「サンリオ」と聞くと、文具、雑貨、衣類、ほかにもたくさんのかわいいキャラクターグッズが思い浮かぶ。それもそのはず、株式会社サンリオの商品部が手がける新商品だけでも、年間5,000アイテムにのぼるのだ。たくさんの商品を安全に、スピーディーに提供するために、FileMakerのソリューションが活用されている。

今回は、サンリオさんにお邪魔した。年間5,000アイテムにものぼるかわいいいキャラクター達は・・・・

ところ狭しとフロアで出迎えてくれた!!

ペーパーレスと品質管理のために、10年あまり前からFileMakerを導入

紙ベースで管理していた情報を電子化しようと動き出したのは、2002年ごろのことだった。物販事業本部商品部部長の木村文秋氏にその経緯をうかがった。

「そういう話になったのは、2つの理由があります。ひとつは、いつまでも紙ベースではやっていけない、ペーパーレスに移行しようという機運が社内で高まったこと。もうひとつは、消費者保護のための商品の安全性やトレーサビリティが、社会全体で大きな問題となってきたことです」

こうした経緯で、2003年にFileMakerが大規模に導入され、さらに2006年にも規模を拡大。その後も、機能の拡張やインターフェイスの向上を重ねてきた。2007年からこのソリューションの開発に加わり現在も開発を続けているのが、商品部進行管理課主任の古川雄規氏だ。

現在は、全社員800人中、商品部のスタッフを中心に300人以上がFileMaker Proでこのソリューションを活用している。そのほかに、FileMaker Server 13のWebDirect機能を利用して、社外からWebブラウザでソリューションにアクセスしている人たちもいる。

商品部進行管理課主任の古川雄規氏

サンリオの新商品が世に出るまでには、プランナー、デザイナー、製造業者、品質管理など、多くの関係者がかかわっている。以前は、そのすべてに紙の書類がついて回っていた。コピー代やカーボン複写の専用用紙代、通信費、紙からシステムに入力するための人件費。そして書類をやりとりしたり決裁したり、あとから書類を探したりするのにかかる時間。これらが節減できただけでも、FileMaker導入の効果は大きい。

さらに、安全性の問題だ。どんな商品でも安全性は重要だが、サンリオの場合は子供を対象とした商品が多く、安心と安全には特に細心の注意を払っている。FileMakerのソリューションが安全性にどう寄与しているのか、商品開発のフローに沿って見ていこう。

サンリオのFileMakerソリューションのトップページ。たくさんの機能が実装されているが、本稿では主に商品開発と安全性について紹介する

新商品の開発から出荷後まで、FileMakerソリューションでサポート

新商品の開発が決まると商品名や商品コードがFileMakerソリューションに登録されて、商品化がスタートする。プランナーが仕様を検討し、ソリューションにデザイン図や仕様を入力。上司の決裁を受けた後に、デザイナーが商品デザインに入る。

プランナーは、商品の図をAdobe Illustratorで描き、JPEG形式にしてFileMakerのオブジェクトフィールドに保存する。FileMakerソリューションに入力した仕様を確認しながら作業を進める

品質管理部門では、素材の情報や表示義務のある項目など、所定の品質基準を満たすために、製造工程と品質管理に必要な情報を入力。これが、この後の工程で共有される。製造ベンダーに対して書面で情報を共有できるように、ここで入力した情報をPDF化して送信する機能も用意されている。

この画面では、たとえば靴下の新商品であれば、靴下に関して過去に発生した品質の問題やサンプル不合格の事例も見られるようになっている。「以前は記憶に頼っていた部分もありました。情報が確実に蓄積され、共有できることの意義は、ほんとうに大きいと思います」(木村氏)

過去に発生した品質の問題をまとめて見ることができるので、商品化の際に気をつけるべきことがわかり、トラブルの減少に大きく役立っている

この後、量産に入る前のサンプル検査、量産に入ってからの初期ロットの検査、抜き取り検査と、検査が続く。検査項目や検査結果、品質管理関連の書類も、このソリューションで管理され、いつ、誰が、どんな検査を実施し、どんな結果だったかを確実に追跡できるようになっている。

倉庫での検査では今のところFileMakerを使用していないが、このソリューションから検査に使うPDFやCSVファイルを書き出してメールで送信できるので、情報伝達が確実で効率は良い。

