9月に公開されたヤフーのSNS連動型バーチャルジェットコースター「ヤフー トレンドコースター」。東京レジャーランドやアドテック東京での展示を経て、現在はヤフー社内にコースターが設置されている。今回、試遊体験をさせてもらったので、その感想をお伝えしたい。

まずは筆者が試遊した映像を見てもらうと一番わかりやすいだろう。トレンドコースターの試遊映像は、サービス紹介サイトで一般公開されており、多くのユーザーが楽しんでいる様子を確認できる。

この映像は、ヤフーが提供するショートムービーサービス「Yahoo! Chocotle(チョコトル)」を利用して配信されており、ヤフーのサービスを随所に生かして"トレンドコースター"の魅力を打ち出している。

このコースターを体験すると「無条件に晒されるの?」と心配するかもしれないが、バーチャル体験の"キモ"である、ヘッドマウントディスプレイの「Oculus Rift」を頭に被るため、誰であるかは特定しづらく、心配はない。

現在は社内に設置されているコースターだが、今後一般にも公開される予定があるとのことで、サービス紹介サイトで日程を確認できる。直近ではアドテック関西(11月26、27日)で公開される予定だ。なお、ヤフーと取引のある企業の社員であれば社内設置時に体験申込みができるほか、イベントの運営者が希望することで「運搬費を負担していただける場合」には、イベントへの出展を行うという。もし、「コースターを我が町に!!」という気概がある方は、同社までお問い合わせを。

話は脱線してしまったが、コースターの感想に戻ろう。詳しいコースターの仕様は9月の記事をお読みいただきたい。

一つ言えるのは、筆者が初体験となる「Oculus Rift」自体の製品完成度の高さだ。頭の向きを変えた時の映像の傾き具合に違和感がなく、左右に激しく動かしても、遅延なく映像が付いてきた。一つ難点があるとすれば、コースターの激しい動きで頭がシェイクされると、「Oculus Rift」がズレてしまうこと。こればかりは、装着感など個人差があるので試す時は「バンドをキツくお締めください」と言うほかない。

開発者から説明を聞き、乗り込んだトレンドコースター。「お前単純に楽しんでるだろ」といったツッコミはおやめください

コースター全体の造りについても、上手く作り込まれており、サーキュレーターから来る風の向きや風量とコースター実機の角度が見事にマッチし、なおかつ視界が完全に遮られているため、本物にかなり近い感覚でコースターを体験できる。コースをすべて回った後の"脱力感"も筆者は味わったため、からだ自体が「コースターに乗ったんだ」と騙されていることを実感した。

なお、検索したワードは「巨人」。筆者が大の読売ジャイアンツファンであり、体験した前週にクライマックスシリーズで阪神タイガースに惨敗するなど、直近で散々な思いをしたため、敢えて検索ワードに選んだ。だが、コースに現れた画像やニュースは30日前まで遡って取得するため、巨人がペナントレースを優勝した際の原監督胴上げ写真が多く見られて幸せであった。

ちなみに"巨人"に関連するキーワードと言えば、読売ジャイアンツ以外にも「進撃の巨人」が存在する。そのため、原監督や坂本選手の画像以外にも、エレンやアルミンの写真が多く表示されていたことを付け加えておきたい。こうした影響か、かなり高所まで上るコース設定がなされており、東京スカイツリーの634mを超える地点までバーチャルで上り詰めていた。

ヤフーが面白いと思ってもらえるように

なお、コースターの体験と同時に、機材の開発にあたったヤフー MSC マーケティングイノベーション室 コミュニケーションプランニング部 マネージャーを務める那須 岳志氏と同部の峯浦 望氏にも開発の裏側を伺った。

那須氏をリーダーとして6月から製作に取りかかり、発表までわずか3カ月半で乗り切った。時間的な制約がかなりキツかったとのことで「さまざまなAPIをうまく連携させましたが、ハードウェアとの連携も難しかったです」と那須氏は振り返る。

「リアルタイム検索やニューストピックス、チョコトルなどの社内APIを持ってきてデータ連係を行い、筐体を動かす加速度の計算や、(サーキュレーターによる)風の送り込み方など、複雑な連携が大変でした」(那須氏)

前回の記事でも触れているが、この取り組みは広告が主眼に置かれている。

「オフィシャルスポンサーとして日産さまとアディダスさま、カップヌードル(日清)さまが付いています。トップブランド3社と組むことで、未来の広告の形とはなんぞや、ブランドの形とはなんぞやという視点で考え、それをしっかりセールスできたと思います」(那須氏)

ただ、消費者に対しての視点もなくしては広告は成り立たない。

「その視点では、ヤフーが面白い、ワクワクする会社だと思ってもらえるように、ファンになっていただけるように考えました。コースターによって、ネットは使い方が定まっているものではないということを伝えたく、また、新しいネットの使い方だよということを見せられたと思っています」(那須氏)

「私の一番印象に残っていることは、試乗した方々から『想像以上にリアルだ』という反応をもらったことです。遊び心溢れるものを、好意的に受けてもらえたこと、それが良かったなと思います」(峯原氏)

今後、この取り組みはどのように発展していくのだろうか?

「このプロジェクトはプロトタイプです。中短期的な視点で、ビジネスにしたいというのは少し違いますが、ネットサービス、ウェブというものは閉じこもるのものではなく、今や普段の生活の一部として存在するものになりました。必要であれば、ほかのサービスとも連動させていきたいですし、こうした取り組みを通してファンになってもらえるよう、『ヤフーって楽しいよね』と思ってもらえるようにしていくことが大事だと考えています」(那須氏)