2014年11月19日~21日までの3日間、東京ビッグサイトにて、「新価値創造展 2014」が開催されている。同イベントには、医療・環境・テクノロジーなどの分野において、新たに価値を生み出すことに意欲的な全国の中小・ベンチャー企業550社が集結した。

業界人が「企業キュレーター」として参加し、共創の加速を図る!

中小企業基盤整備機構が主催する「新価値創造展 2014」は、技術や可能性を持ち合わせた中小・ベンチャー企業を支援することを目的に開催されるビジネスイベントで、今年で10回目となる。昨年までは、「中小企業総合展」と題して行われており、3日間で5万人以上を集客した実績をもつ。

今年は「共創による新価値創造」をテーマに掲げ、イベントの構成を一新。業界・分野ごとに有識者が「企業キュレーター」として参加し、特別展示場となる「新価値創造Labo」の出展企業のピックアップやメインステージでのセミナーへの企画・参加などを行い、出展者と来場者を巻き込んだビジネスヒントの発掘・マッチングの実現を目指す。

同イベントにて取りあげる業界・分野は、健康や医療、介護などの「ウェルネス」と、住宅や福祉、環境エネルギーといった「グリーンコミュニティ」、機械や素材、加工などの技術をテーマとする「スマートファクトリー」の3つ。これら分野ごとに、企業ブースの展示のほか、技術体験やワークショップ・セミナーへの参加などが可能な特別展示ゾーンを設ける。

分野ごとの「新価値創造Labo」の様子

ウェルネス社会は、展示ゾーンを「予防・未病」「治療」「介護・リハビリ」に細分化し、健康長寿社会を見据えたソリューションの共創を目的に、実用間近のシステムや機器の体験デモなどを開催する。

グリーンコミュニティでは、地域コミュニティの再生に貢献するビジネスをテーマに計114社が出展。東京大学や筑波大学、名古屋大学などの学生が会場内にて出展者・来場者にニーズの聞き取りを行い、それにより発展させたアイディアと出展企業の技術を組み合わせた新価値創造プランニング「具現化ソン」を実施する。同アイディアは、最終日となる21日に発表される予定だ。

学生などが新価値の共創を目指す「具現化ソン」概要

参加学生によるミーティングの様子

スマートファクトリーでは、超精密・超高速インサート成形技術とIT化や、匠の技と最新工業技術の融合など専門技術の実例を紹介する。

筆者は19日、新価値創造展 2014の実施にあたりサポートを担当した、博報堂イノベーションラボのリーダー 粟田恵吾氏に話を伺った。同氏は、大手企業のイベノーションに関するコンサルティングの経歴を持つ。

「このイベントは従来、販路拡大を目的に、来場者にバイヤーを想定した構成で開催していました。しかし中小企業には、自主的なイノベーションや社会・大企業の流れに対する情報収集、他社・他業種とのコラボレーションなどの機会が少ないという課題がありました」(粟田氏)

そこで今年度は、「出展者や来場者が今後、新たな価値を共創できるパートナーを探す場」というコンセプトを考案したという。

「中小企業総合展や新価値創造展という名前も、来場者が内容を想像しづらいと思い、3つの社会的なテーマにそって出展企業を細分化しました。このテーマは、普段、大企業のイノベーション支援を行う中でのヒアリングを参考に、社会や大企業が注目している業界を設定しています」(粟田氏)

そして、前回までのイベントとの大きな違いは「企業キュレーター」の存在だろう。

同氏によると、中小企業には、技術やアイディアを持っていても、それの具現化やアピールの方法を知らないことが多いのではという。そこで、企業と企業を結びつける役目を担うキュレーターが参加することで、同イベントの目的となる「新価値の共創」をサポートする狙いだ。

明日(20日)の見どころは?

なお、メインステージでは3日間にわたり、ウェルネス社会・グリーンコミュニティ・スマートファクトリーといった分野ごとに、企業キュレーターや有識者による「新時代のビジネスヒントを見つけるビジョンセミナー」が開催される。

メインステージで開催される「新時代のビジネスヒントを見つけるビジョンセミナー」の様子

2日目のセミナーは、スマートファクトリーとグリーンコミュニティの分野で構成。amadanaの代表取締役社長 熊本浩志氏による「製造業から創造業へ」といった講演が11:00から実施されるほか、「孤独問題を解消する分身ロボットコミュニケーション」と題したオリィ研究所所長 吉藤健太朗氏のセミナーも予定している。こちらは、17:00からのスタートだ。

また、11:00からは「ワンポイントH!NTコーナー」というセミナー会場にて、「『松竹芸能』が取り組む"異業種交流" 『UR都市機構 × 松竹芸能』によるスマートウェルネス住宅の実現に向けた健康増進プログラムの実証実験」と題したトークセッションが開催される。

さて、読者のみなさんは、食育ならぬ「笑育(わらいく)」という言葉をご存知だろうか。松竹芸能が掲げる考え方の一つで、「笑いが人を元気にする」という意味だという。

同セッションでは、UR都市機構が所有する高齢者の多い住宅の活性化を目的に、松竹芸能に落語家の派遣を依頼したことが始まりとなり実現した取り組みを紹介する。

これは、落語家だけでなく、スポーツインストラクターなどを住宅に派遣し、笑いやスポーツによる健康状況の変化を測定する実証実験。東京都・北区などで行われ、セッションでは同結果を報告するという。

企業ブースの展示会場にて、「新たなビジネスヒント」を発掘するだけでなく、こういったセミナーや講演で「新たな視点」を得ることができるかもしれない。ぜひ、足を運んでみてはいかがだろうか。