iPhone 6/6 Plusの目玉機能のひとつが「Apple Pay」だ。ここでは、複数回に分けて、Apple Payに関する素朴な疑問に答える形で、情報を整理してみたい。今回は、「なぜGoogle Walletは失敗しApple Payは受け入れられたのか」について。

Google Walletは決済対応店舗で対応のAndroidスマホをタップするだけで支払いが済ませられるサービス

Q なぜGoogle Walletが失敗して、Apple Payは早期から受け入れられたのか?

タイミングの問題が大きい。Googleが「Google Wallet」を提供開始した2年前、まだ米国ではNFCによる決済インフラが整っておらず、使える場所も限られてた。また、Googleの台頭に懸念を抱く携帯キャリアも欧米に多く、特に米国では競合サービスの準備を進めていた携帯キャリア連合によるジョイントベンチャー「Isis (現在は諸般の事情により「Softcard」に改名)」の存在もあり、Google Walletアプリを搭載した端末の取り扱いを拒否していたという背景もある。

サービスは当初Sprint販売の特定端末に限られ、後に拡大したものの、事実上停滞している。同様に、昨年2013年末にサービスを開始したSoftcardも対応端末や認知の問題もあり、市場が拡大するに至っていない。

一方でApple Payは、米国でNFCによる決済インフラが整いつつあり、小売業者の賛同を得やすいタイミングで登場したという要素がある。

米国では2015年10月までに小売店での対人販売におけるカード決済をEMV (ICチップ入りカード)対応することが法律で定められており、これに向けて各小売店がEMV対応でPOSや決済端末を更新していくなか、同時にNFC対応が積極的に進められることで入れ替えが比較的にスムーズに進んだという背景がある。

そのため、Apple Pay開始時に「22万店舗」という驚異的な数字の対応店舗数が提示されることになった。またGoogle Walletの失敗やSoftcardの低迷により、NFCを使った決済、特にモバイル端末による決済の普及がほとんど進んでおらず、先行投資を行った小売店やカード決済量を増やしたいカードブランド/銀行の思惑が一致し、Apple Payの登場を歓迎したとみられる。

Apple Pay対応企業(画像は対応企業の一部)

特にiPhoneユーザーは比較的富裕層に多く、こうした新しい決済方法に対する興味も強く、サービスが先行スタートした店舗ではモバイル端末経由の決済が急増するなどのメリットを享受しているようだ。McDonald'sでNFC決済の半数がApple Payだったという報告もあるが、この部分はもともとの決済数が少なかったという点に留意が必要だ。