製造開始後の検査では、バーコードをスキャンして商品のレコードを見つけ、所定の項目を検査していく

検査書類の情報などもソリューションに記録される

さらにこのソリューションは、お客様センターのスタッフも利用している。顧客から問い合わせがあったときにソリューションを検索して商品の情報を調べ、問題が発生しているのであればそれをソリューションに入力する。

実は、ここで入力された問題点も、前述した過去のトラブルのリストに反映される。ここでも、重要な情報が部署を越え、時間経過を越えて共有される仕組みになっている。

品質向上や時間短縮など、こうした一連のシステム化によって得られたメリットはきわめて大きい。

海外工場での生産や情報公開にも活用

海外の工場で製造する商品については、適正な製造・輸入手続きが必要だ。海賊版を排除して、商品の安全性とキャラクター資産を守らなくてはならない。

サンリオから発注を受けた国内の製造ベンダーが、WebブラウザでFileMakerのソリューションにアクセスし、製造を委託する海外工場の情報を入力する。この情報をもとに、海外製造申請や輸入許諾に関するPDF書類を作成できるようになっている。

「以前は、輸入許諾などの手続きを他社に外注していました。その費用が削減できたということもありますが、それ以上に、社内にすべてのデータを蓄積していることのメリットが大きいですね」と木村氏は言う。必要な情報を確実に素早く追跡できるほか、米国のサイトへの情報提供もできるからだ。

サンリオの米国のサイト(http://www.sanrio.com/)では商品や製造工場などの情報を消費者に開示する義務があるが、そのために必要な情報もこのソリューションにすべて集約されているので、容易に書き出せる。CSV形式で書き出して、米国のサイトの担当者へ送信しているとのことだ。

サンリオ米国サイトにあるCPSIA(Consumer Product Safety Improvement Act)のWebページ

基幹システムとの連携や商品開発以外の用途への広がりも

ところでサンリオには、本稿で紹介しているFileMakerのソリューションとは別に、全社的な商品マスターとして機能している基幹システムもあり、商品の情報を双方のシステムで共有する必要がある。エラーチェックの仕様の問題などがあり、自動化は難しかった。 そこで古川氏らが開発したのが、FileMakerのスクリプトを使ってソリューションのデータを基幹システムに読み込めるマクロデータとしてエクスポートし、基幹システム側でマクロを実行してそのデータを登録するという方法だ。このようにして、基幹システムとの共存も実現している。

また、本稿で紹介してきた商品開発、品質管理以外の用途にも、FileMakerが使われている。たとえば最近では、FileMaker Server 13のWebDirect機能を使い、直営店舗からWebブラウザでアクセスして、販売目標に関する数値を参照できるようにした。目標設定や目標管理がわかりやすくなったとという。

FileMakerのソリューションはすべて社内で開発している。古川氏も商品部の実務を経験した後、ソリューション開発に加わったとのことだ。木村氏は「業務を知っている人が開発をしているので、必要な機能を備えたシステムになっていますね」と高く評価している。古川氏も「みんなのために役に立つものを作りたいという気持ちでやっています。それも、実務を経験し、いろいろな大変さを知っていることが大きいと思います」と語る。

業務をよく知る人たちが、「安心と安全」、「ペーパーレス」という共通の目標を掲げて、情報の蓄積と共有に取り組んだことが、品質の向上、時間短縮、コスト削減など大きな成果を上げ、さらに活用の幅を広げようとしている。

木村さん、古川さん、ありがとうございました。

「FileMaker選手権2014」開催
マイナビニュースでは、ファイルメーカー社のデータベースソフト「FileMaker Pro」で作成したテンプレートから、優れた作品を決めるコンテスト「FileMaker選手権2014」を開催中です(エントリー期間は2014年11月3日まで)。

応募作品の中から金、銀、銅賞の受賞者には、MacBook Proなど豪華賞品が授与されます。さらに、審査員による「審査員特別賞」や読者投票による「読者投票賞」、学生向けの「学生賞」なども用意。今までFileMakerを触ったことのない人も、現在バリバリ使っている人も、誰でも応募可能です。また、投稿していただいた作品は、誰でもダウンロードすることができます。

皆様のご応募ご参加をお待ちしております。