ワクチンがないノロウイルスには、対症療法をしっかりとすることが大切だ

気温が下がり空気が乾燥する12月は、感染症に気をつけないといけない時期だ。寒い季節の感染症と言えば、インフルエンザが真っ先に出てくる人も多いだろうが、ノロウイルスもインフルエンザ同様、気をつけないといけない感染症だ。

感染性胃腸炎を引き起こすノロウイルスに感染すると、一体どのような症状が出るのだろうか。ライオンのヘルスケアマイスター・山岸理恵子さんに対処法と合わせて伺った。

ノロウイルスによる症状

山岸さんは、ノロウイルスは主におなかのトラブルを引き起こすと解説する。

「ノロウイルスは感染性胃腸炎を引き起こすウイルスの一種で、感染すると潜伏期間を経て下痢や吐き気、腹痛などの症状が現れます。発熱の症状もありますが、あまり高熱にはならないケースが多いようです。嘔吐(おうと)は、小児に多くみられる症状です。子どもやお年寄りが重症化しやすく、吐しゃ物がのどに詰まって窒息してしまう場合もあるため、注意が必要と言われています」。

潜伏期間はおおよそ1日から2日だが、個人差もある。また、感染しても軽い風邪程度ですむ場合やほとんど症状の出ないケース(不顕性感染)もある。だが、その場合もウイルスは排出され二次感染の要因となる。このことも感染源を特定しにくい一因となっている。

水分摂取をしっかりとする一方、下痢止めはNG

万一、ノロウイルスに感染してしまった場合は、対症療法をしっかりと行う必要があるという。

「ノロウイルスにはワクチンがありません。対症療法となるため、まずは脱水症状を防ぐための水分摂取が大切です。スポーツドリンクや経口補水液などを、人肌程度の温度にして摂(と)ると良いでしょう」。

下痢や嘔吐(おうと)などで脱水症状を起こしてしまわないよう、意識して水分を摂(と)ることを心がけたい。脱水症状がひどい場合には、病院で輸液するなどの処置が必要になる。症状が落ち着いたら、体力を回復させるために栄養を摂取しよう。

「食べられるようになったら、少しずつ食事を始めましょう。消化のよいもので栄養を摂(と)ってください」。

症状が出ている間はなるべく安静にして水分を摂(と)り、食欲が回復してきたら、できる範囲で食事をして体力回復に努めよう。また、ウイルスを体外に排出させることが重要。そのため、下痢がひどいからといって下痢止め薬を使用してしまうと、症状を悪化させてしまうことがあるので使用は避けたい。

回復後も最大で4週間ほど、ウイルスは排出されている

ノロウイルスは、症状が治まった後もウイルスが体内に残っており排出され続けるのが特徴。感染者からの二次感染を防ぐためには、どうしたらいいのだろうか。

「ノロウイルスは、症状が治まってからも長いときで4週間程度、ウイルスを体内から排出し続けます。感染を広げないために『調理の前後や排便のあとには、しっかりと丁寧に手洗いをする』などの対策をして、二次感染を起こさないように注意してください」。

その強い感染力から、集団食中毒などの事態も考えられるノロウイルス。適切に処置をして、最小限の被害で済ませられるようにしていきたい。

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取材協力: ライオン ヘルスケアマイスター・山岸理恵子さん

ボディーソープほか、スキンケア商品の開発に長年携わった後、現在のヘルスケアマイスターとなる。商品開発の経験を生かし、主にライオン快適生活研究所にて健康で快適な暮らしのための情報発信に尽力している。