神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科の鈴木志保子教授

スイーツが大好きな人は多いだろう。そしてスイーツに欠かせない物といえば砂糖だ。「砂糖=生活習慣病の素」というイメージを持っている人もいるかもしれないが、実は砂糖と同程度のおいしさながら、砂糖にはない優れた効果を持つ糖質があるのをご存じだろうか。

今回は、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科の鈴木志保子教授に、そんな「ありがたい糖質」の真相について話を伺った。

不思議な糖質の名はパラチノース

「優れた効果を持つ糖質」と聞くと、最近、飲料水やシロップなどの製品によく用いられている「希少糖」(自然界にその存在量が少ない単糖とその誘導体)を思い浮かべる人もいるかもしれない。

だが、今回鈴木教授が紹介してくれた「ありがたい糖質」とは、はちみつなどに微量に含まれている天然の糖質で「パラチノース」と呼ばれる。砂糖と同じ1gあたり4kcalのパラチノースは、ブドウ糖と果糖から成る天然の二糖類で、単糖の希少糖とは別物だ。

では、そのパラチノースの優れた効果とは何だろうか。

鈴木教授はその最大のメリットとして、「血糖値が急激に上がらない」ことを挙げる。砂糖は大量に摂取すると、血糖値が急激に上がってその後間もなく下がる。ただ、パラチノースは小腸での糖の吸収がゆっくりのため、「糖をずっと供給してくれる」状態が続くというわけだ。

糖質はタンパク質や脂質などと同様、人間の主要なエネルギー源として使われる。しかし、糖質は体内の肝臓や筋肉にわずかしか貯蔵できない。また、脳にとっての主なエネルギー源は血液中の糖質である。そのため、定期的に摂取する必要があるのだ。

健康的に残業ができる

その上で、鈴木教授はお腹がすいたときにパラチノースを間食として摂取することによって、「健康的に効率よく残業できる」と説明する。

食事をしてから6時間以上たってお腹がすいたときは、脳へのエネルギーの供給が少なくなっている状況のため、集中力が散漫になりがちだ。通常の砂糖入りのスイーツなどを食べると、その直後は一時的に血糖値が上昇するが、90分もすれば摂食前と同じ程度まで血糖値が下がってしまう。かといって、何度も間食すると、摂取カロリーを増やしてしまい、生活習慣病につながる恐れもある。

一方でパラチノース摂取後の血糖値はなだらかに上昇し、摂取後120分後でも摂食前より高い血糖値を保っている。そのため、パラチノースは間食の頻度を減らすことの一助になりうるというわけだ。

砂糖の主成分であるスクロースとパラチノースを摂取した後の血糖値(血中グルコース値)の違い。パラチノースは血糖値の上下動の幅が少ない(出典:スローカロリーな糖質「パラチノース」ガイドブック)

「特に『終わるまでに何時間かかるかわからない』という残業時には、同じ100kcalを食べるにしても、パラチノース入りの物を食べた方が腹持ちがいいですし、血糖値を急激に乱さずに供給し続けてくれるから、仕事の集中力も維持できます。また、食後に血糖値が急激に上がる『食後高血糖』のリスクも少なくなります」。

スポーツ時にも効果あり

パラチノースはスポーツ時にもその効果を発揮してくれる。「日本スポーツ栄養学会」会長でもある鈴木教授は、パラチノースはアスリートとも相性がよいと話す。ちなみに同学会は、普通の人とは消費エネルギーのレベルが異なるアスリート向け栄養指導のプロフェッショナルである「公認スポーツ栄養士」を養成する団体だ。

「血糖値を長く維持してくれるので、マラソンランナーのように長時間運動をする人に向いていますし、競技が一瞬で終わるような選手でも、練習時間は長いので活用できます」。

また、脳だけではなく、体のエネルギー源にもなるパラチノースは、大きな大会や試合などの「ここ一番」というときにも役立つという。

試合時は、興奮して練習よりもエネルギーを消耗することがある。鈴木教授によると、通常は演技や競技などの2時間半前に食事を食べておけば、ちゃんと本番までエネルギーはもつそうだが、場合によっては本番前に"ガス欠"になりかねない。

ただ、そういう時にパンやおにぎりなどの炭水化物を大量摂取して糖質を補うと、体が重くなったり気持ちが悪くなったりして、普段どおりのパフォーマンスが発揮できない可能性もある。「そういう時に、水分に溶かして飲めるパラチノースを勧めます」。

コーヒーなどに用いるとよい

パラチノース摂取のメリットはわかったが、実際の生活でどのように使ったらよいのだろうか。鈴木教授はスイーツやコーヒーなどに砂糖と置き換える形で用いるとよいという。 「残業時などで『ちょっと甘めのコーヒーを飲んでリフレッシュ』というときに、砂糖を使わずにパラチノースを使うのもいいでしょうね」。

パラチノースをうまく活用すれば、日常のさまざまなシーンでメリットが得られそうだ。実際、「元気で太りにくい健康な体を創る」という理念を掲げ、ゆっくりと消化吸収できるレシピを紹介するといった、パラチノースの啓発活動「スローカロリープロジェクト」も展開されている。ただ、パラチノースの摂取カロリーは砂糖と同じ。摂(と)りすぎは禁物である。

「一日全体の摂取エネルギー量との兼ね合いで、どれぐらいなら摂(と)っていいのかをしっかりと把握した上で賢く使うようにしましょう」。