ヴイエムウェアの仮想化ソリューションは、いまやクラウドコンピューティングの標準的な基盤技術として様々な形で活用されている。そんな中、全国各地域で通信事業を展開する電力系NCC(New Common Carrier)各社の技術者有志が、サーバ仮想化製品「VMware vSphere」のライブマイグレーション機能の1つである「vMotion」を活用し、各社のデータセンター間をつないだ仮想基盤上に構成したクラウドテストベッドにおいて、オペレーション連携を図り共同検証試験を成功させた。こうした技術検証が全国規模で行われたのは前例がないのではないか。そこで各社の技術者有志に集まっていただき、共同検証試験の目的や背景、具体的な取り組みについて語り合っていただいた。

電力系NCC各社の技術者有志が共同検証試験に至った背景と目的

電力系NCC各社の技術者有志が共同で行った検証試験は、「VMware vSphere」の「vMotion」によって仮想サーバを各社のデータセンターへ順次移行させるというクラウドテストベッド上でテストオペレーション連携を図るというものだ。標準的なvMotionを使用したパターンと、「VMware vSphere」のバージョン5.1からvMotionの機能として拡張された仮想サーバのデータボリュームも含めたライブマイグレーション(Cross-host Storage vMotion)のパターンで、2014年1月から4月にかけて行われた。

この共同検証試験に至った背景と目的について、エネルギア・コミュニケーションズの武田洋之氏はこう話す。

「電力系NCCは従来、主力サービスである回線系サービスについては、各社間で綿密な技術連携を図ってきましたが、新事業分野であるクラウド技術については各社それぞれが技術力向上に向けて取り組んでいる状況であり、各社間の技術連携などの取り組みはありませんでした。そこで、まずはクラウドに関連する技術について各社の技術者同士が情報交換を行い、技術力向上にむけて取り組むための各社間の技術的連携の機会が必要なのではないかと考え、技術者コミュニティのような形で情報交換を始めました。その取り組みの中で、各社ともにクラウドの基盤技術としてvSphereを利用していることがわかり、技術検証という意味でvSphereを活用して共同で何かやろうという話が持ち上がって検証試験を行う運びになりました」

また、北海道総合通信網の小倉義之氏は、「同じ電力系NCCということで、クラウド技術に対するアプローチも似ていたことから、このコミュニティが各社の技術者を育成する場にもなると考えました。とくに共同検証試験は、普段の自社ラボ環境内から全国規模のテストベッド環境の世界に飛び出すきっかけとなり、お互いの技術の腕を振るう場になったと思います」と、技術者育成も目的の1つだったと語る。

vMotionで仮想サーバを各社のデータセンターへ順次移行

では、共同検証試験として、vSphereのvMotionによって仮想サーバを各社のデータセンターへ順次移行させることにした背景には、どのような経緯があったのか。

「各社ともにクラウドの基盤技術としてvSphereを使用していたので、そのvMotionを活用すれば全国規模で仮想サーバをどこのデータセンターにも移行できるはずだと。各社が技術連携してこそ実現する全国規模の検証試験なので、そこは技術者として大いにモチベーションが上がりました」(小倉氏)

「全国各地のデータセンター事業者をまたいで仮想サーバをライブマイグレーションしてサーバを稼働させるなどといったスケールの大きな検証試験は、おそらく前例がないでしょう。vSphereが基盤にあったからこそできたわけですが、私たちもワクワクして作業を行うことができました」(ケイ・オプティコム 伊達展成氏)

「もともと各社がクラウド基盤技術としてvSphereを使用していたことから、あまりコストをかけないでも全国規模で検証試験ができるのではないかということも、検証試験の実施に踏み切った大きなポイントだったと思います。こうした取り組みはコストを抑えることも大事な要件ですから」(中部テレコミュニケーション 津野幸司氏)