのだ。

さらにCredit Suisse Technology ConferenceでTurner氏は「Windows 10の価格体制を発表しておらず、(集客効果を狙った価格設定を行う)特売品になります」「関連するサービスで新たなビジネスモデルへ移行します」と発言している。

つまり以前から噂されていたWindows 10の無料化、もしくは無料アップグレードという可能性がさらに強まったのである。すでにOS自体が収益向上に適したソフトウェアではなく、その上で動作するアプリケーションやサービスで稼ぐというビジネスモデルが浸透しつつある。Microsoftがこの方向に進むという声がプラットホームやサービス担当役員ではなく、業務執行を統括するCOOが発したのは重要なポイントと言えるだろう。

すでにMicrosoftの中心にWindowsはなく、Microsoft AzureやSurfaceと同列の存在になりつつある。近年の同社がアピールする「デジタルワーク&デジタルライフ」を見てもそれは明らかだ。

2014年10月開催の「マイクロソフト カンファレンス 2014」でも「デジタルワーク&デジタルライフ」をアピールしていた

2015年晩夏と初秋に登場するWindows 10が、現在のシェアをさらに押し上げるか否かは、OSの完成度やMicrosoftの体制が大きく影響するため、その時が訪れなければわからない。ただ、他のサービスや製品と同列に並んでも、ベースとなるWindows 10の成否が同社の鍵を握っている。

阿久津良和(Cactus)