【インタビュー】

眼科のリハビリ「ロービジョンケア」を知っていますか?~広げよう!ロービジョンケアの輪~

眼科医などロービジョンケアに携わる人々が一堂に会する「日本ロービジョン学会学術総会」が11月1日・2日の二日間、埼玉県さいたま市で開催されます。眼科のリハビリテーションとも言われるロービジョンケアついて今回の学術総会会長である江口万祐子先生にお聞きしました。

「ロービジョンケアを広めたい」と話す江口万祐子先生

ロービジョンケアとは視覚障害者をサポートし、生活の質を高めること

「例えば、事故で足の骨を折り、治療で骨折は治ったけれど、歩くのに不自由を感じたら、リハビリを受けますね。眼科でこのリハビリと同じ意味を持つものが“ロービジョンケア”です。事故や病気で視機能が低下した方、視覚に障害を持った方に視機能を補助する道具や支援サービスを紹介して、生活の質が上がるようにサポートすることを言います」

ロービジョンケアに携わっている人々は眼科医をはじめ看護師や視機能回復の訓練治療を行う視能訓練士などの医療者、行政、福祉、教育に関わる人など多分野に渡っています。これらの人々が会員となり活動をしているのが日本ロービジョン学会です。2000年に創設され、現在会員数は約800名。年に1回開催される学術総会では、シンポジウムや講演、発表を通じて各分野の活動報告、情報交換など様々な交流が行われます。

一人でも多くの患者さんにロービジョンケアを

――第15回目となる今回の学術総会のテーマは「広げよう!ロービジョンケアの輪」。どうして、このテーマが選ばれたのでしょうか?

「私がロービジョンケアに関わるようになってから13年が経ちます。そのなかには、長年治療を受けても視力が戻らない方、視力障害で仕事を失い自殺まで考えた方など様々な患者さんがいます。そういう方にロービジョンケアを提供すると、『補助具を使ってよく見えるようになった』『生活が大きく変わった』と涙を流すほど喜んでくれるのです。しかし、その反面、ロービジョンケアを知らず、ケアを受けられない人が未だ未だたくさんいます。そこで、一人でも多くの患者さんがケアを受けられるよう、この学術総会をスタートとしてロービジョンケアが広がり、もっと知ってもらえるようにしたいという思いを込めてこのテーマを決めました」

補助道具を使えば、普通学級に通える子どもも

――ロービジョンケアを社会的に認識してもらうために、まずは医療や教育、福祉などの関係者に十分に理解してもらいたいと江口先生は言います。

「今回の総会では、医療、教育、福祉の各領域でサブテーマを設定し、講演やシンポジウムを行います。例えば教育では、“医療と教育の連携をうまく行うためにどうすればいいか”がテーマです。視機能に異常があり弱視学級に通っている子どもでも補助道具を使用すれば普通学級で教育を受けられるケースがあります。ロービジョンケアを教育の現場が知っていれば、あるいは医療側から情報提供ができれば、障害を持つ子どもの環境を良くすることができるのです。それぞれの領域の現場で今、何が問題となっているのか提起し、ディスカッションを行います」

視覚に障害を持った方の活動も紹介

通常、学術総会と言えば専門家が集まり発表や議論を行う場と思われますが、今回の総会では、視覚に障害をもった当事者の方々の活動を紹介するプログラムも組み込まれています。そのひとつはNPO法人「モンキーマジック」。この団体はフリークライミングの楽しさ、アウトドアスポーツの素晴らしさを、視覚障害者をはじめ多くの方に伝えようとスクールやイベントを開催しています。

もうひとつはNPO法人 視覚障がい者支援協会「ひかりの森」。この団体は視覚障害者の患者会から始まり、当事者自らが自立するための施設を作り、移動訓練や日常生活訓練、音声パソコンの指導などを行っています。 また、一般の方向けに発達障害、糖尿病などの疾患とロービジョンケアについて説明する市民公開講座も開催されます。

「市民公開講座を通じて一般の方に、『眼が悪くなったらロービジョンケアがある』という認識を広めていきたい。ロービジョンケアがあることを知っているのと知らないのでは大きく違うことになるのです」

ロービジョンケアの輪を広げたい

――ロービジョンケアの普及を願い、江口先生は今回、事前に様々な場所やいろいろな講演会に足を運び、学会と総会のPRを行ってきました。

「自分から出向いてアピールしてきたことが、ロービジョンケアの啓発につながっていると実感しています。これからも続けていきたいと思います」

――江口先生がこのようにロービジョンケアに力を注いでいるのは研修医時代に担当した患者さんの一言にありました。

「視野がだんだん狭くなる網膜色素変性症の患者さんを担当した時、その患者さんから『視野が狭くなって、もう仕事ができない。これからの生活はどうすればいいのだろう』と相談を受けました。この問題にどう答え、どう対応すればいいのか、当時、私は誰からも習っていなかったのです。そこで自分でいろいろと調べるうちに“ロービジョンケア”に出会い、これは眼科医としてぜひ知っていなくてはいけないことだと思いました。結局、その患者さんは仕事を辞めてしまったのですが、今なら辞めなくてもいい、利用できるサービスや道具があるとサポートすることができます。私自身がこのような経験をしているので、患者の皆さんには早い段階でロービジョンケアを知ってもらいたいのです」

ご自分の眼のことをよく知って欲しい

――「自分はロービジョンケアとは無縁」と思っている人も注意して欲しいことがあると江口先生は言います。

「まず、ご自分の眼のことについてよく知っていて欲しいと思います。一概に眼が悪い、眼がよく見えないと言っても近視なのか、老眼なのか、メガネをかけると見えるのか、かけても見えないのか、状況は違ってきます。案外、自分の眼のことをよくわかっていない人が多いのです。健康診断で血液検査や尿検査をしても眼科検査まですることは案外少ないですよね。少しでもおかしいと思ったときはもちろんですが、眼の健康診断として定期的に検査をしていただきたいのです。そして、もしご自身やご家族が視覚障害になったら、支援を行う施設や方法、ロービジョンケアがあることを知っていて欲しいと思います」

■第15回日本ロービジョン学会学術総会
会期:2014年11月1日(土)・2日(日)/3日(月・祝)市民公開講座
会場:大宮ソニックシティ
詳しくはホームページをご覧ください

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