今年で20周年を迎え、この秋大改装を行った池袋P’PARCO。9月以降順次新しいテナントショップが続々とオープンし、10月25日には「ニコニコ本社」が地下1・2階に移転、ビル壁面の大型LEDモニターが点灯するなど新生P’PARCOが本格的に始動した。デジタルネイティブ世代の若者を中心にファッションと文化を発信する新たな商業施設として生まれ変わったP’PARCO。そのリニューアルを仕掛けた中心人物の2人、パルコ池袋店店長の服部道則氏と営業課の上岡靖弘氏に話を訊いた。

池袋はアニメ・ポップカルチャーの代表都市

――まずはリニューアル後の反響をお聞かせ下さい。

パルコ池袋店店長の服部道則氏

反響の想定としては、去年のP’PARCO来館者数の1.5倍ぐらいを目指そうと設定していました。ところがフタを開けてみると、グランドオープンとなった10月25日は平常時の3倍強の方が来館されるという結果になりました。以降もイベント等を開催すると、平均して昨年のだいたい2倍ほど集客が増えています。入館しなくても壁面の大型LEDモニターの前に集まっているという人もいらっしゃいますので、予測を大幅に上回る反響だったというのが正直なところです。

10月25、26日にやらせていただいた“ニコぶくろ祭”と題したイベントに関しては、2日間で全体の来館者数で言うと4万人強、地下1・2階だけで約2万5,000人の方が来館されました。さらに、ニコニコ動画の生放送視聴数は36万人を超える結果になりました。

――今回、P’PARCOのリニューアルを実施した理由は?

P’PARCOはビルも小さいですし、駅にも直結していないという立地としてのハンディキャップがありました。ですので、やはり通常のカジュアルファッションショップの集積だけでは商業施設としての醍醐味・特色が出しにくかったというのが理由の1つにありました。

一方、そんな中にあって、池袋にアニメイトさんが進出されたり、サンシャイン60の西側が“乙女ロード”と呼ばれるようになったりと“アニメ・ポップカルチャー”の動きが出てきたところがあります。でもそうした場所は、駅から少し離れた立地にありますので、駅前でも何か取り組めないだろうかと考えていました。もちろん、その背景には渋谷のパルコで“シブポップ”(アニメ・漫画・音楽などを集積したフロア)という企画が既にあったことが挙げられます。それを池袋に持ってくるにはどうすればいいのかというアイディアが、今回のリニューアルにもつながりました。

実際、池袋という街の動きも随分変わってきましたし、タイミングとしても今やるのが面白いのではないかと。そうした模索がある中で、ニコニコ動画を運営するドワンゴさんと接点を持つことができたのです。

――このリニューアルプロジェクトはいつごろスタートしたのですか? またその後、流れとしてはどのように展開されていったのでしょうか。

1年ちょっと前からです。ドワンゴさんと話を始めたのがちょうど昨年の10月頃からで、双方で話をしていく過程で、いろいろな企画が生まれて実現しました。例えば今回、ニコニコ動画のカフェを設置していますが、話し合いの当初はメイドカフェ等の構想もありましたが、今後の企画において色々な取組がしやすく、汎用性が持たせられるだろうということで現在の形になりました。スタジオ、イベントホールというのは当初からの構想のままです。

オタクカルチャーの聖地"男性=秋葉原、女性=池袋"

――ニコニコ本社が移転という話はどういった経緯が?

同社 営業課の上岡靖弘氏

ドワンゴさんはもともと原宿にニコニコ動画の本社とスタジオを持っていたのですが、ドワンゴさん自身も街のイメージ的に少し違うかなと感じていたようなんです。それで移転先はどこがいいかという話になった際に池袋が浮上したそうです。背景には女性ユーザーの更なる獲得も目指していきたいということで、いまやオタクカルチャーの聖地が『男性=秋葉原、女性=池袋』とも言われることもあり、池袋というエリアがピックアップされるに至ったとのことです。そうした流れの中でこうした商業ビルの中に入るという選択肢がドワンゴさんの中にも生まれ、私どもとの思惑と一致して実現に至りました。

――ニコニコ動画と組むことによって、どのような期待を抱いていますか?

ニコニコ動画のイベント力は動員面などから見ても目を見張るものがあり、我々のようなファッションビルが考えるセールスプロモーションイベントとは全く違った発想のイベントを展開されます。そこの部分での期待が特に大きいです。イベントに来られる女性のお客様に対し、 ファッションを中心としたポップカルチャーの情報発信とネットカルチャーをうまくミックスしていければと思います。池袋のイメージには、親しみやすさとアミューズメントが挙げられますが、池袋サンシャインやジョイポリスだったり、ゲームセンターやカラオケ、ボーリング施設といった従来のアミューズメントとは異なるネット発の参加体験型のアミューズメントをP’PARCOを通して仕掛けていけたらと思います。

――ショップの誘致など他の方面で苦労された点は?

今回のリニューアルはビルとして、アニメ・ネットカルチャー・ファッションのミックスで構成しようと考えておりました。アニメイトさんや乙女ロードにあるショップと同じことを提案しても、後発組のP’PARCOとしては、お客様の評価は得ることができないと考えていたため、P’PARCOでしか提案できないショップやMD、体験や情報発信をやれればいいと思っていたので、他にはない“オンリーワンショップ”の誘致というところが苦労しました。結果としてニコニコ本社を始めとして、EVANGELION STORE TOKYO-01や、ファッション誌LARMEがコラボしたアパレルmon Lilyなどが、現状では国内唯一店舗として展開しております。

――リニューアル後、P’PARCOの客層に変化は感じますか?

全体的には客層が変化したというよりは、プラスオンになったかたちですね。週末のファミリー層が増えましたし、タワーレコードや石橋楽器というのはCDを買って音楽を楽しんだり、ちょっと高級な楽器を買って楽しむといった年齢層が高めの世代です。そういう意味では、年齢層が広がったと感じています。また、アニメ好きな欧米系の外国人のお客様も増えていると感じています。

――今後の展開についてお聞かせください。

イベントはドワンゴさんの得意分野ですので、今後も継続的に行っていきたいと思っていますが、出店していただいたテナントさんとニコニコ動画が組んだ企画もやっていきたいですね。それから、アニメやネットカルチャー、そこから派生するコスプレなどに絡めて、ファッションブランドやアパレルメーカーさんとが組んで新たなビジネスに結びつくような基軸の場、実験的な場として発展していければと思います。今回のリニューアルがお互いのプラットフォームを掛けあわせた部分で、従来にはなかった何か違う発想のものが生まれないだろうか?というのがそもそもの取り組んだ要因でもありますので。

P’PARCOでは、今後、新規にオープンする店舗も控えており、ニコニコ動画とのコラボレーションによる年末年始に絡めたイベントなどの企画も目白押しとのこと。始動したばかりの新生P’PARCOだが、今後もいっそう目が離せない。