江戸時代から明治初期にかけて北前船交易で栄えた福井県・三国湊。今も風情ある格子戸の町家や、豪商の面影が残る商家など、重厚な趣をそのまま残した空間が広がっている。そして三国湊と言えば、「江戸の花魁、三國の小女郎」と呼ばれるほど、全国でも有名な花街でもあった場所。当時の面影を探しながら、食べ歩きなんていかがだろうか。

いまなお、歴史と文化が息づいている三国湊

花街の面影を感じながら舌鼓

冒頭の「江戸の花魁、三國の小女郎」は、福井県坂井市の三国港周辺で古くから歌われている民謡「三国節」である。このエリアには昔、船問屋が軒を連ね、三国を訪れた人たちをもてなす花街として知られるところとなった。なお、「小女郎」とは江戸の花魁同様、最も位の高い遊女のことである。

三国湊はえちぜん鉄道「三国駅」から歩いて行ける範囲に、旧史跡文化財や伝統工芸・土産店、飲食店が点在している。ただブラブラするだけでもいいのだが、お店の中に入ってみると、花街時代の貴重な資料がさりげなく飾られていたりする。

九竜川にそって細長く続くエリアが三國湊。川にはいまも船が連なっている

かつての出村遊郭の入り口にあたるところにある橋は、遊郭に行こうか帰ろうかと思案したということで「思案橋」と呼ばれている

猫もまた、三国湊の風景!?

140年ほど前に建てられ、国の登録文化財にも指定されている建物を生かした料理茶屋「魚志楼」では、部屋から眺められる庭の造りも含めて、どっしりとした歴史を感じられる。その時代によって建物は様々な顔を見せていたようだが、ある時代には芸者の置屋(おきや)として文化人たちをもてなしていたことも、店内に飾られた写真からうかがうことができる。

そんな「魚志楼」では、三国港で水揚げされた旬の海の幸が楽しめるのだが、特におススメなのがオリジナルの「甘海老天丼」(甘海老茶屋御膳は1,940円、赤だし・香物付の単品は1,080円)。三国港では年間で約210tもの甘海老を水揚げしており、特に身がしまる冬の甘海老はうまみが増す。

生で食べられるほどの鮮度の甘海老を甘味のある天ぷらでとじた天丼は、プリッとした歯ごたえはもちろん、海老そのものの甘さが引き立っている。また、米は地元・福井発祥のコシヒカリの有機米を用いるなど、地のものを命いっぱい味わえる一品だ。

「魚志楼」にはカウンターのほか、奥座敷もある

「魚志楼」は国の登録文化財にも指定されており、店内には置屋時代の写真も飾られている

年を通して食べられる地物の甘海老をそのまま天ぷらにした「甘海老茶屋御膳」(1,940円)

花街から聞こえた三味の音色、江戸小唄や三國節を追体験したいなら、「竹よし」で抹茶を一杯もいいだろう。江戸時代に庶民の中で歌われた流行歌「江戸小唄」を三味線とともに披露してくれる「お抹茶・江戸小唄演奏 3曲」(1,000円)は、自分で歌をリクエストすることも可能。また、奏者である長沼慶江さんは、三国文化の継承にも寄与されている方でもあるので、三国湊が歩んできた歴史をうかがってみるのもいいだろう。

「竹よし」には、全国の遊郭や三国芸妓にまつわる貴重な資料も展示している

抹茶をいただきながら、三味線で奏でる江戸小唄を楽しむ

地のものが詰まった名物バーガー

食べ歩きにもぴったりの、三国ならではの名物バーガー「三國バーガー」(580円)があるのは「三國湊座」だ。はみ出さんばかりに詰め込んだ野菜、福井県産ビーフと国産ポークで作るパテ、その上にのるのが三国の特産・ラッキョウである。

「ハンバーガーにラッキョウ!?」と思ってしまうだろうが、パテからあふれるうまみたっぷりの肉汁と、ラッキョウの歯ごたえやさわやかさがマッチし、口の中でちょうどいいバランスとなる。また、もっちりとしたバンズは炊いたお米で作っており、全体の味をしめるバーベキューソースも自家製というこだわりよう。「三國バーガー」は同店がオープンした8年前より、不動の人気を誇っている。

木材問屋を再生させた「三國湊座」では、グルメのほか観光情報も発信している

地のものを詰め込んだ「三國バーガー」(580円)はボリューム満点!

ちなみに、木材問屋をリノベーションして作られた「三國湊座」は、飲食店としてのみならず観光案内の拠点として、また、かつてこの地にあった芝居小屋「港座」の再生を目指し、音楽や演劇などの文化の発信地という役割も担っている。

古きを守り新しきを育む街

三国湊ではこのほか、町家などの空き地を保存・改修して活用することで街のにぎわいを創造する、「三國湊町家PROJECT」というものを立ち上げている。現在、元薬屋をゲストハウスとして、元麹屋や邸宅を改修して新しい店舗として、それぞれが今の三国湊の新しい顔になるためのプロジェクトが始動している。これらの町家の入居者は随時募集しているので、ちょっと気になる人はホームページをチェックしてみるといいだろう。

徳島県の「桃源郷祖谷の山里」のプロデューサーであるアレックス・カー氏が、田中薬局のゲストハウス改修に携わっている

三国湊ではグルメめぐり以外に、近松門左衛門や三好達治などの文豪に愛され、商人・職人文化が花開いた湊町の歴史を今に伝える史跡・建築めぐりもたっぷり楽しめる。

例えば、三国湊の豪商のひとつであった木材商の「旧岸名家」や、福井県内最古の鉄筋コンクリート建築である「旧森田銀行本店」、江戸時代の俳人で遊女でもあった哥川の菩提寺「永正寺」、また、三国湊のシンボルともいえる「三國神社」では、毎年5月に北陸三大祭のひとつである「三国祭」が開催される。

「旧森田銀行本店」

「三國神社」

1日かけてじっくり散策することはもちろん、メインスポットを巡る1時間程度の食べ歩きにもぴったりの三国湊。湊町が歩んできた歴史を体感するひとときを過ごしてみるのもおススメだ。できれば、おなかをすかせた状態で三国湊へ訪れていただければと思う。

※記事中の情報・価格は2014年11月取材時のもの。価格は税込