東京都・六本木の東京ミッドタウンホールで開催されたクリエイターの祭典「Adobe CREATE NOW "Best of MAX"」。午後の部は、"Learn"というキーワードのもと、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターがスピーカーとして登壇する19のブレイクアウトセッションが展開された。

ここでは、写真家・鈴木陽介氏(鈴木陽介写真事務所)とビジュアルデザイナー・CGクリエイターの平野倫氏(HIRANORIN OFFICE)による「フォトグラファーの『撮影』と『画像処理』のバランスとは?」と題したセッションの模様をお伝えする。

同セミナーのスピーカーを務めた写真家の鈴木陽介氏(左)とビジュアルデザイナー・CGクリエイターの平野倫氏(右)

同セッションは、鈴木氏と平野氏の自己紹介からスタート。鈴木氏は自身が出版した写真集「カレーライス」と「むし」の2冊に収録された作品や、平野氏がレタッチを担当したビジュアル、現在制作中である地球と宇宙の関係を形にした写真集「青と黒」を紹介した。続いて平野氏は、平凡なストック素材やポートレート、スナップ写真を、Photoshopによるレタッチや合成によって劇的に変化させたビジュアル作品を紹介した。鈴木氏は、クライアントが難しい要求をしてきた場合はレタッチャーの平野氏に依頼することも多いと語った。

鈴木陽介氏の写真集「カレーライス」、「むし」に収録されている作品の一部

写真家の効率的な時間の使い方とは

今回、両氏がスピーカーとして招かれたのは、アドビ システムズのWebサイト内のコンテンツである「Adobe Photoshop Magazine」上で使用する写真の提供依頼がきっかけだという。「暗い花写真を色鮮やかに」というコンテンツには、暗い花の写真を色鮮やかにするまでの手順が詳しく解説されているが、素材となった「暗い花の写真」の撮影時は三脚を持っておらず、現場は暗かったという。かといって、車まで三脚や照明を撮りに戻る時間がなく、手ブレしないギリギリのところまでシャッター速度を落として撮影し、あとでPhotoshopとLightroomで仕上げることを選択したという。現在はこのような時間の使い方が有効であり、準備や撮影に費やす時間をレタッチ作業に回す方が効率的だと述べた。

平野氏が手がけたレタッチ作品の一部。高度なレタッチテクニックとPhotoshopの可能性の高さを見せつけた