子どもの頃、電車を眺めたり乗ったりしているだけでワクワクしたのに、大人になるにつれ、次第にその気持ちが薄れていってしまった人も少なくないだろう。筆者もその一人だ。むしろ、満員電車に乗ろうものなら舌打ちすら禁じ得ない! でも、人生のワクワクが減ってしまうだなんて、なんとも悲しいことじゃないか。そこで電車への憧憬を思い出すべく、電車を好きになれるという噂のカフェバー「カフェ&和酒 N3331」へと足を運ぶことにしたのである。

世界で一番!? 電車が近いカフェ!

JR秋葉原駅から徒歩5分ほどの場所にある「マーチエキュート神田万世橋」。かつて、中央線神田駅とお茶の水駅の間に「万世橋駅」という駅があったのだが、1943年に乗降客減少に伴い万世橋駅は営業を廃止。しかし、2013年に商業施設「マーチエキュート神田万世橋」として生まれ変わっていた。この歴史的建造物の中にカフェバー「カフェ&和酒 N3331」があるという。

様々な雑貨屋や飲食店がある「マーチエキュート神田万世橋」は、神田の新たな観光スポットとして人気!

万世橋駅開業時に作られたという1912階段

ほっほぅ。電車を好きになれるカフェと聞いていたけど、つまり「N3331」は旧万世橋駅の資料が置いてあるような、博物館っぽいカフェなんだな! と勝手に思いながらエキュート内のレトロで趣きのある階段を上り同店を目指す。

そして、階段を上りきると「N3331」が目に入ってくるのだが……あ、あれ!? イメージと全然違う。全面ガラス張りで、めちゃくちゃスタイリッシュじゃないか。しかも、驚くべきはそこだけじゃない。店の真横をガタンゴトンと電車がすり抜けてってるぞ! なんというエキサイティング空間!!

「カフェ&和酒 N3331」。壁全面がガラス張りなので電車が良く見える!

「カフェ&和酒 N3331」店内

店長の坂田健一さんは、「旧万世橋駅のホーム跡という立地を生かして、電車を間近で見られるカフェをオープンしました。店名の由来は"Nippon""New""Next"の『N』に、神田一本締めのリズムである"3331"を組み合わせたんですよ。『ちゃちゃちゃん、ちゃちゃちゃん、ちゃちゃちゃん、ちゃん』っていうリズムですね。それに3+3+3=9となり、漢字で書くと九。"苦"にも通ずるので日本では縁起の悪い数字ですが、それに一を足すと"丸"になる。つまり、輪ですよね。スタッフ同士の輪だったり、地域との輪を意識していて、この場所から日本文化を発信していくことをコンセプトにしているんですよ。あと、N3331って電車の車両番号みたいですしね(笑)」と語る。

ゆっくり電車を眺めるのなら店内、電車の迫力をダイナミックに感じたいのならテラス席がおすすめ!

中央線が正面から見えるテラス席の一番奥が坂田健一店長のオススメの席だぞ!

店名の由来は予想以上に奥深いものであり、また旧万世橋駅のホームに立地という話も萌えるぞ。それ故、店の両脇は中央線が走っており、少し離れた場所にある陸橋には総武線、ビルの間からは山手線や京浜東北線が見えるそう。これは鉄ちゃんにはたまらないのではないだろうか。

全国の名産品を東京都・神田から発信!

メニューからも「日本文化を発信していく」というコンセプトが垣間見える。例えば「333ド1」(750円)のパンは、神田明神の裏にある「三井製パン舗」のものを、ベーコンは入谷にある老舗ハム店「太田ハム」のものを使用しているとのこと。ベーコンからもしっかりと旨みが感じられ、パンと好相性。絶品である!

また「ゆこう蜂蜜ソーダ」(500円)は徳島の「ゆこう」という柑橘類の果汁をソーダと蜂蜜で割ったもの。シンプルながら、そのさわやかな酸味が印象的だ。

食材にこだわった「333ド1」(750円)と「ゆこう蜂蜜ソーダ」(500円)

具材に使っているカボチャは中央線のオレンジのラインをイメージしているそう

他のメニューも全国各地の食材を使用しており、夜のメニューは青森の「田酒」(600円)や「八海山生ビール」(860円)といったアルコールも充実。こりゃ鉄ちゃんだけじゃなく、のんべぇにもたまんねえ!

「電車が好きな人はもちろんですが、旧万世橋駅に思い入れがあるご年配の方は昔の思い出を語りに、その息子さんや娘さんはテレビや雑誌でここを知っていらっしゃいます。さらに、お孫さん世代は電車が間近で見られるテーマパークのような感じで楽しんでくれています。カップルやお友達同士、夜は仕事終わりのサラリーマンの方々も来店していただいていますよ」。

全国各地の食材を使用したメニューや地酒を楽しみながら電車を眺めていると、自ずと遠くの地に思いを馳せてしまう。友人同士や家族と「N3331」を訪れれば、「電車に乗って旅行したいね」なんて話にも花が咲くはずだ。

「N3331」は、なんだか電車が愛おしくなってしまう不思議でエキサイティングなカフェだった。

価格は税込

(文・A4studio千葉雄樹)