今や誰もが必ず1本は持っていると言っても過言ではない文具「ボールペン」。日本では非常にポピュラーなこの筆記具、最初に発明されたのは実は海外だという。

しかし、水性インキ・ゲルインキの発明からはじまり、近年定着してきた低粘度油性や消せるボールペンの開発など、特にインクの発達において、日本は世界のボールペンの技術をけん引していることをご存じだろうか。そう、日本のボールペン、これがなかなかスゴいのである。

今回は、そんな日本のボールペンの中でもインクに着目した注目の製品を、おなじみ渋谷区表参道の「文房具カフェ」の店長、奥泉輝氏に選定してもらった。

奥泉 輝(おくいずみ あきら):文房具カフェ店長。祖父が創業した紙製品・文房具の卸売会社を兄と運営するなか、人と文房具が出会うことで創造的な何かが生まれる場所というコンセプトのもと、2012年より同店舗を展開。同年より現職

書き味なめらかな「低粘度油性」タイプのボールペン

前回は、フリクションボールをはじめとした"消える"ボールペンについて語ってもらったが、今回店長がピックアップしたのは「低粘度油性」タイプの製品。油性ボールペンが持つ乾きの早さなどの利点を継承しつつ、従来よりも書き始めからなめからかに書くことができることが特徴となっているそう。紙との摩擦が少ないので、長い文章を書いていても疲れないのが最大の利点だ。

■三菱鉛筆 ジェットストリーム

「ジェットストリーム」は、油性ボールペンに新たなカテゴリ「低粘度油性」を生み出した大ヒット商品だ

■文房具カフェ・奥泉店長のひとこと

近年のボールペンのヒット作のひとつが、この「ジェットストリーム」。ボールペンの歴史の中では最も古くかつオーソドックスであった油性ボールペンに「低粘度油性」という新しいカテゴリを作り出した、エポックメイキングなボールペンです。世界販売本数はなんと年間約1億本と言われています。

インク自体の技術だけではなく、先端のボールの工作精度やインク逆流防止の工夫など、総合的な技術力が必要な低粘度油製ボールペンですが、ジェットストリームの登場後、日本の文房具メーカーは各社競ってこのジャンルに新商品を投入してきています。

「低粘度油性」タイプのボールペン

奥泉店長が言うように、各社が「低粘度油性」カテゴリのボールペンを市場に投入し、選択肢がは充実してきている。ここでは、その中から4つの製品を紹介する。

■パイロット アクロボール(アクロインキ)

アクロボール

細身のボールペン「アクロボール」に使われている「アクロインキ」は、パイロットの従来の油性インキに比べて約1/5の粘度。さらに潤滑剤を配合したことで、「なめらかで濃い筆跡」と「油性インキならではの優れた耐水性」を両立しているという。

■ゼブラ スラリ(エマルジョンインク)

スラリ

「スラリ」に使われているエマルジョンインクは、油性インクのしっかりとした手ごたえと、水性ジェルのさらさらとした軽さを兼ね備えたもの。このインクをボールペンに搭載したのは、同社によれば世界で初めてだったとのこと。

■ぺんてる ビクーニャ(ビクーニャインキ)

ビクーニャ

「ビクーニャ」は、筆記時の気持ちよさを大切にした油性ボールペン。書き心地の良さの追求に加え、ボールペンで最もよく使われる色と言っても過言ではない「黒」の再現性にこだわり、顔料と染料をブレンド。テカらず深みのある黒を実現したそうだ。

■トンボ リポータースマート(超低粘smartインク)

リポータースマート

ビジネスシーンでの利用をテーマにした「リポータースマート」は、スリムな多色式ボールペン。インクは低粘度にこだわった「超低粘smartインク」。インクの逆流を防ぐ機構と、先端からの漏れを押さえるためのスプリングが内蔵されている。

どれもなめらかな書き味の油性ボールペン(正確にはエマルジョンインクは、油性と水性を乳化させたもの)という点では一致しているが、実際に使ってみるとそれぞれの書き味は微妙に異なるそう。ぜひ店頭で書き比べてお気に入りの1本を見つけてほしい。