『ヨルタモリ』でバラエティ番組では初めてのレギュラーを務めている宮沢りえ

秋クールの新番組もそろそろ落ち着き、評判や視聴率の明暗が分かれはじめているが、注目は何と言ってもフジテレビの週末。金曜日に『どぅんつくぱ』(23:00~)、土曜日に『ミレニアムズ』(23:10~)、日曜日に『ニュースな晩餐会』(19:58~)、『オモクリ監督』(21:00~)、『ヨルタモリ』(23:15~)の計5本を投入して大勝負をかけていたのだ。

これらはいったいどんな番組で、どんな評価を得ていて、どんな未来が待っているのか、検証していきたい。

前番組のファンを無視して勝負!

テレビ業界全体における秋の改編で目立っていたのは、"世界系"の新番組。『イッテQ』(日テレ)や『Youは何しに日本へ?』(テレ東)などの人気を背景に、『所さんのニッポンの出番!』(TBS)、『世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ!!視察団』(テレ朝)、『ザ・世界ワンダーX』(TBS)、『世界のすげぇにツイテッタ~』(TBS)と4本もの番組がはじまった。

その他の新番組も、"どっきり系"の『びっくりぃむ』(テレ朝)など定番が多い中、フジテレビは圧倒的に独自路線。「視聴者層を気にせず、面白いものを!」という攻めの姿勢で、前番組から180度異なる新番組を投入した。

以下に、新旧番組を比べてみよう
『僕らの音楽』(シック音楽)→『どぅんつくぱ』(おバカ音楽)
『水球ヤンキース』(連ドラ)→『ミレニアムズ』(集団芸)
『クイズ30~団結せよ!』(クイズ)→『ニュースな晩餐会』(ニュース討論)
『ワンダフルライフ』(人物ドキュメント)→『オモクリ監督』(短編映像)
『新堂本兄弟』(トーク&音楽)→『ヨルタモリ』(タモリワールド)

「視聴率が悪かったんだから、前番組のファンなんて気にしない」「とりあえず変えなきゃダメ!」という振り切り感には、清々しささえ覚えてしまう。

低視聴率だが、識者の評価は高い

しかし、ここまで前番組の視聴者層を無視してしまうと、いわばゼロからのスタート。当然というべきか、視聴率のスタートダッシュは望めない。『ミレニアムズ』『ニュースな晩餐会』『オモクリ監督』『ヨルタモリ』は1ケタ中盤で低迷し、『どぅんつくぱ』に至っては2~3%の超低視聴率で推移している。

視聴率は「スタートしたばかりだから、まだ浸透していない」というエクスキューズが通用するが、内容の評判はどうなのか。

私も参加した『週刊ザ テレビジョン』の「秋の新番組クロスレビュー」(ガチンコ採点)では、お笑い評論家のラリー遠田さんが『どぅんつくぱ』『オモクリ監督』に満点、放送作家の堀江志津さんが『ミレニアムズ』を「本気度が伝わるフジのお家芸!」と満点、テレビコラムニストの戸部田誠さんが『ヨルタモリ』に「タモロスが一気にタモ充に」と満点をつけるなど、識者の評価はそれなりに高い。一般視聴者のアンケートや口コミを見ても、賛否こそ別れているものの、コアなファンを獲得しているようだ。

ちなみに私が注目しているのは、『ミレニアムズ』。現在あの手この手でヒット企画を探しているところだが、かつて土曜23時は大物芸人たちが巣立った枠だけに、次代を担うエース芸人の誕生を期待したい。

気がかりは「半年で打ち切り」の悪癖

フジテレビがここまでチャレンジしたのは、かつて「楽しくなければテレビじゃない」のコンセプトでテレビっ子たちを虜にしたころ以来かもしれない。他局のような改編を避ける安全運転や、人気番組の二番煎じ狙いではないところは、もっと評価されてしかるべきではないかと思われる。

ただ、最近のフジテレビに対する懸念は、「新番組をたった半年間であっさり打ち切ってしまう」こと。悪い意味で信念もこらえ性がないのだ。実際、『クイズ30~団結せよ』『ワンダフルライフ』は、ほとんどテコ入れすらされず、わずか5カ月弱で打ち切られてしまった。もともとバラエティ番組は、「放送しながら内容を洗練させて、少しずつファンを増やし、愛着を持ってもらう」というステップが必要なのだが、このような短期的な視野で人気番組は育たない。

そのひずみはバトンを引き継いだ新番組へ確実に現れる。枠に定着した視聴者は少なく、準備期間も少ない中、「オリジナリティある企画を用意しなければいけない」制作スタッフは疲弊する一方だ。また、スタート直後から視聴率だけを基準に考えるのなら、思い切ったキャストの抜擢もできず、「見飽きたタレントが並ぶ」という悪循環に陥ってしまう。

しかし、視聴率ばかり過敏にならず、地道に番組のブラッシュアップを重ねれば、今期スタートした番組もまだまだ巻き返せるはずだ。たとえば、『水曜日のダウンタウン』(TBS)は、裏番組に『きょうは会社休みます。』(日テレ)『ファーストクラス』(フジ)の人気ドラマや、『報道ステーション』(テレ朝)などの強敵がそろう中、順調に2ケタ視聴率をマークしている。番組スタート時はわずか7%前後だったが、地道に内容を磨いたことが評価にそのままつながっているのではないか。

ドラマでも挑戦的なスタンス

少し話は変わるが、今クールのフジテレビは、ドラマでも挑戦的な姿勢を見せている。アニメを先行放送した大プロジェクト&豪華キャストの『信長協奏曲』。1話完結全盛の中、あえて2話完結にトライした『すべてがFになる』。芸人・バカリズムに脚本を託した『素敵な選TAXI』。わずか3カ月という異例の続編『ファーストクラス』。トレンドを抑えた姉妹Wヒロイン『ディア・シスター』と他局のような安定志向は見られず、やはり攻めている。

ドラマもバラエティ番組と同じで、視聴率こそ苦戦しているものの、内容の評判はおおむね上々。さらに視聴者満足度を上げ、視聴率も上げることはできるのか。「楽しい番組作りに挑戦し続ける」というフジテレビのDNAが、再び視聴者に受け入れられるにはまだまだ時間がかかりそうだ。ただ、他局が無難な番組作りを続けるのなら、主役の座に返り咲くチャンスはあるのかもしれない。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。