IoT(モノのインターネット)に注目が集まり、多くの家電や電気機器にインターネットが搭載され、ウェアラブルデバイスの開発も盛んになってきた昨今、電源の省スペース化が必要になり、超小型携帯用コンピュータのACアダプタも、今まで以上に小型・軽量で、持ち運びに適した形が求められています。

これらの目標を達成する「疑似方形波共振(QR)電源」は高いスイッチング効率を提供し、EMIも低減できるため、ノイズの遮蔽や抑止を簡素化できます。また、フライバックと力率補正(PFC)のコンボ・コントローラで電源を管理するため、部品点数を削減できます。さらに、軽負荷時や無負荷時にPFCをオフにすることで、スタンバイ効率も改善できます。この種のデバイスのロードマップは、多機能統合とスイッチング性能強化による可聴ノイズの低減に向かっています。

QR/PFCコンボ・コントローラ

PFCと疑似共振フライバックの制御機能を1パッケージに搭載したデバイスが多数市販されています。高電圧IC技術により、整流されたACライン電圧からの直接起動が可能です。ロジック回路でフライバック波形やPFCスイッチング波形、またソフト・スタートなどの機能や、過電流保護、過電圧保護、過熱保護などの保護機能、セーフ・リスタート、消磁検出などをロジック回路で制御します。

PFCは、通常動作中は無効電力を最小化してライン電圧波形の歪みを抑えることにより、効率を向上させます。このような機能は、定格70Wを超える機器には不可欠ですが、電力レベルがそれ以下の機器では、PFC回路の電力損失が全体の効率を低下させる可能性があるため不要です。PFC回路の電力損失を防止するために、市販のフライバック/PFCコンボ・コントローラ製品の中には、PFCをオフにして軽負荷時やスタンバイ時の効率を改善できるものがあります。

オン・セミコンダクターの「NCP1937」では、ユーザは出力電力の割合に応じてPFCのディセーブル・スレッショルドを設定できます。動作を説明すると、まず内部回路が出力電力に比例する電流を生成し、この電流を外付抵抗とコンデンサでスケーリングおよび平均化し、出力電力に比例する電圧を生成します。NCP1937はこの電圧と内蔵のPFCディセーブル・タイマやライン電圧に応じて変化する基準電圧を併用して、PFCのオフとオンを調整します。これにより、ライン電圧が低い場合は負荷の25~50%、高い場合は負荷の50~75%のときに、PFCステージをオフにすることができます。また、PFC回路は、フライバックのソフト・スタート期間が終了するまでは、起動中にもオフにできます。さらに、フィードバック接続を開放してPFCをオフにするのに必要な回路も集積されています。従来のコンボ・デバイスでは、外部のフィードバック・ループに、必要に応じて、ループをオープンまたはクローズするためのMOSFETを接続しなければなりません。図1にPFCのオン/オフ制御回路を示します。

図1 PFCオン/オフ制御用集積回路

この機能は高電圧IC技術の進歩により、電源設計者が余分な外部回路をなくし、負荷全域での効率をさらに向上させることが可能な高集積度コントローラを提供できることを示す一例です。従来は一般的に、高電圧対応ICのデジタル機能は限定されたものでした。しかし今や、より高度な高電圧プロセスによってデジタル回路の微細化が進み、多くの機能をICに内蔵できるようになり、従来よりも小型サイズで高機能・高精度の電源を実現することが可能になりました。

改善の鍵

NCP1937は700V高電圧プロセスにより、ACライン電圧を取り除いたときに入力フィルタX2コンデンサを放電するための回路の大部分についても集積できます。これは安全性規格で要求される機能の1つです。これによって、基板のスペースとX2コンデンサの放電に使用される外付抵抗ネットワークの消費電力を低減します。NCP1937コントローラには2つの高電圧起動回路があり、この2つの回路を斬新な方法で再構成することにより、ACライン電圧が取り除かれたときに入力フィルタ容量を放電します。

電源電流を70μA以下にまで低減するパワーセービング・モード(PSM)など、高度な製造プロセス技術で実現した他の搭載機能のため、外付部品が何個か不要になります。従来のフライバック制御ICで実装されていた一般的な方法は、アクティブオフ信号を使用して低消費電力モードに切り替えるものでしたが、この方法では、2次側のオプトカプラをプルダウンするために余分なバイアス電流が必要なので、システム全体の効率が低下します。対照的に、NCP1937は、このようなバイアス電流を必要としない回路を内蔵しており、無負荷時のシステム効率が改善されます。

最新の700V高電圧プロセスとデジタル回路の高集積化により、障害検出、電流検知、過電力補償などの保護機能に必要な回路をさらに多く集積できるようになり、外付部品の使用が削減されます。