アップルは11日、12月8日から14日までのコンピュータサイエンス教育週間に合わせ、コンピュータプログラミングの基礎を学べるジュニア向けワークショップ「Hour of Code(コーディングの時間)」をApple Store各店で実施した。本稿ではApple Store, Ginzaで開催されたワークショップの様子をお届けする。

当日は幼稚園生から中学生までの子供たちが集まった

Hour of Codeは、コンピュータサイエンス教育普及を推進するNPO団体であるCode.orgが提唱している運動だ。180カ国以上の生徒数千万人が参加しており、誰でもどこでもHour of Codeのイベントを主催することができる。アップルは以前よりHour of Codeの運動を支援してきたが、この度、世界規模でスペシャルイベントを開催する運びとなった。受講に際してプログラミングの経験は必要なく、4歳から104歳までを対象としているとのことだが、Apple Storeでのワークショップは小中学生向けに実施された。

このワークショップは、コードの謎を解き明かし、誰もがプログラミングの基本を1時間で習得できるような内容になっている。用意されたチュートリアルを進めることで、プログラミング言語のイロハを学べるというわけだ。実際にチュートリアルを動かす前に、Apple Storeのスタッフから、プログラミングとは何ぞやという講話が。その存在を知ることで、コンピュータやモバイル端末以外の電子機器でもプログラミング言語が背景で動いていることが分かるようになる、など、小学校低学年の参加者にはちょっと難しい話もあったが、皆、退屈せずに注意して聞いている様子だった。

ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグらが登場するビデオを注視

Hour of Codeにはチュートリアルが用意されている

チュートリアルはiPadを使って進められた。ゲームアプリ『Angry Birds』に登場するキャラクターを実際に動かしてみるというもので、スタッフからの「『Angry Birds』知ってる?」という問いかけに「知ってるー、この鳥は『Red』って言うんだよー」と、子供たちのリアクションも上々。Redを動かしてブタを捕まえるという動作を実行させるのだが、プログラムの構築は命令が書かれたブロックをつなぎ合わせて行っていく。

iPadを使って挑戦!

「前方に移動します。」「左に曲がる」「右に回転」といった基本的な動きが書かれたブロックをくっつけて組み立てていく中、上手くいく子もいれば、苦労する子もいる。そこで、スタッフから、実際にブロックを組み立てる前に、絵を良く見て、どういう動作がどういう順番で必要なのか先に考えてみると良い、というヒントが出された。このヒントを上手く飲み込んで、子供たちはブロックをつなげていく。なるほど、プログラミング言語を学ぶ以前に思考方法を鍛錬できるというわけだ。

書いたコードの内容を確認することもできるが、基本的にはそれを覗かなくても良い

作成したプログラムを実行し、課題がクリアできると、「おめでとうございます あなたはパズルを完了しました」というダイアログがあらわれ、その中で書いたコード(JavaScript)を表示できるのだが、そのコードは不可視化されており、実際はこういうものが動いているのだけどね、といった記述にとどめてある。ここで重要なのはプログラミング言語そのものを習得する以前に、プロセスの重要性を説き、発想を柔軟にしていこうというスタンスを示していることだろう。チュートリアルを進めていく中で、インターミッション的にスタッフの四方山話が挿入されるのだが、それらも学習者には興味深いエピソードだったはず。例えば、Appleの共同設立者の一人でもあるスティーブ・ウォズニアックは、とてもエレガントなプログラムを書いた、とか、映画『アポロ13』でも描かれた、当時の技術ではごく限られた量しか送ることができないプログラムを、搭乗を認められなかった船員がギリギリまでシェイプアップして送信したことでアポロは地球に戻ってくることができたといった話は、大人でも惹きつけられてしまう。テーマパークにある巨大迷路は、常に右に行く、あるいは常に左に行く、とタスクを実行し続ければ出ることができる、プログラミングもそのアナロジーを使って書き上げることができるという例え話は実に秀逸だった。

『アナと雪の女王』に登場するアナとエルザがナビゲートするチュートリアルも

予告どおり、約1時間でワークショップは終了。参加した子供たちからは「とても楽しかった」「マウスで動かすのより、指で触るだけで命令が出せるのが楽しかった」「綺麗なコードを書く大切さがわかった」といった感想が飛び出した。今回の参加者は、Apple Storeが用意したiPadを使用していたので、成果をそのまま持って帰るというわけにはいかなかったが、Code.orgでは、本ワークショップと同じ体験ができる。Webサイトでは、映画『アナと雪の女王』に登場する、アナとエルザがナビゲートするチュートリアルも用意されている。このチュートリアルでは雪の結晶をプログラミング言語を使っていくというものだが、進めるにつれて、さまざまな絵を描けるようになっているという。是非、こちらも試していただきたい