2013年に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」。その中では「情報資源の活用こそが経済成長をもたらす鍵」とされ、ビッグデータとオープンデータへの期待が寄せられている。

行政が保有するデータは、信頼性の高い基礎データとして、民間における利用ニーズが高い。しかし、公共データの民間開放による活用が進まず、情報資源を十分に活かしきれていないというのが現状だ。

その一方で、実際にオープンデータを活用し、さまざまなイノベーションを巻き起こしている自治体が福井県鯖江市だ。同市は、日本の行政として最も早くオープンデータに取り組み、「電脳メガネサミット」や「鯖江市役所JK課」、「Code for Japanのコーポレートフェローシップ」などを実現している。

2014年12月3日(水)、東京のマイナビルームで「ビッグデータセミナー~ビッグデータ競争社会の到来! 経営に活かす戦略分析とは!?」が開催される。同セミナーでは、鯖江市におけるプロジェクトの仕掛人である、株式会社jig.jp 代表取締役社長 福野 泰介氏による基調講演が予定されている。本記事では、当日の講演にて紹介予定である「鯖江市の事例」を基に、その背景と未来について福野氏に解説いただく。

「この流れから日本が置いていかれる」という強い危機感が発端

株式会社jig.jp 代表取締役社長
福野 泰介氏

福野氏が代表取締役社長を務める株式会社jig.jp。設立当初は、主にフィーチャーフォン向けのブラウザやアプリケーションの開発を行っていた。だが、スマートフォンの登場により「スマートフォン向けの新しいブラウザを開発する必要がある」と考えた福野氏は、W3C(World Wide Web Consortium:Web技術の標準化を進める非営利の国際団体)に加盟し、さまざまな情報収集を行った。そこで、W3Cの創立者でもあるティム・バーナーズ=リー氏が「行政が持つ公共データを活用してセマンティックWebを進めようとしていた」ことに大きな刺激を受けた。そして、すでにアメリカやイギリスではその方向に進んでいると聞いた福野氏は「このままでは日本が取り残されてしまう」との危機感を抱き、現在の移住地でもあり、jig.jpの開発センター(本店)を置く福井県鯖江市の牧野市長に話を持ち込んだとのことだ。

「牧野市長は非常に柔軟な方で、提案するとすぐに、しかも真剣に検討してくれます。おかげで、話がスムーズに進みました」(福野氏)

福野氏の講演も予定されている「ビッグデータ競争社会の到来! 経営に活かす戦略分析とは!?」の申し込みはこちらから

首長、議会、市職員、市民が一体とならなければ、オープンデータの活用は進まない

現在、鯖江市では、行政とjig.jpを始めとする民間企業、そして市民が一体となってオープンデータへの取り組みが進められている。jig.jpが作成した「消火栓の位置表示アプリ」や「バスの案内アプリ」なども、オープンデータが公開されたことによって生まれた事例の一つだ。また新たな試みとして、女子高生がまちづくりに参加する「鯖江市役所JK課」が2014年に発足。オープンデータを利用したスマートフォンアプリの企画・開発に取り組んでいる。

鯖江市役所JK課のWebサイト。福野氏はITコーディネーターとして参加

現在、Webアプリとしても展開中の「消火栓を探せアプリ」

このように鯖江市の取り組みが成功した要因として、福野氏は「首長、議会、市職員、そして市民が一体となって進めることができたこと」を挙げた。

「この4つが一つにならなければ、オープンデータの活用は進みません。鯖江市の活動も、一自治体だけで止めてしまっては駄目なんです。これが日本全体に広がりオープンデータの活用が根付く、それが重要です」(福野氏)

2014年12月3日(水)に行われるセミナーでは「世界最先端IT国家創造法、官民つながるオープンデータとビジネスへの活かし方」という、福野氏の基調講演が実施される。当日は、鯖江市で行われている数々の取り組みについて、具体的な事例が紹介される予定だ。

将来、オープンデータの活用を目指している方々にとって、福野氏が紹介する事例は非常に有効な情報となることだろう。

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