AlteraのSenior Director,Product Marketingを務めるChris Balough氏

Alteraは2012年にTSMCの28nmプロセスを採用し、ハードコアのARM Cortex-A9 MPCoreを搭載した第1世代のSoC FPGAシリーズを発表。2015年には第2世代となるTSMCの20nmプロセスを用いた「Arria 10 SoC」の提供を開始し、同年中には第3世代となるIntel 14nm Tri-Gateプロセス採用の「Stratix 10 SoC」がテープアウトする予定だ。これらSoC FPGAの提供により、Alteraは従来のFPGAが用いられてきた分野のみならず、より幅広い分野で同社のデバイスが活用できることを示すこととなった。果たして、同社のSoC FPGAは現在、どういった状況にあり、今後、どういったところを目指していくのか。同社のSenior Director,Product MarketingのChris Balough氏に話を聞く機会をいただいたので、その模様をお届けしたい。

第1世代となるVシリーズは2012年の出荷からおよそ2年を経た現在、日本でも計画を上回る採用数を達成したという。また、SoC FPGAの開発に利用されるSoC FPGA向けDS-5も100社を超す採用を達成しているほか、そのライセンス数も1000を超す状態にあるという。その結果、デザインウインも産業機器/FA、自動車/ドライバアシスタンス、通信機器/基地局と幅広い分野で達成しているが、その多くが同社が品質や信頼性を重視して製品を提供していることを評価した結果だと説明する。

Alteraが提供するSoC FPGAの概要。現在、第3世代まで提供が予定されている

世界でも同様の傾向があるとのことだが、ここまで採用が拡大した背景には、ソフトウェア資産を活用したいというユーザーニーズをすべての世代でサポートしたこと、ならびにパートナーとのエコシステムの構築と、長期的なパートナーシップを実現したことが挙げられる。「重要なのは、こうしたパートナーシップが今後のロードマップでも継続していくということ。DS-5もコンパイラも長期的に提供していくことが保証されなければ、ユーザーは長期的な視点を安心して持つことができない。そうした懸念を我々が払しょくしたことが、受け入れられている大きな理由」(Balough氏)という。

こうした取り組みを示すのがAlteraの開発ツール「Quartus II」とDS-5を連動させることで、ハードウェアの変更を自動的にソフト側で認識させ、ユーザーが意図せずにデバッグを継続して行うことを可能とする「FPGA-Adaptive Debugging」の存在だ。これを活用することで、各種の挙動の中で完全な可視化が可能となり、デバッグの容易化を実現するという。

ARMのDS-5もAltera Editonという特別仕様のものが提供されており、Alteraの開発ツールと連動させることも可能となっている

また、そうした自社ツールの強化の一方、同社はLinux Fooundationへの加盟も果たした。なぜ、このタイミングで、とも思うが、同氏は「これまでSoC FPGAの環境を構築するなど、優先して行うことが多くあった。しかし、ようやく今年に入り、SoC FPGAの実績も出てくるようになり、ユーザーも経験値がたまってきたことから、正式にメンバーになり、市場に対して貢献していけるようになったと判断したためだ」としており、同社がSoC FPGAのメンテナとして、Linuxコミュニティから期待されていることを強調する。

こうしたさまざまなSoC FPGAの周辺環境整備に向けた取り組みについて同氏は「日本の技術がニーズを深堀してくれるほか、新たな進化に導いてくれるため」としており、SoC FPGAの今後の進化には日本という市場は重要であり、今後も継続して日本のパートナーと協力してニーズの掘り起こしや、新市場の開拓を積極的に行っていくとする。

こうした新たなニーズの掘り起こしや新市場の開拓という意味では、同社はSoC FPGAシリーズのほか、低価格FPGAとしてMAX 10をリリースしたばかりだ。しかし、MAX 10は高速トランシーバは搭載しておらず、ある程度の低コストを維持しつつ、高速トランシーバが欲しいというニーズはSoC FPGAの第1世代品の1つ「Cyclone V SoC」で対応する必要が現在のところの選択肢となっている。ではCyclone 10 SoCは提供しないのか、というと、同氏は「今後もすべてのラインアップをサポートしていくという計画があることだけは言える」と明言を避けたが、これまで同社がIntelと協力してIntelのプロセッサにFPGAを搭載するといった取り組みなども継続して行っていく可能性もあるとし、FPGAの適用範囲の拡大を継続して図っていく姿勢を見せてくれた。

なお同氏は最後に「まだまだSoC FPGAの適用可能な分野はたくさんある。そうしたニーズを吸い上げ、適用できることを示すことは今後、Alteraが成長していくうえで重要になる」とコメントをしており、考えうるあらゆる方向性を模索し、最適な選択をその都度行っていくことで、よりFPGAをASICやASSP、マイコンなどに代わる一般的なデバイスとしての存在感を強化していくとした。