産業分野で使われるギガサンプル/秒(GSPS)動作のADCには受動フロントエンドが最適

高速A/Dコンバータ(ADC)技術の向上とともに、非常に高い中間周波数(IF)を高い分解能で正確に高速処理することが求められるようになっています。これには2つの課題があります。コンバータ自体の設計と、コンバータへの信号内容に見合ったフロントエンドの設計です。コンバータ自体の性能が優れたものであっても、フロントエンドがその信号品質を維持できなければ意味がありません。

今日では多くのアプリケーションに高周波で高速のコンバータ設計が使われており、レーダー、ワイヤレス・インフラストラクチャ、計測などがこれらの限界を押し広げています。これらのアプリケーションには、8~14ビットの分解能を有する高速のギガサンプル/秒(GSPS)コンバータを使用する必要があります。ただし、特定アプリケーションの適合要求を満たすには、数多くのパラメータを適合させなければなりません。

基礎の構築

GSPSコンバータは周波数スペクトル、あるいはナイキスト帯域が広いため、レーダー、計測、通信監視などのアプリケーションにこのコンバータが多用されるのは自然なことと言えます。ここで言う広帯域とは、100MHz以上から+1~4GHz程度の周波数までの広い信号帯域幅を使用することを言います。しかし、周波数スペクトルが広くなれば、それに応じてフロントエンド設計に関する課題も多くなります。

コンバータは+1GHzナイキストのものを購入できるとしても、その周辺機器にも適切なものを使用しなければならず、回路の構成、つまりそのフロントエンドには十分な注意を払う必要があります。アプリケーションが+1GHzのスーパーナイキスト・サンプリングを必要とする場合、その課題はさらに増大します。このような場合は、第2、第3、第4ナイキスト領域のスペクトル情報を収集する必要があります。

帯域幅に関する主な注意事項

まず、コンバータのフルパワー帯域幅と「使用可能」または「サンプル」帯域幅は異なるということに留意する必要があります。フルパワー帯域幅は、コンバータが正確に信号を収集するために必要な帯域幅であると同時に、フロントエンドを正しくセトリングさせるための帯域幅です。この領域外でIFを選択してコンバータを使用すると、得られる性能がシステム内で大きく変動するので適切とは言えません。

コンバータのデータシートに示されている分解能と性能によれば、フルパワー帯域幅は、コンバータ自体のサンプル帯域幅よりはるかに大きく、2倍に達する場合もあります。設計は、サンプル帯域幅付近を中心にします。すべての設計において、定格フルパワー帯域幅の最も高い周波数部分の一部またはすべてを使用することは避けるべきです。この部分を使用すると、動的性能(SNR/SFDR)が低下する恐れがあります。

高速ADCのサンプル帯域幅は特に指定されていない場合もあるため、値についてはデータシートを参照するか、アプリケーション・サポートに問い合わせてください。従来から、データシートには、コンバータのサンプル帯域幅内で所定の性能が保証される周波数として、出荷テストで確認された周波数が規定されていたり、一覧で記載されていることがありますが、帯域幅に関するこれらの用語については、業界内で意味を明確にし、定義する必要があります。