はじめに

無線製品を販売する際には、品質、安全性、技術基準を確保するため、R&TTE(欧州)、FCC/IC(北米)、SRRC(中国)、KC(韓国)など、各国独自で制定されている規格準拠が要求されます。従い、無線製品を取り扱う企業やメーカーにとって、各国の規格における認証法規のトレンドを把握していくことは不可欠です。

ここ数か月の間、欧州の新たな無線規格変更に伴う対応方法が特に注目されています。今回はその具体的な変更内容、影響度、対応を説明します。

R&TTE規格変更の概要

今回の欧州の無線規格変更における規格名は「ETSI R&TTE EN 300 328 V1.8.1」と「ETSI R&TTE EN 301 893 V1.7.1」と呼ばれます。

「ETSI R&TTE EN」は、欧州電気通信標準化機構(ETSI: European Telecommunications Standards Institute) における無線通信端末装置(R&TTE:Radio and Telecommunications Terminal Equipment)の欧州共通標準(EN:European Norm)を意味します。最初の各番号300、301は、規格の区分(300, 301=Telecommunication series)を、次に続く各番号328、893は個別仕様番号を意味しており、328は2.4GHz帯、893は5GHz帯における広帯域通信機器の電波放射特性に関する規定です。最後のV1.7.1、V1.8.1は改版数を指します。

前回の改版はEN300 328は2008年6月、EN301 893は2013年1月に施行されています。今回の規格変更は大幅な内容変更・追加を伴って改定されており、2015年1月1日以降、欧州で既存の無線製品を継続販売するためには、適切な対応が必要になります。

何が変わるのか

EN300 328 V1.7.1からV1.8.1への変更では(1)電波測定方法の変更ないしは厳密化、(2) 新規定の導入が行われています。

一方で、EN301 893 V1.6.1 から V1.7.1 への変更ではEN300 328の一部の変更に相当する(2)新規定の導入が行われています。

表1. EN 300 328仕様書から比較した変更内容

表2. EN 301 893仕様書から比較した変更内容

まず、(1)は、試験基準の変更のため、従来の電波規定を満たしていた機器も、V1.8.1相当の方法で再測定し、その規定準拠を改めて証明することが義務付けられます。万一、規定を上回る場合、クリアするレベルまで電波出力を下げるなどの改修が必要です。

他方、(2)の新規定の中で、無線製品において特に重要なのは、新しく仕様書に追加された適応能力(Adaptivity)の項目です。この項目では「放射出力 10dBm 以上」の機器に対し、同じ周波数帯域で稼動中の他局の検出と衝突回避(Detect and Avoid)の能力を持つことが要求されています。衝突回避と聞くと 5GHz帯におけるレーダー電波の検出回避(DFS)を連想しますが、DFSとは異なりパケット(フレーム)単位のチャネル検出(CCA:Clear Channel Assessment)として定義されています。

新しい試験規定では、同一チャネル周波数上に連続波を流して意図的に衝突を発生させ、これを検出して送信停止することを確認する手順が定められており、CCAが実装されていなければこの試験をクリアすることができません。Wi-Fi (IEEE802.11) 仕様では送信前の空き状態検出(キャリアセンス)が義務付けられているので、Adaptivityの新規定は自動的に満たせると考えがちではありますが、実はそうではありません。IEEE802.11仕様のキャリアセンスには幾つかの実装オプションがあり、IEEE802.11a/g/n(OFDM-PHY)ではWi-Fi信号のみを検出するCS/CCAモードと、信号フォーマットに関わらず電波の平均受信強度を検出するCCA-ED(Energy Detect)モードの2種類があります。そしてCCA-EDの実装は地域および使用周波数に依存するオプションであり、IEEE802.11-2012では北米3GHz以上にのみCCA-EDの実装を義務づけていました。それは、2.4GHz帯ではCCA-EDが実装されていないか、実装されていても使用していない場合が多かった事を意味しています。

Adaptivitiy対応について

新規定で導入されたAdaptivityを満たすためには、無線LANチップに受信電波強度検出(ED:Energy Detect)能力が備わっており、ドライバでフレーム送信前に規定時間以上のED監視を行い、受信強度が規定値以上であれば、規定時間内に送信を止める処理を追加することが求められます。

チップにED能力が備わっていない場合や、ドライバのソースコードが無くて改修ができない場合は、 送信出力を10dBm(10mW EIRP)未満に下げることでAdaptivity規定の適用範囲外とするという次善策があります。Wi-Fiモジュールの送信出力は通常15dBm(30mW)前後なので、次善策を採用するとデシベル表記で-5dB、ワット表記では1/3前後のパワーダウンすることを意味します。

silexの取り組み

前述の通り、2015年1月以降、欧州へ無線製品を販売するには、R&TTE指令で定めた欧州共通の品質、安全性、技術基準を満たす必要があります。今回のような定期的な規格の大幅変更にも柔軟に解決策を提供できる、信頼できる技術パートナーが改めて必要とされています。

弊社では、現在、ハードウェア/ソフトウェアの両側面から各種無線LAN製品の規格準拠対応サービスを提供しています。ご用命がございましたら、弊社営業担当者までお問い合わせくださいますようお願い申し上げます。

このテキストはサイレックス・テクノロジーが提供するWebサイトのテクニカルコンテンツに掲載されているホワイトペーパーを再編集したものです。