スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ち、様々な部品や技術が搭載されています。そんなスマートフォンのカタログを見たときに、専門用語 のオンパレード……と思ったことはないでしょうか。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「圧縮音源の高音質化」についてです。

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近ごろ、「ハイレゾ対応」をうたうスマートフォンが増えてきました。ドコモは2014-15年冬春モデルとして、「Xperia Z3 SO-01G」や「GALAXY S5 ACTIVE SC-02G」など7機種をラインナップしています。再生周波数帯域などスペックはさまざまですが、FLACやWAVといったオーディオCD以上の情報量を持つサウンドファイルを再生できること、その際ポータブルアンプなど外部機器に頼らないことが必須条件といえます。

スマートフォンの音質を左右する要素は、デジタル/アナログ変換チップ(DAC)やそれに相当するIC、コンデンサーや電源回路など多数ありますが、入手可能なハイレゾ音源が少ないという現実があります。そこで端末メーカーは、AACやMP3といった圧縮音源をハイレゾ音源並みに情報量を増やす「高音質化機能」を搭載し、コンテンツ不足を補うことを提唱しています。

圧縮音源に効果的な高音質化のアプローチとしては、「アップサンプリング」と「ビット拡張」が挙げられます。アップサンプリングとは、音源のサンプリング周波数を高めることで(ex. 44.1kHz→88.2kHz)、情報と情報の間を密にして滑らかなアナログ波形に近づけます。後者のビット拡張は、音の情報量(量子化ビット数)を増やすことで(ex. 16bit→24bit)、ダイナミックレンジを広げ階調表現力を高めます。

Xperia Z3シリーズに搭載されている「DSEE HX」は、SONY独自の高音質化技術であり、MP3やAACといった圧縮音源にアップサンプリングとビット拡張を施し、最大192kHz/24bitの情報量を持つ音として聴かせてくれます。GAXLAXY S5シリーズに搭載されている「K2HDプロセッシング」は、JVC KENWOODがビクタースタジオと共同開発した技術であり、アップサンプリングとビット拡張によって最大192kHz/24bitに圧縮音源の音情報を拡大/伸張します。

では、192kHz/24bitに情報量を増やせば高音質かといえばそうではありません。音質は音の出口であるヘッドホン/イヤホンに大きく左右されますし、ノイズ対策など細やかなハード設計にも影響を受けます。高音質化機能の効果はありますが、あくまでハイレゾの世界を広げる手段と考えたほうがいいでしょう。

ハイレゾ再生に対応したドコモの2014-15冬春モデル「Xperia Z3 SO-01G」