2014年12月3日から5日にかけて東京ビッグサイトにおいて半導体製造装置と材料の展示会兼講演会「SEMICON Japan 2014」が開催された。3日の午前には、キーノートカンファレンスの一環として、「Women in Business~女性トップエグゼクティブが語るダイバーシティ戦略」というテーマでパネル討論が実施された。ここでダイバーシティ(多様性)とは、同じジェンダー、同じ年代、同じ専門分野といった均一な属性で構成されるのではなく、違うジェンダー、違う年代、違う専門分野といった多様な属性の人材で構成された組織を作り、マネジメントすることを意味する。メンバー間の差異を活かすことで、均一なメンバーの組織では生み出すことが難しい、斬新なアイデアやイノベーションなどを創り出すことを期待する。多様性を象徴するのがジェンダーの違う人材の活用、すなわち女性の活用であることから、女性のエグゼクティブによるパネル討論が企画された。

パネル討論のテーマを示すスライド

パネル討論の参加者は以下の通り。いずれも女性で、優れたキャリアを積み重ねてきたエグゼクティブである。

  • 江田麻季子氏。インテル(Intelの日本法人)代表取締役社長(CEO)
  • 浅川智恵子氏。日本アイ・ビー・エム 東京基礎研究所、IBMフェロー
  • 土井美和子氏。情報通信研究機構(NICT) 監事

この3名に、モデレーターとしてテレビ東京アナウンサーの佐々木明子氏が登壇した。

パネル討論は最初に、パネリストの3名がポジショントーク(20分程度の講演)を行ない、その後に佐々木氏の司会によって討論を実施するという形式で進められた。

先天的な多様性と後天的な多様性

ポジショントークで最初に登壇したのは、インテルの江田麻季子氏である。「多様性によるイノベーションの創造」と題して講演した。ビジネスを成長させるためにはイノベーションが必要であり、イノベーションを起こすためには多様でオープンな環境、異なる意見を受け入れやすい環境を作るべきだと説明していた。

江田麻季子氏。インテル(Intelの日本法人)の代表取締役社長(CEO)をつとめる

江田氏は、多様性には、「先天的な多様性」(持って生まれた性質:ジェンダー、年齢、国籍など)と「後天的な多様性」(体験を通じて獲得した性質:学歴や職歴など)があり、両方の多様性を備えた経営が重要だと唱えた。具体的には、経営幹部全体で少なくとも3つの先天的な多様性と、少なくとも3つの後天的な多様性を備えているべきだとした。このような2次元的な多様性を備えた企業は、多様性を備えていない企業に比べると、より積極的にリスクを取ることで現状を打破する気持ちが強く、従業員のアイデアが製品となって市場に投入される確率が高く、市場占有率の向上に結びつきやすいという。

ただし多様性を獲得した企業への変化は、急激には起こらない。個人的に学んだこととして、以下の5つの事柄を江田氏は挙げていた。

  1. 変化は突然起こらない。(対策)できることから達成していく
  2. 個人個人は対応が柔軟でも、組織になると対応が硬直的になることがある。(対策)組織を動かすサポーターのネットワークを構築していく
  3. 後天的な多様性を高めると、機会が広がる。(教訓)いつまでも学ぶことはできる
  4. サポートグループが必要である。Intelでは1997年にWIN(Women at Intel Network)というサポートグループが設立されて活動を続けてきた。(教訓)遠慮なく助けを求める
  5. 道を拓くことが、マイノリティの数を増やし、より多くの体験を創造する。組織の意思決定者にマイノリティが増加し、マイノリティをマネジメントした経験を有する管理職が増加し、マイノリティにとってのチャンスが増加し、オープンな職場環境が作られる