"青島ビール"で有名な中国・山東省の青島(チンタオ)の中国人女性、リュウナさんは、寝装品の生産・貿易などを手がける青島栄澳貿易有限公司の女社長。現在32歳で、3歳と2歳の子供の母親でありながら、従業員約20名を率いる敏腕経営者でもあります。できる女社長のワーク・ライフ・バランスとは!?

■これまでの仕事の経緯を教えてください

刘娜(リュウ ナ)さん/中国・山東省在住/32歳/青島栄澳貿易有限公司社長

学生時代に中国の青島旅游学校日本語学科で日本語を3年間学び、2001年、学校の実務研修で日本のホテル(伊豆の有名温泉ホテル)でホテル業務の研修を受けました。卒業後、2002年に青島の寝装品貿易会社へ入社。入社後は、日本営業担当アシスタントとして、日本メーカーの商品担当者や商社の方との商談に同席したりしていました。

この頃は、仕事が終わるまで休みもほとんどなく、今考えるとよくやっていたと思います。当時は新幹線もないし、車は高いので会社に1台しかないような時代で、工場に行くのに夜行列車に乗ったり、長距離バスに乗ったりでした。入社3年目からアシスタントが付きましたが、忙しさが改善されたようには感じませんでした。でも寝装品の生産管理・輸出業務の基礎をしっかり学ぶことができました。

2005年、中国青島の貿易会社に転職。日本営業担当で、仕事にすぐに慣れて、仕事もスムーズに行えました。販売事業におけるマーケティング戦略や日本以外への貿易に関することも学び、中国の輸出入に関する業務を学びました。

2008年、結婚を機に心機一転、自分で会社を作り、寝装品の生産と輸出業務を行う会社を設立することを検討。友人の会社に頼んで輸出業務代行をしてもらい、自分の会社設立の準備を行いました。2009年、青島栄澳貿易有限公司を設立し、代表に就任。現在に至ります。

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

最初の寝装品貿易会社では、年間収入は約7万元(約135万円)。2番目の転職先の貿易会社では年間収入が約13万元(約250万円)。昨年の収入は約100万元(1,922万円)。現在の満足度は90%です。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

私の指示によって、社員が業務を行い、社員の生活向上・モチベーションUPにつながっていることに満足を感じています。私自身が会社勤めで経験したことを考えながら、今風にアレンジして社員に指示を与えています。その指示を的確に遂行し、社員が成功している日々を見ると、こちらまでうれしくなってきます。また、社員が自分から積極的に、日本のメーカーの方と仕事の話をしている姿を見る機会が増え、みんなが前向きに業務を行っているのを実感しています。お取引様から感謝の言葉やメールの回数も増え、会社をやってよかったと感じます。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

社員も人ですから、気分の良い時、悪い時いろいろあると思います。会社として、社員の言動に注意を払い、目に余るものがあれば注意をし、社会人としての行動発言の重大さを教え込むのは大変です。社員の仕事の内容や取引問題に対する情報収集を怠っていると、大きな問題が勃発した時に対応できなくなるので、情報収集にかける時間も増えてきています。仕事の区切りが悪く、まだ終わってないのに家庭があるので帰らなければならない時に、気分転換しているような自分に気づくと嫌だなと思ってしまいます。

■仕事と育児の両立はどのようにしているのでしょう?

私にとっては、家族があっての仕事です。仕事に夢中になると家庭のことがおろそかになるので気をつかっています。母親として、子供たちに不自由させないように、また、子供たちが幸せになれるように日々奮闘中です。

子供は長女が3歳6カ月、次女が2歳。平日は朝起きたら自分の支度を始め、主人と子供を起こし朝8:00に長女を幼稚園に送り、出社します。午後5:30に退社し、6:30に家族で夕食をとるのが日課になっています。予防接種や幼稚園、塾などに手がかかり、仕事中に抜けることも度々です。仕事と育児が重なった場合は、全て子供を優先しています。仕事は業務ごとに責任者へ連動し、指示して業務遂行を行える人材が育ったことにより、いまは安心して会社を出られる状態です。

2人のお子さんと一緒に

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

今日は日本から商談でいらしたお取引先と昼食を食べることになり、寒いので鍋が食べたいという要望で、青島市内にある「赤唐」に食事に行きました。お取引様は、中国の火鍋だと思っていたようで、日本の飲食ブランドの「赤から」が青島にあることにびっくりしていました。

まずは、鍋(赤唐鍋3番)一人前48元を頼んで、あとの注文はお客さまがセレクト。手羽先・せせり焼き・サラダなど続々とテーブルに運ばれ、鍋ができるまでのあいだに手羽先を食べ、「日本と同じ味です!」と言っていました。鍋が出来上がったので取り分けて食べ始めたのですが、これも「日本で食べている味!」と喜んでおられました。日本を出て8日目ということで、日本の味に大変喜ばれ、私も気持ちもおなかもいっぱいになった昼食でした。

日本人のお客さんと「赤唐」へ

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

性格が真面目で勤勉で、よく働く人が多いと思います。また、問題や難題にぶつかった時に相手や周りの人が考えていることよりも、自分自身の考えを押し通す人が多いように思います。(主人が日本人なので理解しがたいことはたくさんありますよ)

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

うちは日本のテレビが入るように契約していますので、時差の関係で夜10時に日本のニュースを見ることができます。主人とニュースを見ていると、貿易の仕事をしている関係で、いつも為替関係のニュースに見いってしまいます。今年の円安傾向にともなって、少量の商品発注や低価格用低品質商品発注が目立ち、日本メーカーの方と話していても販売価格に対しての原価になっているように見受けられます。どこで最低限の利益を確保したらいいのか、税金や為替による仕入れ原価が上がっている分、どこまで協力すれば良いのか。日本の中小企業は、従業員は、大丈夫なのかと心配しています。(輸出入がある商社は別です)

■休日の過ごし方を教えてください。

会社の休みは、土・日・祝日ですが、子供と遊んでいると休みもあっという間に過ぎてしまいます。自分自身の休憩は、毎日、子供たちが就寝した後と、業務に支障を来さない平日の午後1~2時間です。英語教室(週2~3時間)やヨガ教室(週2時間)でストレスや疲れを吹き飛ばしています。時々足マッサージにも。それでもストレスが取れない場合は、やはり買い物です。日本(Yahoo/楽天/Amazon)と中国のネット通販で欲しい物を買います。日本で買った分は日本の会社に届けてもらい、主人が日本の会社に出張した時に持って帰ってきます。最近は、量が増えて減らすように言われています。日本でそれらの荷物を見ると、主人のストレスがたまるそうです(笑)。

■将来の仕事や生活の展望は?

今後5年ぐらいで、現在のポジションを後任に任せて、自分は出産前のように日本と中国を行き来しながらグループ会社(現在、中国に3社、日本に2社、関連企業がある)の仕事をおこなって行きたいと思います。現在、子供たちは、日本国籍を保留していますので、大きくなる前に両方の国を見て、良い方に国籍を設けて永住し、世界中に旅行に行きたいと思います。また、和牛が大好きなので日本でおいしいお肉をたくさん食べたいです!!