Illustrator CCでは、テキスト関連の機能が追加されています。中でも、文中の特定の文字を、ドラッグによる操作で拡大・縮小したり回転したりする文字タッチツールは、直感的な操作で文字を変形できるおもしろいツールです。ここでは、テキスト関連の機能強化について詳しく解説しましょう。

文字タッチツールの追加

文字タッチツールは、テキストオブジェクト内の選択文字について、拡大・縮小や回転、位置の移動を行うツールです。変形させる際に、文字をアウトライン化する必要はありません。

文字タッチツールを使うには、ツールパネルの文字ツールのサブメニューから選択するか、文字パネルから選択します。文字パネルに「文字タッチツール」が表示されていないときは、パネルメニューから[文字タッチツールを表示]を選択してください。

文字タッチツールは、ツールパネルの文字ツールのサブメニューから選択

文字パネルからも選択できる

文字タッチツールを選択するとカーソルの形状が変わるので、変形する文字をクリックして選択します。選択した文字には、変形用のハンドルが表示されます。これらのハンドルをドラッグして文字を変形させます。

変形させる文字を、文字タッチツールでクリックして選択

選択した文字の周囲にハンドルが表示される

では、実際に拡大してみましょう。左上に表示されたハンドルをドラッグします。文字を縦方向に拡大・縮小できます。文字タッチツールは、テキストオブジェクトの中の特定の文字だけを簡単に変形できます。

左上のハンドルをドラッグ

文字が縦方向に拡大・縮小する

今度は右下のハンドルをドラッグしてみましょう。文字は横方向に拡大・縮小できます。

右下のハンドルをドラッグ

文字が横方向に拡大・縮小する

右上のハンドルをドラッグすると、縦横比を保持したまま拡大・縮小できます。

右上のハンドルをドラッグ

文字の縦横比を保持して拡大・縮小できる

左下のハンドルまたはハンドルで囲まれた長方形の内部をドラッグすると、文字を移動できます。

左下のハンドルまたは長方形内部をドラッグ

文字の位置を移動できる

長方形の上に表示されたハンドルをドラッグすると、文字を回転できます。

長方形の上に表示されたハンドルをドラッグ

文字を回転できる

文字タッチツールは、テキストオブジェクトの中の文字を、元の文字の順番を保ちながら変形します。ドラッグで操作していますが、実際には文字パネルの設定値を変更しているからです。拡大・縮小は、「垂直比率」「水平比率」の設定値を変更しています。移動は「文字間のカーニング」と「ベースラインシフト」の設定値、回転は「文字回転」の設定値を変えています。

文字タッチツールは、ドラッグ操作で文字パネルの設定値を変更している

文字パネルの設定値を変えているだけなので、変形した文字は、文字ツールで選択して通常の文字として扱えます。もちろん、文字を置き換えたりコピー&ペーストを実行したりすることも可能です。

変形した文字は文字ツールで選択して、通常の文字として扱える

カット&ペーストで、文字を最後に移動してみた

拡大・縮小時の文字揃えの基準

下図は、元のテキストと同じオブジェクトを背面に置いた状態で、文字を変形したものです。通常は、この図のように文字タッチツールで文字を拡大・縮小すると、他の文字の縦位置も連動して変わります。

文字タッチツールで文字を拡大・縮小すると、他の文字の縦位置も変わる

これは、Illustratorの「文字揃え」のデフォルト値が「中央」となっているからです。「文字揃え」は、行内にサイズの異なった文字が混在する際に、どこで文字を揃えるか……のための設定で、「文字」パネルの「文字揃え」で設定します。この設定が「中央」になっているので、拡大・縮小した文字と他の文字を中央で揃えるために、他の文字が移動するわけです。

「文字」パネルの「文字揃え」が「中央」になっているので、文字を拡大・縮小すると他の文字の縦位置が移動する

元の文字の位置を固定したまま、文字タッチツールで拡大・縮小するには「文字」パネルの「文字揃え」を「欧文ベースライン」に変更してください。そうすると、他の文字の縦位置を変えることなく文字を拡大・縮小できます。

「文字」パネルの「文字揃え」を「欧文ベースライン」に設定すると、文字を拡大・縮小しても他の文字の縦位置は変わらない