KDDIバリューイネイブラーと沖縄バリューイネイブラーは12月11日、auの4G LTEを利用するMVNOサービスを軸とした事業展開を発表した。様々な企業パートナーのモバイルサービス展開についても支援していく。

この事業は、企業パートナーらの「より柔軟なモバイルサービスの提供を行いたい」というニーズの高まりを受けたもの。KDDIバリューイネイブラーと沖縄バリューイネイブラーがMVNOとなり、パートナーと連携して低価格志向のユーザーに向けた付加価値のあるモバイルサービスを提供する。今後、パートナーのブランド資産やリアル店舗などを生かしたサービスの提供によって、「スマートフォンやタブレットユーザーの裾野拡大に貢献する」としている。

具体的には、パートナー支援のサービス基盤としてauの4G LTEに対応したMVNOサービス「UQ mobile」を提供する。この基盤を活用することで、パートナー企業は料金請求やコールセンター運営、各種法制度対応といった通信事業ノウハウが必要な対応とコスト負担が不要になる。そのため、企業が「モバイルサービスの販売と付加価値創造に専念できる」という。

ややイメージが湧きにくい企業パートナーへの提供形態だが、「UQ mobileがサービスを提供するものの、ブランド名だけはパートナーのもの」という表現がわかりやすい。一気通貫でUQ mobileがパートナーに成り代わってユーザーサポートなどを提供するため、パートナーが「自社製品に回線を付加価値として提供する」といったことに専念できるわけだ。

UQ mobileはその一方で、通常のMVNOとしても一般ユーザーにサービス提供を行う。同日に発表された「データ高速プラン」と「データ無制限プラン」では、NTTドコモのMVNOなどと似た料金体系でサービスが提供される。

データ高速プランは、月々980円で2GBまで最大150MbpsのLTEサービスが利用できる。なお、サービス開始当初は「2GBを超えてしまったけど、高速なLTEをもう少し使いたい」といったエクストラオプションは提供されないという。今後については提供を検討するとしていた。

一方の「データ無制限プラン」では、月々1980円の基本料金で300Kbpsの速度制限がかかるものの、通信量が無制限で利用できる。約1年後の2015年12月31日までは500Kbpsまで速度制限が緩和されており、動画などを見ないユーザーにとっては有望な選択肢となりうるだろう。

これらのデータ通信プランに音声通話プランを付加したい場合はプラス700円で利用できる。なお通話料は30秒毎に20円(いずれも税別)となっており、音声契約の最低利用期間は12カ月と設定されている。利用期間内の解約には契約解除料9500円が必要だ。

テザリングやSMSは標準オプションとして提供されており、「@uqmobile.jp」のアドレスが付加されるメールサービスは200円で利用できる。

同時に、UQ mobileとして端末販売も行う予定で、初期ラインナップとして京セラ製「KC-01」とLG製「LG G3 Beat」が用意されている。なお、端末を購入しない場合であっても、SIM単体で購入できるプランが用意される。これらのSIMが使える端末については、UQ mobileホームページで順次掲載していくとしている。

UQ mobileはやんちゃな次男坊

KDDIバリューイネイブラー 代表取締役社長 菱岡 弘氏

KDDIバリューイネイブラー 代表取締役社長の菱岡 弘氏は、同社の目的を「スマートフォン利用者の裾野を拡大するためのサービス基盤を提供する」と話す。

MVNOは現在、NTTドコモの回線を使うケースがほとんどとなっている。これはNTTドコモとの接続料が圧倒的に低いためで、KDDIやソフトバンクなどは2倍強の接続料金にとどまっている。現状では事業者がMVNO事業を提供しようとした場合に他社で提供するメリットがあまりなく、KDDI回線を利用したMVNOはケイ・オプティコムのみとなっている。

この状況を打開すべく事業を開始したものがKDDIバリューイネイブラーだ。KDDIの関連会社がMVNOとして回線を提供することで、接続料以外のコストを徹底的に抑えて、NTTドコモ系のMVNOと遜色ない形でサービスを提供していく。ここで、MVNOとして持たなくてはならない設備もUQ mobileとして負担することで、MVNOへの参入を検討しようとしていた企業はもとより、「設備を持たなくて良いのであれば……」と、設備投資に躊躇していた規模の小さい企業でもモバイル事業に参加できる下地作りを行ったわけだ。

菱岡氏は「UQコミュニケーションズがネットワークをしっかり作る長兄とするなら、UQ mobileはヤンチャなことをやろうとする次男坊」と、その位置づけを語る。どこまでUQ mobileに"やんちゃ"させることができるかで、MVNO市場のにぎわいが変わってくるかもしれない。