『放送禁止』とは、そのタイトル通り、ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し、放送するという設定のフェイク・ドキュメンタリーだ。2003年にフジテレビの深夜番組で放送されて以来、カルトな人気を呼び、今回、劇場版第3弾『放送禁止 洗脳 邪悪なる鉄のイメージ』が10月11日(土)より池袋シネマ・ロサにて公開される。

劇場版3作目の設定はこう。あることがきっかけで、強い洗脳を受けた主婦・江上志麻子が、幸せな過程を崩壊させてしまう。彼女を救おうと、心理セラピストの小田島霧花が脱洗脳を試み、志麻子の親友でビデオ・ジャーナリストの鷲巣みなみが、その過程に密着していく。

長江俊和監督には、『放送禁止』のこれまでのヒストリーと、5年ぶりとなる新作の見どころについて話を聞いた。

長江俊和
1966年生まれ。大阪府出身。2003年からフジテレビで放送スタートした『放送禁止』シリーズでは企画・構成・演出を務めている。また、『富豪刑事』(2005年)、『慰謝料弁護士~あなたの涙、お金に変えましょう~』(2014年)などの連続ドラマのほか、『エンマ』(2006年)、『放送禁止 劇場版 「密着68日 復讐執行人」』(2008年)、『パラノーマル・アクティビティ 第2章 TOKYO NIGHT』(2010年)などの映画監督も務める。

――元々、カルト深夜番組『放送禁止』は、どういうきっかけで生まれたのですか?

まず、フジテレビの2時間のバラエティー枠で、面白いことをやろうという話になって。昔、オーソン・ウェルズが、宇宙戦争を本当にあったことのように話して町がパニックになったようなことを、今風にやろうと思ったんです。「お台場にUFOが襲来! 今、フジテレビが攻撃されています!」みたいなフェイク・ドキュメンタリーの企画書を出しました。さすがにそれは無理だろうという話になったのですが「深夜枠ならできるんじゃないの?」と言われまして。それで、心霊現象など、オカルトチックな事件をいっぱい起こしたものを、4月1日の枠でやろうという話になったんです。

――1本目は、ちょうどエイプリルフールの放映となったわけですか?

そうなんです。4月1日にやり逃げで、『放送禁止』というタイトルのものをやろうとしました。ところが、プロデューサーのひとりが「俺はUFOとかオカルトとかは嫌いだ」と言い始め、「UFOや超能力、心霊現象とかではなく、実は本当に起こった殺人事件だったというオチにできない?」と、撮影の3日前に相談されたんです。それで、ちょっと面白そうだなと思い、表向きはオカルト現象に見えるけど、よく見ると、実際に人間が起こした殺人事件だった、という展開に変えて、4月1日に放送したんです。その企画が面白いという話になり、続編を作っていきました。

――その後、シリーズ化されたわけですが、視聴者の反響などを意識して、監督されていったのですか?

いや、そうではなくて。僕たち制作側としては、変な話ですが、視聴者については、あまり意識してなかったんです。自分たちがわりと楽しんで作っていて、最初からやり逃げというか、楽しければいいや。好きなことをやろう、というスタンスでした。でも、続けていくうちにネットで「また見たい」という意見が入ったり、クレームが入ったりして、徐々に認知されていった感じです。

――「放送禁止」の内容が、ドキュメンタリーだと錯覚した視聴者から、クレームが入ったりもしたそうですね。

クレームは多かったです(苦笑)。でも放映の翌日は、深夜の遅い番組にも関わらず、フジテレビのサイトの検索枠の上位に入ることもあり、うれしかったりしました。ただ、放送を続けていると、クレームが多すぎるというのが問題視されまして。これまで「これはフィクションです」というフレーズを最後にしかつけてなかったのですが、最初につけようという話になりました。地方で放映される時は、CMごとに毎回「これはフィクションです」と入れたんですが、逆に視聴者の方が、フィクション=真実、と取り違えられたみたいで、「これって、本当の話だよね!?」という書き込みが入ったこともありました(苦笑)

――オリジナリティーあふれる番組は、視聴者も待ち望んでいるような気がします。

確かにそうですね。以前から、フジテレビの深夜枠は、『世にも奇妙な物語』や『NIGHT HEAD』など、面白いことをやっていて、作り手自身が本当に作りたいものを楽しんで作っている感じはありました。『放送禁止』もそういう立ち位置でやらせてもらい、すごく楽しかったです。やっぱり製作側が楽しんで作らないと、なかなか革命を起こせないんじゃないかなと思います。

――劇場版第3弾『放送禁止 洗脳 邪悪なる鉄のイメージ』では、何か新しい試みはされていますか?

5年ぶりの新作ってことで、久しぶりに見ていただけるファンの方もいるので、逆に劇場版3作目ということを意識せず、テレビでやっていた『放送禁止』に戻そうと意識しました。ナレーターの方もテレビでやってくれていた鈴木ゆうこさんにお願いしたりして、テレビ版の雰囲気を出そうとしたことがいちばん大きかったです。

――『放送禁止』ならではの演出としては、どういう点を意識されていますか?

まずはテストをしない。だいたいのシチュエーションだけを説明して、あまり細かいことを決めずに撮影をスタートします。台本はドラマや映画のように一応ちゃんと書きますが、それは製作サイドの確認をとるためのもので、役者には、全部箇条書きにしたものを渡します。そこには、おおまかな展開しかなくて、あとは自分の言葉に置き換えてやってくださいと指示するんです。そうすると、役者の戸惑いとかも含め、『放送禁止』らしくなります。

――これまでずっと『放送禁止』シリーズを続けてみて、いかがでしたか?

もともとフェイク・ドキュメンタリーは、以前からやっていたんです。ただ、その頃『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)が有名になり、自分はホラーをちゃんとやっていなかったなと気付きました。それで、ホラーに見えるけどミステリーみたいなものが、意外と喜ばれるというのがわかり、自分もミステリーの方向へどんどんシフトしていきました。ミステリーって、横溝正史や江戸川乱歩などの昔のものとか、話題のミステリー小説などは読んでいましたが、そこまでコアなミステリー・ファンじゃなかったんです。でも、その後、けっこうミステリーを求められ、今は「出版禁止」というタイトルでミステリー小説も出しています。そういう意味では、自分の転機になった作品ですね。今後ももっと小説を書いていきたいし、もちろん「放送禁止」も、需要があれば、続けていきたいです!

(C)2014「放送禁止 洗脳~邪悪なる鉄のイメージ~」製作委員会