『インセプション』『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督が、壮大な宇宙を舞台に父娘の愛と絆を描いた最新作『インターステラー』(11月22日公開)。人類の存亡を懸け、愛する家族の未来を守るため、居住可能な新しい惑星を探すという重大な使命を任された人間たちのドラマを描いた本作について、ノーラン監督は「新しい挑戦がたくさんあった」と語る。

初めて"宇宙"を舞台に描いた本作で、ノーラン監督は徹底的にリアリティを追及し、CG技術に頼るのではなく、実際に実物を撮影することにこだわった。そして、過酷なロケ地での撮影も行ったが、「本当に厳しい環境に行くことは、リアルさをさらに深めることになる」と、俳優たちにとっても重要なことだったという。

『インターステラー』を手掛けたクリストファー・ノーラン監督

――本作で、ご自身にとって新たな挑戦だったことは?

この映画には新しい挑戦がたくさんあった。宇宙の旅を描くという挑戦は、長い間やってみたかったのに、一度もやったことがないものだった。技術的な観点から言うと、とても難しい。われわれはグリーンスクリーンを使わないという決断を下した。効果スタッフに環境を全部引き渡したくなかったんだ。窓の外の景色をリアルにしたかった。だからわれわれはセットを建てた。セットというより、シミュレーターに近いものだったよ。中に座ると、窓の外で、宇宙船が異なる外力に反応している様子が見えるし、感じることができる。そんなふうに、自然な方法でこの映画のリアリティを達成することがとても重要だったんだ。

――リアリティを追及するため、かなり過酷な現場で撮影を行ったそうですが、現場で最も大変だと感じたことを教えてください。

スタッフにとっては、ウォーター・プラネット(水の惑星)がもっとも大変だったと思う。膝までの深さの水の中に3日間立っていたんだ。機材を置くところがどこもなくてね。すべてを持っていないといけなかった。乗り物を動かさないといけなかったし。凍えるほどだった。ものすごく寒かったよ。でも実は、僕はそういうのが好きだったんだ(笑)。そう、実際は好きだったんだよ。

――なぜ、過酷な現場が好きなのですか?

何もそこには置けなかったからだよ。まるで小さな映画をやっているみたいだった。突然、余分な装備をすべて取り除かないといけなかった。そういう要素をとても楽しんだよ。また、カメラクルーにチャレンジすることがとても楽しかった。役者たちにチャレンジすることもね。彼らは、想像できるもっとも厳しい環境に行く宇宙飛行士を演じているわけだからね。本当に厳しい環境に行くことは、そのリアルさをさらに深めることになるんだ。

――ウォーター・プラネットは、アイスランドで撮影されたんですね。

そうだよ。僕たちが『バットマン・ビギンズ』を撮影した氷河の近くに(あの場所)見つけたんだ。あの映画で使わなかった氷河のところに、撮影するために戻ったんだ。その近くに、氷河が溶けた水のような、河川デルタみたい場所があって。見渡せる限りね。2、3フィートの深さしかないけど、黒い砂が下にあって、深く見える。深い海のように見えるけど、そこを歩くことができるんだよ。

――そのように徹底してリアルを追及して描いた宇宙が舞台の作品ですが、作品の根底にあるのは父娘の絆と愛の物語です。監督自身が父であることが、この映画に与えている影響を教えてください。

僕にとってはそれがこの映画のすべてだと思う。それがこの映画を作りたかった理由だ。この映画の中心にあるのは、父親と子供たちの関係だ。それがとても強い。だから僕はこのキャラクターと彼の旅、彼の難しい心情に深く共感した。僕にとってこれはとても個人的な映画になった。そういう興奮は、人が感情的に強くつながりをもつことに関係している。個人的にとても強く感じると、それによって人はとても大胆で、風変わりな場所に連れ出される。スリルあふれる映画体験のアトラクションにね。フィルムメイカーはそういう素晴らしいコンビネーションを持つべきだと思う。

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